こんにちは、トラベルライターの土庄です。秋も本番を迎えて、いよいよ1年のラストに向かっていきますね。季節を先取りして、四季の移ろいを楽しむ旅を掲げている筆者にとって、秋こそもっとも充実した山旅を過ごせる絶好のシーズンです。
なぜなら一度の登山でも、麓は木々が色づく初秋、道中は紅葉が散る晩秋、山頂は雪景色が広がる冬へと、移り変わる季節の景色を楽しめるから。
そこで今回は筆者が大好きな山の一つ「白山(はくさん、標高2,702m)」の登山レポートを紹介します!閉山する間際を狙って秋の山旅を楽しみました。
見出し
晩秋の趣を味わう。王道の周回コースへ
白山国立公園内の石川県白山市と岐阜県大野郡白川村にまたがる活火山「白山」(標高2,702m)。西日本にある山のうち日本最高標高と言われる霊山で、7月1日の山開きから10月の紅葉にかけて3ヶ月間ほど、多くの登山愛好家で賑わいます。
今回筆者が訪れた時期は11月初旬。登山適期は少し過ぎますが、それゆえに四季の移ろいを楽しむ山旅を満喫できるのです。
登山口の別当出合駐車場には、ものすごい数の車が。雪に閉ざされるギリギリまでの間、地元の方を中心に親しまれています。
白山の登山口はいくつかあるのですが、一番人気なのが別当出合の白山登山口です。砂防新道、観光新道、釈迦新道といった登山ルートがあり、往復の道を変えて登山を楽しめます。今回は、王道の周回コース(往路:砂防新道、復路:観光新道)を選択しました。
スタートは別当出合の吊り橋から。この辺りはすでに紅葉の終わりかけで、冬の足音を感じられます。晩秋という季節に標高2,700mの山を目指すという非日常感に、なんだか胸が高鳴りますね。
終わりかけといっても、随所で色鮮やかな紅葉が迎えてくれます。まるで絵画のような紅葉は、天然のブナの原生林が生み出すもの。手つかずの自然の中にあるからこそ、美しさと野趣を兼ね備えていて、思わず見入ってしまいました。
周回コースを歩けば、別当出合から山頂まで往復約11.9km、約8時間半、累積標高差1,500mというコースタイム。11月にしてはタフなルートですが、このシーズンにしか見られない絶景が連続していきます。
冬の足音を感じる、プチ氷瀑や氷の花シモバシラ
少しずつ紅葉から枯木へと変わり、気温が一段と低くなると、そこには晩秋から初冬ならではのワンシーンが広がっていました。例えば、氷の花と呼ばれるシソ科の多年草・シモバシラ。
シモバシラは初冬になると茎が枯れてしまうのですが、根は活動し、水を吸い続けています。そのため氷点下を迎えた早朝に、根から吸い上げられた水が花弁のように凍るのです。雪が積もる前だけ、束の間見られる奇跡の造形品です。
奥まった場所にはわずかに雪が積もり、池は凍っていました。スタートは秋でしたが、登っている最中に、いよいよ冬に突入したという感覚を味わいます。山ならではの四季の移ろいを移動する非日常な体験です。
そして夏の白山とは打って変わって、登山道は静寂に包まれています。一年とともに山と人の向き合い方も変わる。こうした些細な変化も、季節を変えて同じ山に通う醍醐味かもしれません。
シャクシャクと路肩の雪に足跡を作りながら、よく整備された木道を進んでいくと、活火山らしい赤茶けた山肌を一望。荒々しいなかに美しさも感じられますね。
樹林から森林限界(高木が生育できず森林を形成できない限界線)、崩落地など、さまざまな地形が織りなし、まるでRPGの世界のような景観が作られています。
途中、少し沢を横切るポイントでも、冬ならではの芸術作品が。なんと沢が凍って、小さな氷瀑(凍りついた滝)のようになっていました。水滴の一つひとつが見事な造形をなし、宝石のように輝いています。
ダイナミックな風景の中に垣間見られる小さな発見。晩秋から初冬の白山は、好奇心を刺激する果てしないフィールドです。
白山が魅せる。果てしない絶景が続く後半
白山山頂の手前にある室堂(むろどう)が近づくと、景色はよりいっそう迫力を増していきます。振り返ると、白山の隣にそびえ立つ別山(べっさん、標高2,399m)のパノラマが展開。
雪をかぶった山肌が確かに冬の訪れを知らせながらも、金色の草紅葉が秋の余韻を感じさせてくれます。秋と冬の間に立っている感覚。これこそ晩秋から初冬の白山ならではの楽しみでしょう。
いよいよ後半に来たと感じられる阿弥陀ヶ原へ。森林限界のハイマツ帯と雪が模様を作っているように広がります。周囲には霊峰・白山を取り巻く石川の郷土峰たち。
透き通った青空と緑濃いハイマツのコントラストが爽快な夏の白山もいいですが、落ち着いた色合いで静寂に包まれる冬の白山も趣がありますね。