ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター・フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、約3年にわたりメーカー営業職とトラベルライターを両立。その後、副業が高じて国内OTAに転職し、宿泊施設向けコンサルティング営業に従事。 現在は、自然や暮らしに一歩踏み込む、旅の発信へ注力する。山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは。「今年の冬はどの山に登ろう?」ということで頭がいっぱいな、トラベルライターの土庄です。

突然ですが「霧氷」という言葉はご存じでしょうか?空気中の水分が凍って木々に付着する、雪山の風物詩ともいえる現象です。雪山登山を始めて約4年間、この霧氷の美しさに魅せられて雪山に通ってきたと言っても過言ではありません。

今回は、そのなかでも特に美しかった飛騨高山の「猪臥山(いぶしやま)」を紹介してみたいと思います。往復3時間~4時間と登山のハードルの低い山ながら、白銀に輝く霧氷と日本アルプスの雄大な稜線が織りなす絶景は、今も目に焼き付いています。

林道歩きでウォーミングアップ。パリッとした冬山情緒を味わう


「猪臥山」の登山口があるのは、岐阜県高山市の飛騨清見ICから車で10分ほど走った場所。猪臥山トンネルの南にある駐車場から登山を開始します。

高山は北アルプスへの玄関口といえる場所で、よく足を運びます。名古屋に住んでいても、3ヶ月に1回以上は通うほど身近な存在。高速道路で2時間足らずでアクセスできるのがうれしいですね。


まずは谷の合間を進んでいきます。快晴といえど、日の当たらない早朝。冷気に包まれる歩き始めは極寒なのですが、なぜか嫌な気はしません。むしろ一周まわって心地良いくらい。

パリッとした朝冷えや静寂に包まれた森、まだ踏み固められていないトレース。どれも雪山ならではの情緒ですね。


そうして30分ほど林道歩きを楽しみ、谷の奥まで到着したら、ようやく本格的な登り始めとなります。途中には一部急な箇所もあるので、ここから軽アイゼンが必要です。

趣深い樹林帯も雪山の特徴である一方、一番の醍醐味はパノラマの開けた美しい稜線。木々の隙間から覗く青空や、登るごとに太陽の光が届く登山道は、絶景が待つ山頂への伏線となっているようです。

直登を終えると、そこには幻想的なカラマツ霧氷林


本格的な登りに入って約15分ほど。次第に景色が開けていきます。ふと横を見ると、そこには谷から顔を覗かせる「乗鞍岳」の勇姿が。

そして手前の稜線には、雪山の風物詩「霧氷」が形成されていました。とうとう雪山の景色が劇的に変化する標高です。


程なくして、思わず息を呑むほど美しい、霧氷の森へと迷い込みます。まさに違う世界にでも来たかのような、幻想的な風景に陶酔しました。

さぁ、ここから山頂稜線へ。「猪臥山」の山頂周辺ではカラマツからブナへ植生変化をします。そのため、趣がガラリと変わるのが特徴です。


なかでも印象に残っているのは、霧氷を下から見上げた画。ブナの霧氷がトンネルになりながら、適度に空が開けるため、青と白のコントラストを楽しむことができます。

息つく暇もない絶景に歓喜し、終始胸が高鳴っていました。


それにしても青空と霧氷は、なぜここまで登山者の心を魅了するのでしょうか。単に二色の対比に過ぎないのに、どこまでも引き込まれる美しさ。

一枝ごと花のように付着する繊細さに惹かれるのでしょうか。あるいは、青と白の相性の良さは、ヒトの感性で決まっていることなのかもしれない。そんな、取り留めもないことを考えながら進んでいきます。


