ライター
堂原 有美 幸せプロデューサー

2019年に長年勤めた広告代理店を退社し、世界一周27ヵ国の幸福国を巡る旅へ。「幸福度」と「教育」の相関関係をリサーチ。幸福国で学んだ幸せの秘訣や、教育、文化、政治などの知識を活かし、日本の人たちがもっと幸せに生きられるよう貢献をしたい。

「幸せになるためには?」その答えを探るべく、2019年に幸福度の高い国、世界27ヵ国巡る旅をしました。

訪問した北欧を中心とする幸福先進国は、一般的には社会福祉や教育制度が注目されています。

実際に話を聞くと、考えていた以上に理想的で生きやすい社会が存在していることに驚きました。やればできるものなんだ、と。その事実を知ってほしく、特に驚いた相違点6つを紹介します。

国民から信頼されている政治


話を聞いて最も驚いたことは、国民が政治を信頼していること。選挙の投票率は一般的に7〜8割。日本人が聞いたら、まず驚くと思います。

よくよく考えてみると、教育も社会福祉制度も、全ての根本を決めているのは政治。ここがしっかり機能し、国民の声を反映できているからこそ、理想的な生きやすい社会ができるのだと感じます。


スウェーデンの歴史を遡ると、一般市民が政治参加できるようになり、優秀な人たちがトップについてから、社会の動きが変わっているようです。

また、フィンランドの選挙ポスターはおしゃれだったり、自分たちの味方になってくれそうな政党名の政党があったり、候補者が自分たちの身近にいたり。

オランダでは、駅で投票できる仕組みが導入されたりと、誰もが興味がもてるように工夫されています。政治の必要性を理解することは重要だと感じます。

休暇が多く、バランスのある働き方


彼らは、家族で過ごす時間を重視します。定時には帰り、子供を迎えにいき、家で団らんを過ごします。

また、休暇も多く、長期はまとめて1カ月程取れるため、多くの人が夏を選び、バカンスを満喫します。

案の定、その間の経済活動は遅れがちになるようですが、みんなそれを理解しているため、特に気にならないようです。

屋外でのBBQを日常的に楽しんでいるよう
また、会社を辞めること自体、日本ほど大きな不安はないようです。

北欧では、人は興味が移り変わるものと認識されており、次の職に就きやすくするため、大人のための学校や教育機関がしっかりと用意されています。

人の心の自然な流れに沿う社会制度があると、無理なく生きられそうで、うらやましく感じます。

余裕を生む、社会福祉制度


北欧などの多様性国家で最も有名なのは、社会保障でしょう。税金は他国と比べると高いのですが、教育と医療は基本的には無料、生きるための手厚い保護があります。

私が驚いたのは、その国の人たちから老後不安があまりみられず、余裕を感じたこと。だからでしょうか、話をしていても心から優しい気がしたり、落ち着きを感じました。

余裕があるからこそ、エコ活動や弱者に対する活動に本気で取り組めているのではないか、とも感じます。


それと比べると、日本人は老後不安が大きいために、休むことなく働き続けているのではないかと感じます。まずは、自分を守ることに必死です。

しかし、北欧の人たちはその不安がない。それだけでかなり心がラクになります。税金が高いことは確かに大変ですが、どちらが幸せなのだろう、と考え込んでしまいます。

女性も生きやすい、多様性ある社会

北欧の社会制度を世界に広める活動をする著者のLeneさんと
スウェーデンやオランダでは、女性は「何も諦める必要がないのよ」といい、活き活きと生活を謳歌している姿が非常にうらやましく感じました。

フィンランドの首相は34歳(2020年現在)の女性で、閣僚も女性が多い内閣です。また、ニュージーランドは3人目の女性首相で、子育て中。

トップが女性の国は、女性にも配慮された多様性ある国家になるのは想像に難くありません。


カナダでは、ジェンダーという言葉を使うことすら古いという空気感があることに驚きました。

首相は「多様性を国の力に」と掲げ、移民や多様性を受け入れ、人口を増やして人材活用し、国の力を伸ばすことに成功しています。

一方、日本のジェンダーギャップ指数は2020年の報告だと121/153位で、先進国では残念ながら最下位です。

「個」を重視、社会につながる教育

自由な雰囲気を感じるイエナプランの学校
教育で重視するのは「個」を伸ばすこと。先生には「教室を見ると、みんなバラバラなことをしていて、日本人は驚きますよ」と。

先生に「一番大切にしていることは?」と質問すると、「一人ひとりの個性を伸ばすこと」と期待通りの答えがすぐにかえってきて驚きました。


授業では、社会課題や、今生きるために必要なことを教えます。例えば、エコ活動。

フィンランドでは環境負荷を減らすためにビーガンが増えていますが、学校の給食にもビーガンメニューを採用したりと、学校や国をあげて教育します。

肉食は動物を育てる必要があり、植物以上の環境負荷がかかるのです。今後、地球人口が増えるなかで、動物食が足りなくなることや環境負荷を考慮し、ビーガンや昆虫食を推奨する流れがあります。

また、子どもと大人が政治について同等の立場で話をしたり、学校がデモ活動の参加を許可します。学歴にも特にこだわりがなく、「それぞれの個の能力が発揮できること」が最優先です。

エコ活動を楽しく、経済的に

オランダやデンマークでたくさん見た風力発電の風車
当たり前のようにエコ活動をし、経済とうまく連携させることで活発化しています。

オランダでは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)が推進されています。これは、廃棄物を「ゴミ」ではなく、全てを「資源」と考えて循環させる経済。家具や服、料理、建築のリユースなど。

例えば、アムステルダムには運河のゴミを拾って楽しむボートツアーがあり、ここで拾ったプラスチックのゴミは再生家具になります。

デンマークでは自転車が多用されており、自転車レーンが存在する道路も
オランダは、この分野のトップランナーを目指していますが、それにより利益を得ることもしっかり視野に入れています。

エコ活動を楽しく、さらに、経済的にも成り立つように設計する。人類にとって、大変理想的です。

誰もが生きやすい、幸福国から学ぶこと

国によって、人口も面積も、歴史も考え方もさまざま。一概に「この国から学ぶべき」と言うのは無理があることは事実です。

しかし、幸福国の政策の元にあるのは「人権の尊重」であり、誰しもが生きやすい社会が目標です。そう考えると、どの国であれ、学ぶところがあるのでは、と感じます。

そんな世界の違いを、未来を担う子供たちに知ってほしいと「教室から世界一周!」という活動をはじめました。

その活動を広めるべく、現在クラウドファンディングを実施中です!共感いただける方は、ご支援いただけると幸いです。

プロジェクトを見る

All photos by Yumi Dohara

ライター
堂原 有美 幸せプロデューサー

2019年に長年勤めた広告代理店を退社し、世界一周27ヵ国の幸福国を巡る旅へ。「幸福度」と「教育」の相関関係をリサーチ。幸福国で学んだ幸せの秘訣や、教育、文化、政治などの知識を活かし、日本の人たちがもっと幸せに生きられるよう貢献をしたい。

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