ライター
シャンディ (岡村龍弥) TABIPPO学生支部ディレクター

合同会社ギルド代表。トラベルプロデューサー/フォトグラファー。学生時代に海外旅の楽しさに魅了され、大手IT企業に就職後も旅を継続、退職して世界一周後、起業。自分のやりたいをみつけ実現までサポートする「タビゼミ」主催。場所を選ばないノマドワーカーという働き方を広めることで人生の選択肢を増やしてほしい。大学講師、チェコ親善アンバサダー。

みなさんこんにちは、カメラマンのシャンディです。普段はギルドというどこでも働けるノマドワーカー人材の育成にチカラを入れている会社で代表をしています。旅が好きで、過去には世界一周をしたこともあります。

今回はご縁があり『高野山・熊野を愛する100人の会』メンバーと和歌山県・熊野エリアを巡るツアーに同行させていただきました。ツアーを通して知った熊野エリアの魅力をお届けします。


熊野は、川や滝、巨岩に神が宿るとして崇める自然崇拝を起源としている地域です。平成16年に熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産リストに登録され、世界的にも注目を集めています。熊野詣は日本人の旅(巡礼)の起源ともいわれており、古人に思いをよせる旅人やトレッキングのために訪れる観光客など、多くの人が毎年のように訪れています。

わたしの熊野への訪問は今回が4回目。昔からどこか神秘的なイメージがあり一生に一度は行きたいと思っていたのですが、この場所に初めて訪問したのは実は半年前のことです。そこから6ヶ月で4回も来ていることに驚くとともに、それだけ他の観光地には真似できない魅力にあふれる場所だと感じています。

『高野山・熊野を愛する100人の会』と熊野を巡るツアー


『高野山・熊野を愛する100人の会』は、世界遺産の登録15周年を記念して、各業界の著名人が集まって設立した会です。

メンバーには歌手の坂本冬美さんやものまね芸人のコロッケさんといった、テレビでお馴染みの芸能人も。旅界隈からは、著書「行かずに死ねるか!」で有名な、自転車で世界一周をした石田ゆうすけさんがメンバーに入っています。

今回は100人の会から、博物学者であり作家の荒俣 宏さんと作家の夢枕 獏さんがツアーに参加。王道観光スポットである大斎原や那智の滝、あまり知られていない絶景ポイントや100年以上手付かずの自然が残る森林地帯などを1泊2日かけて巡りました。

自然から信仰へ。熊野を愛する人が語る熊野の魅力


ツアーのはじまりは、熊野本宮大社での鼎談(ていだん)から。100人の会メンバーである熊野本宮大社の宮司、九鬼家隆さんを交えたお三方の話を聞きました。

熊野との出会いや想いを話すお三方

釣りがきっかけで熊野にはじめて訪れたという夢枕さんと、20歳のころに熱帯生物の研究のため熊野を訪れたことから大自然に魅了された荒俣さん。

お2人の熊野との出会いのきっかけは自然だったにも関わらず、何度も熊野に足を運ぶにつれて、自然崇拝という信仰の側面に興味をもちはじめたそうです。


熊野のことを知り尽くす九鬼宮司も、「趣味などの楽しみから熊野に興味をもち、そこに信仰への興味が加わるのは理想の楽しみ方だ」と、2人の熊野への通い方に対してコメントされているのが印象的でした。


荒俣さんは山や森が昔から神聖な場所として認識される理由をいくつか述べ、1つは山や森が人間の役に立ってきたからだとおっしゃっていました。

道がなかった時代、人間は木から船をつくり、川を道代わりに使っていました。森のおかげで食べ物に事欠くこともなかったため、人間の生活は山に多くの恩恵を受けていたといえます。

もう1つは、私たちの先祖が山に住んでいたから。「縄文時代、人は山に住んでいたが、農業をやるようになったことから里で暮らすようになった。山を見るということは縄文の人たち、つまりは先人が暮らした聖なる土地を連想させるため、聖なる場所は山の中にあると感じるのではないか」とコメントされていました。

また、荒俣さんは熊野の地形についても言及。海の彼方は極楽があるとされているため、「滝から水が流れ海へと落ちていく様子」は、あの世へいく眺めのように見えます。熊野の地形は水が海の彼方にいくようにできているため、ひとつの聖なる場所としてイメージされているのではないかとのことでした。

