編集部

こんにちは、旅を広める会社である株式会社TABIPPOが運営をしている「旅」の総合WEBメディアです。世界一周のひとり旅を経験した旅好きなメンバーが、世界中を旅する魅力を伝えたいという想いで設立しました。旅人たちが実際に旅した体験をベースに1つずつ記事を配信して、これからの時代の多様な旅を提案します。

この記事では、TABIPPOがつくりあげた3冊目の旅の本、『女子が旅に出る理由』のコンテンツをTABIPPO.netをご覧の皆様にもご紹介したいと考え、本誌に掲載している一人旅体験記を厳選して連載しています。

今回の主人公は、初めての一人旅で南米を周遊した金亜利紗さん(当時22歳)です。

世界には、様々な理由やきっかけによってを一人旅を決意して、自分の心と体で世界を感じてきた女の子たちがいます。

手に入れたのは、どんなに高価なアクセサリーよりも魅力的な自分らしさ。

そんな女の子たちが、初めての一人旅のときに「なぜ旅に出て、どう変わっていったのか」。

すべての女性に読んでほしい、女の子一人旅ストーリーをまとめました。

 

\こちらの記事は、書籍化もされています/

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失恋旅行のはじまり、はじまり

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photo By Julia Caesar

「これ以上は無理だと思うんだ。お互いのために別れよう」。

そう言われ、私の3年間の初恋は幕を閉じた。高校生まで彼氏がいたことのなかった私に、初めてできた恋人だった。

たまにはケンカもしたけれど、ずっと仲良くしてこれた私たちなら、遠距離恋愛だってきっとうまくいく。

(たった8ヵ月の留学なんて、なんの障害にもならないわ!)。

そう思い、颯爽とアメリカへ飛び立った大学 3 年生の夏。まさか自分がたった半年でフラれるなんて、思ってもいなかった。

 

堰を切ったように涙を流しながら、彼の言い訳めいた話を電話越しに聞いていた。自分の嗚咽が邪魔になって聞き取れやしない。異国の地で味わった、初めての失恋の痛み。

部屋にこもり、インターネットの失恋話を斜め読みする。

この留学が終わった後、私たちは4ヵ月間、世界を一緒に旅する予定でいた。

語尾にハートマークを飛ばしながら、友達に自慢気に話していた数日前の自分が恥ずかしくてたまらない。

今までウキウキしながら旅の情報を仕入れていた私のパソコンは、わざとらしいくらいに旅行の広告を表示してくる。

「豪華ホテルが今なら割引!」
「あの絶景へ、二人だけの旅!」。

(いや、それはね、もう終わったことなんだよ…)。

涙目になりながら×印を押そうとすると、ある広告が目に 入った。

 

失恋旅行のはじまり、はじまり

「アメリカ発南米行きチケット $250 から」。

気づいた時には片道チケットを手にしていた。このまま日本に帰って、彼から連絡が来るかもしれない…なんて甘ったれた期待をするくらいなら、南米でもどこでも行った方が、健全な独り身のありかたに見えた。

(失恋ソングを片手に、とことん「一人」を味わってやろう)。

そう思い、私はアメリカの空港を旅立った。

 

流行のカウチサーフィンで

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photo By Anna Dziubinska

辿り着いたのは、コロンビアのボゴダという見知らぬ都市。 何をするかなんて決めていなかったけれど、どうせなら初めてのことをしてみようと、カウチサーフィンを使ってみた。

いま流行の、世界中の登録者(ホスト)と知り合うことができる旅行者コミュニティサービス。

自宅に泊めてもらった り、ランチに誘ったりする時に使うものだ。英語力に多少なりとも自信がついた今なら使いこなせる気がして、メッセージを 送ってみると、すんなり OK をもらえた。

