ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

時が止まったようなオンドル小屋「大深温泉」(秋田)


秋田県と岩手県の県境に位置する「八幡平(はちまんたい)」。後生掛温泉や蒸ノ湯温泉など、天然温泉が多く湧出し、八幡平温泉郷を形成しています。

メジャーなお湯も多く、マニアからは東北屈指の人気を誇りますが、私イチオシのお湯は、こぢんまりとたたずむ「大深(おおふけ)温泉」。


八幡平を貫く山岳道路、八幡平アスピーテラインの秋田側にポツンと位置するこの秘湯が、飾り気なく、大変味わい深いのです。

湯小屋は男女別。小さな浴槽に温泉がたくわえられ、白濁した青色が綺麗です。アメニティは何もなく、壁に鏡と木桶が置かれているのみ。


続いて珍しいのは、宿泊者用のオンドル小屋。なんと地熱を利用した、天然の床暖房を楽しむことができます。身体を内からほぐし、旅の疲れをじわじわ取ってくれました。

他にも湧き水が流れっぱなしのシンクや、敷地内の小地獄など、見どころも豊富。素朴な癒やしに浸りたい方におすすめです。

■詳細情報
・名称:大深温泉
・住所:秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
・地図:
・アクセス:鹿角八幡平インターチェンジから車で1時間
・営業時間:7時~18時
・電話番号:0186-31-2551
・入湯料:500円(オンドル小屋休憩2時間750円)

山岳風情に癒やされる極上野湯「燕温泉 黄金の湯」(新潟)


野湯マニアなら知らない人はいない妙高山麓の燕(つばめ)温泉。黄金の湯と河原の湯、2つのワイルドな浴槽があり、物珍しさも相まって多くの人が訪れます。

河原の湯はハイキングをしないとアクセスできない、まさに秘湯。さらに、湯温が時によってまちまちで、小さな浴槽に常にお客さんがいっぱいの混浴なので、万人受けはしません。


万人におすすめできるのは、「黄金の湯」!男女別の広々とした浴槽に、熱々のお湯がコンコンと湧き出ています。訪れたのは秋で、浴槽の上に覆いかぶさる紅葉が見事でした。

泉質は、硫黄泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉の3つが組み合わさった珍しいタイプ。近年はトリプル美人湯としても知られ、女性にも人気だとか。

標高1150メートル、風情たっぷりの山中で涼しい風を感じながら、癒やしの露天風呂。この気持ち良さと開放感あふれる雰囲気は、一訪の価値ありです。

■詳細情報
・名称:燕温泉 黄金の湯
・住所:新潟県妙高市関山6078
・地図:
・アクセス:妙高高原ICから車で約15分、駐車場に車を止めて徒歩10分
・入湯料:無料
※11月から5月は冬季閉鎖

聖徳太子ゆかりの秘境里。地元に愛される「伊自良温泉」(福井)


福井県の山中に、脳卒中に良いとされている、泉質抜群の秘湯があります。それが「伊自良(いじら)温泉」。

かつて聖徳太子とゆかりがあったと伝わる、上味見(かみあじみ)村に位置しています。訪れたときは、朝霧がとても綺麗でした。


温泉自体は内湯のみの簡素な仕様ですが、実は天然温泉を、薪ボイラーを使って温めています。お湯本来の効能に加え、遠赤外線効果も追加されているのがポイント!

ひとたび浸かるだけで、身体を芯から温めてくれます。ヌルヌルとした泉質で、美人の湯と呼ばれている効能も、しっかり堪能できました。

これほど素晴らしいお湯にもかかわらず、大人の入浴料が300円という安さにも驚き!越前大野や福井市にも近く、観光と組み合わせやすいのもうれしいところ。

■詳細情報
・名称:伊自良温泉
・住所:福井県福井市中手町29-3
・地図:
・アクセス:大野市街から車で約20分、福井市街から車で約35分
・営業時間:10時~20時
・定休日:木曜日
・電話番号:0776-93-2040
・入湯料:300円

秘湯中の秘湯。白山山麓の「大白川露天風呂」(岐阜)


最後に紹介したいのは、筆者イチオシの秘湯「大白川露天風呂」。場所は、日本三大霊山・白山の南山麓、白水湖の湖畔に位置しています。

まず第一の特徴は、その隔絶したロケーション。国道156号線との分岐から約13.5キロメートル、一番近い都市・飛騨高山市街から73キロメートルも離れているのです。

一番近い町が世界遺産・白川郷というだけでも、その秘境っぷりはわかってもらえると思います。


浴槽は男女別でそれぞれ一つの、露天風呂だけ。泉質は、透明ですべすべとした塩化物泉硫黄泉です。湯温は40℃ほどと快適で、ゆったりとお湯に浸かることができます。

ポイントは、エメラルドグリーンの白水湖を見渡す、この唯一無二のロケーション!浴槽の先には、霊峰育む広大な自然が広がっています。

自然へ身を投じるような、プライスレスな入浴体験。これこそ秘湯の醍醐味だと再認識させてくれる、筆者の一番好きな温泉です。

■詳細情報
・名称:大白川露天風呂
・住所:岐阜県大野郡白川村平瀬大白川
・地図:
・アクセス:飛騨白川から車で30分、白川郷合掌造りから車で1時間
・営業時間:8時半~17時(夏季18時まで)
・入湯料:350円
※6月上旬~10月下旬頃まで冬季閉鎖

日本の素晴らしさを再発見できる「秘湯」の旅


今回は、秘湯という切り口からアウトドアの旅をご紹介してみました。

混浴であること、ワイルドな浴槽、アクセス……確かにハードルが高いように感じるところも多いですが、ひとたび訪れたら、その魅力に取り憑かれてしまう野趣溢れる入浴体験ができます。


日常から離れ、見知らぬ地の自然の中で、一人温まる時間。鳥のさえずりや渓流の音、四季折々表情を変えていく森。吹き抜ける涼しい風。

疲れているときこそ、「また仕事を頑張ろう!」とパワーチャージをさせてくれる、かけがえのない場所です。まずは自分の住んでいる地域の近くにある秘湯を探して訪れてみてはいかがでしょうか?

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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