そうして景色が開けるポイントまで登り切ったとき、眼下にはカラマツ林が広がっていました。密度が尋常でなく、一つひとつが燦然と輝きを放っています。

そして見る角度を変えると、少しずつ表情を異にします。霧氷が雪山の芸術作品といわれるゆえんはここにあるのだと再認識しました。

霧氷と共演する北アルプス。全国から登山愛好家が集まる理由


いよいよ「猪臥山」の山頂までクライマックスへ。青空の面積が増えて爽やかに。山頂は、ブナの木々が次第に少なくなり、森林限界を迎えていきます。

展望の良さこそ、森林限界の魅力ではありますが、冬の「猪臥山」が名山といわれる理由は、適度に残る木々にあるのです。


なぜなら、その木々が過冷却で霧氷へと変わり、日本屈指の山並みと共演してくれるから。

ここまで美しい霧氷を見せてくれる山は滅多にありません。同時に、乗鞍岳から穂高連峰、剱・立山連峰まで一連に続く北アルプスを、ここまで雄大に眺められる場所もめったにないと思います。


そんな「猪臥山」でみた景色のハイライトは、霧氷の窓から覗く立山連峰でした。

ダイナミックに開けた縦構図の先には、神岡の町と剱岳(つるぎだけ)。標高450メートルから標高3000メートルが同居する高低差の世界を、霧氷のフレームが一枚に収めた光景には、ただただ見惚れてしまいました。

青と白が作り出す美しい「猪臥山」。飛騨が誇る冬の別天地


祠が見えて来たら、山頂は目と鼻の先。空にだいぶ近づいてきたように感じます。それにしても本当に、空が青く鮮やか。

こんな絶好のコンディションで雪山に登れること。これはひとえに山の神様への感謝に尽きます。

そして登山開始から約1時間半で、「猪臥山」の山頂(標高1519メートル)へ到着。


するとそこには、壮大なパノラマが展開していました。遮るものなく、稜線に咲き誇る霧氷と北アルプスの山並みを思いっきり俯瞰できます。

先程までと大きく異なるのは、その高度感とスケール。まさに”別天地”という言葉がふさわしいでしょう。冬に咲く”満開の桜並木”のような絶景を前に、しばし立ち尽くしていました。


また、山頂の西側には、加賀の名峰・白山(標高2702メートル)の山容もたたずんでいます。

猪臥山のロケーションは、北アルプスだけではなく、たおやかで美しい両白山地を眺められることも、隠れた魅力だったりするのです。


山頂の美しい風景を1時間近く堪能して帰路につきました。距離も短く、危険箇所もないコースなので、思う存分山頂で時間を取れます。この点も、満足度の高さに結びつきますね。

ワンシーズンで一回あるかないかの山行を満喫。今なお、登山歴の中で「猪臥山」に匹敵する霧氷の名山を、私は他に知りません。

■詳細情報
・名称:猪臥山(いぶしやま)
・住所:岐阜県高山市清見町池本
・地図:
・アクセス:飛騨清見ICから車で約5分
・料金:駐車場は無料
・所要時間:登山口から山頂まで往復3〜4時間
・オススメの時期:1月〜3月
・備考:アイゼンは必須。雪山登山の装備を揃えて挑戦してみてください。

圧倒的補給の宝庫。下山後は飛騨のB級グルメを!


最後に、私の大好きな高山グルメをご紹介します。猪臥山の登山口から飛騨高山市街まで車で20分ほど。

高山には運動後にもってこいのB級グルメが多くあるのてす。中でも「食事処 鳥海」がいちおし!飛騨牛のハンバーグや特大エビフライ、うどんまでついた高カロリーな定食が売りです。

なおお店の名前はやはり、あの東北の名峰から取っているのだそう。店内には、その名峰の写真もしっかりと飾られています。登山者にとって親近感が湧き、サービスも満点の名店ですよ!

■詳細情報
・名称:食事処 鳥海
・住所:岐阜県高山市石浦町5丁目250
・地図:
・アクセス:猪臥山登山口から車で約35分
・営業時間:11時~14時00分、17時00分~20時30分
・定休日:木曜日
・電話番号:0577-34-5514
・予算:1,000円前後
・公式食べログ:https://tabelog.com/gifu/A2104/A210401/21005935/

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター・フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、約3年にわたりメーカー営業職とトラベルライターを両立。その後、副業が高じて国内OTAに転職し、宿泊施設向けコンサルティング営業に従事。 現在は、自然や暮らしに一歩踏み込む、旅の発信へ注力する。山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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