いよいよ、牛のと殺
photo by satori
牛のと殺シーンですが、20人がかりで抑えるため、切っている様子は見えませんでした。流れは先ほどのヤギと同じで、コーランを唱えながら頸動脈を切ります。牛が主賓であるせいか、先ほどよりコーランの合唱がかなり大きいです。
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血を流し終えた牛も、ヤギと同じく解体されます。
牛は重量があり、吊るせないので地面で解体。流れは基本的にヤギと同じです。皮を剥いでから各部位に切り取り、解体所でさらに細かくします。
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この形になってやっと、あぁ肉だな、と認識できます。さっきまで「大きな生き物」だったのに、不思議な感覚です。
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モスクはかなり狭いため、解体する肉が増えれば増えるほど足の踏み場がなくなっていきます。私も気をつけてはいたのですが、気付けば血塗られた足になっていました。
生まれて初めて牛の解体を手伝わせてもらった感想
写真を撮りながら眺めていたら、「日本人?やってみる?」と誘われ、解体を手伝わせてもらえました。インドネシア人の優しさを感じます。
肉を切るのは結構簡単。小刀で、引くときに力を込めて塊肉を切っていくだけです。肉はまだ生暖かかく、ほんの数十分前まで生きていたんだ、と実感します。
骨を折る作業は本当に骨を折る
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解体を眺めていて一番大変そうだったのが、「骨を折る」作業。全員に細かく配分するのですが、牛の肋骨はかなり太く長いため、折る必要があります。
しかも、あの図体を支える牛の骨というのはかなり丈夫で、金槌で5、6回叩いでやっと折れるほど。それを何本も、何回も繰り返します。インドネシアに来てはじめて「骨を折る」という日本語の由来を実感しました。
写真は牛の脊髄のようなものを生で食べるインドネシア人の図。インドネシア人は普段は生肉を食べませんが、これは骨を折る人の特権らしいです。
イスラム犠牲祭に参加して感じたこと
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ヤギ14匹、牛5匹の屠殺と解体が全て終わったのが13時ごろ。約4時間にわたるお祭りでした。終了後、なんと地域の方々が、儀式を見ていただけの異邦人である私にも1kgほどの牛肉を分けてくれました!
これは私が「貧民だから」というわけではなく、自治体の人みんなで分け合う、というスタンスで、地域のイスラム教徒以外も配っているそうです。
多様性の国インドネシアで生活していると、ムスリムの大多数は心優しく、相互理解や共存できる寛容な人々だと感じることができます。
犠牲祭で貰った、固い牛肉のおいしい食べ方
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いただいたインドネシアの牛肉ですが、新鮮とは言っても日本の牛肉とタフさが違います。
端的に言うと固い。もらった牛肉をステーキにしてみましたが、とても噛み切れなかったので、日本でよく作った「牛肉のたたき」にしてみました。日本でも簡単にできるので、余談ですがご紹介します。
簡単で、安い牛肉でもとてもおいしくなるのでオススメです。
材料
・牛肉(ブロック)
・醤油、みりん、酒(2:1:1)合わせて牛肉が浸かるくらい
・玉ねぎ半分
・牛肉が浸かるくらいのタッパー
手順
1.玉ねぎを薄くスライスします。
2.牛肉を表面だけ、赤い部分が残らないように焼きます。本当に表面だけ。
3.玉ねぎと一緒につけ汁につけて、一晩おきます。
4.2mmくらいに薄くスライスして、そのまま食べます。
興味がある人は、イスラム犠牲祭(イドゥルアドハ)に参加してみよう
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この儀式は、観光客に開かれている行事ではありません。もし、興味があってどうしても見たい!という方は、イドゥルアドハの日を狙ってイスラム圏に行くといいでしょう。2020年は7月下旬に行われるようです(※国・地域によって異なるので事前に確認が必要です)。
イスラム圏の国であればどこでもやっていますので、行き先を決めた上で現地在住歴が長い日本人に相談するのがおすすめ。
私は今回イスラム犠牲祭に参加して「肉は本来、特別な食べ物」だということを再認識しました。命を奪う過程を見たからというよりは、地域のみんなで骨を折りながら行う、大昔から続く儀式に参加したことで、「肉を食べること自体が昔はとても特別だった」と感じたからです。
この儀式に参加すると、きっと日本にいるだけでは知ることのできないイスラム文化や、食に対する考え方を学ぶことができるはず。