スペイン語でしきりに話しかけてくるタクシーに乗り、教えてもらった住所を握りしめて向かう。

(どんな人なんだろう)。

不安と緊張と高揚感が混じり合い、震えた手でノックした。

「Hi!」。

微笑みながら迎えてくれたホストを見て、一気に肩の力が抜けた。ぎこちなく自己紹介をする。

(よかった、いい人そう)。

部屋をのぞくと、奥の方にもう一人ブロンドの女性がいることに気がついた。視線を配ると「彼女もここに泊まっているんだ」と彼は言う。

同時期に誰かをステイさせているなんて聞いていなかったけれど、まぁそういうこともあるのだろう。

「疲れただろう、お茶を飲もう」
「ありがとう」。

彼はすぐにリビングにもてなしてくれたけれど、ブロンドの彼女はなぜか席を立ってしまった。

(なんだ…?)。

不安げな顔をしていると、彼はカップを持ち、神妙な面持ちでこう言った。

「少し、話さなければならないことがあるんだ」。

彼女は1週間ほど前からこの家にステイしていた。そして 昨日の晩、二人は「恋に落ちた」のだという。

 

「僕は真剣に彼女のことを愛している。だけど彼女は2、3 日後には旅立ってしまう。僕は少しでも彼女との時間を大切にしたいんだ。わかるだろう? だから、君をステイさせるこ とはできない。もちろん次のステイ先を探すのは手伝うが、今晩、出ていってくれるかい」。

何が悲しくて、私はまたしてもフラれた気分を味わっているのだろう。

(彼女だって本当に愛しているなら、もっとステイするはずでは…)。

皮肉めいた言葉を胸にしまい、こう言った。

「Of course! うまくいくことを願っているわ」。

こうして私のカウチサーフィン初体験は、かくもあっさり捨てられたのだった。

 

アレハンドロという王子様

しかし、「捨てる神あれば拾う神あり」だ。突然にもかかわらず、快く家に迎え入れてくれた人がいた。

教えられた住所に 向かうと、シャネルやグッチが立ち並ぶ高級ブティック街の真ん中にあるビルの前で足が止まった。

(嘘でしょ?)。

何度も住所を見直すけれど、間違いない。ドアマンに迎え入れられて、ビルに登ると、街中の夜景が一望できた。

(ここはどこ?)。

まやかしにでもあった気分でいると、 私の背中から声がした。

「待っていたよ」。

振り向くと、エスニックな顔立ちのイケメンが立っていた。こんなロケーションで、こんな王子様みたいな登場なんて…!

「 A r i s a だ ね ? よ く 来 た ね 」。

そう言いながら、私の荷物を肩から降ろす。

(さりげない…これぞモテ男のエスコートか)。

目がハートになりながらも、互いに自己紹介をする。

 

アレハンドロと名乗る彼は、証券会社に勤めたのちに独立し、今はアドバイザーをやっているそうだ。

それから、「僕のルームメイトを紹介するよ」ともう一人のイケメンが登場。名前も同じ、アレハンドロ。「ややこしくてごめんね」。

そう言ってはにかむ、長身でスラッとしたモデルのような彼は、自分で会社を経営しているらしい。

人生これまでにないくらいのイケメン濃度高めな空間にい て、終始ときめきっぱなし。

踊りが好きだと伝えると、それならサルサを覚えなきゃと、ステップを教えてくれた。

ゆったりとした音楽をかけ、優しく腰に手を回し、耳元でリズムを数えるアレハンドロに妄想全開、ノックアウト寸前。

(まるで愛の伝道師…サルサは愛の踊りだわ!)。

自分をお姫様にしてくれる 王子様って、一人じゃないんだ!

「男なんていくらでもいる」。

そんな言葉は、失恋直後の私には効かなかったけれど、今ならわかる。

自分をお姫様にしてくれる王子様って、一人じゃないんだ!

居心地のいいイケメン御殿に後ろ髪をひかれながら、カウチサーフィンの味をしめた私は、エクアドル に向かった。

 

行く先々で目にした愛の形

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photo By Mayur Gala

旅にはどうしたって出会いがあり、むしろ避けることの方が難しい。

ペルー、ボリビア、アルゼンチン、ブラジルと、出会いを求めて旅をした。

これも何かの縁なのか、行く先々でいろんな愛の形を目にした。

エクアドルで迎えてくれたホストの家には、一組のカップルがいた。

コロンビア人の彼は、イギリスからボランティアをしに来た彼女に一目惚れし、猛アタック! 晴れて結ばれ、その足で半年かけて南米を一周しているのだそう。

熱帯夜の中、アツアツな二人を見ていると、手にしていたチョコレートは溶け、 ビールはぬるくなっていた。

編集部

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