まずは王道の観光スポットから。熊野を巡るツアーのはじまり


いよいよ熊野を巡る旅がスタート。まず訪れたのは王道の観光スポット・大斎原(おおゆのはら)。何度見ても圧巻の大きさの鳥居が私たちを迎えてくれます。

大斎原は熊野本宮大社がかつてあった場所です。3つの川の合流点となる中洲に立地しているのにもかかわらず江戸時代までは橋がなかったため、参拝に訪れた人たちは川を渡るために着物の裾を濡らして身を清める必要がありました。冷水を浴びることで清まったカラダで参拝するしきたりだったのだとか。

熊野本宮大社は明治時代の大水害により被害をうけ、現在の場所へと移りました。


全国的に見て雨の多い熊野エリア。ツアーを通して生憎の天気でしたが、雨だからこその神秘さを感じることができました。個人的には、晴れた日の夕暮れを浴びながら見る大斎原の鳥居もがおすすめです。

那智の滝で感じる、自然と信仰のマッチング


続いて訪れたのは那智の滝。歩いて熊野古道の森や自然を感じたい場合は、大門坂から那智の滝までのトレッキングコースがおすすめです。所要時間は30-40分ほど。

熊野古道や那智の滝を巡る方法はいくつかあり、歩く以外には那智勝浦駅前でレンタル可能なe-バイクでサイクリングする方法があります。前回訪問した時はe-バイクをレンタルして坂道を登りましたが、スイスイと巡ることができました。歩きに自信がない人にもおすすめの方法です。

今回のツアーでは、車を利用して滝の近くまで訪れました。歩いて登るルートと車道が交わるポイントがあるため、e-バイクやクルマで那智の滝を訪れる場合は、そこで足をとめると熊野古道の景色をじっくりと味わえます。


那智の滝は『華厳の滝』・『袋田の滝』とともに日本三名瀑と言われるだけあり、圧巻の一言。

那智の滝は、滝自体が御神体とされています。滝のそばで正式参拝を済ませました。


滝を流れる水は飲むことが可能。那智の滝の横には「延命長寿のお瀧水」があり、おちょこの販売もしています。

ツアーの合間に巨大おみくじをひく荒俣さん。少年のような楽しげな姿に思わず笑みがこぼれました。

神様の案内役が休む場所、熊野那智大社


那智の滝のそばには、熊野那智大社と青岸渡寺があります。ここは神社と寺院が隣接している全国でも珍しい場所です。入り口には仁王像と背中合わせに狛犬という、これまた珍しい組み合わせが見られます。


熊野那智大社にはサッカー日本代表のマークとして有名な3本足のカラス「八咫烏」がお祀りされています。神様の使いであることから「導きの神様・交通安全の神様」として崇敬を集めているとのことでした。

ちなみに、八咫烏は日本サッカー協会のシンボルマークであり、サッカー日本代表のユニフォームにも描かれています。これはサッカーを日本に紹介し、普及に貢献した中村 覚之助氏の出身地が和歌山県・那智勝浦町であることに由来しているのだとか。


神様の道案内を務めた八咫烏は、熊野の地で石に姿を変えて休んでいるといわれています。烏石は熊野那智大社の本殿の奥にあり、正式参拝をすれば実際にその「烏石」が拝観できます。


熊野那智大社を訪れたら体験してほしいものの1つが、平重盛が植えたと伝えられるクスノキ。樹齢はなんと850年といわれています。根の部分に空洞ができており、護摩木か祈願絵馬に願いを込めて空洞をくぐると、願いが叶うのだとか。


最後に、熊野の豊かな森と水を感じられるスポットをご紹介。

大斎原から那智の滝にいくまでの道中にある『相須神丸 高倉神社跡』です。赤木川の川岸にある社殿のない神社で、川端の岩を祀っているとのこと。


鳥居をくぐると、透明度の高い赤木川を見下ろせます。『平成釣客伝 夢枕獏の釣り紀行』を出版するほどの釣り好きである夢枕さんも、楽しそうにされていました。

ついついボーッとしてしまうような長閑さで、心身ともにリフレッシュできる不思議な場所です。

熊野エリアの自然に触れて、リフレッシュ体験を


今回4度目の訪問となった熊野エリア。ツアーへの同行を通してさらに多くの魅力に触れ、熊野のことがますます好きになりました。

ちなみに、今回は北海道大学が所有する和歌山研究林にも足を運びました。100年以上あえて手をつけずに保護している森で、スマートフォンの電波も入らない場所での樹海気分を味わいました。


熊野は「よみがえりの地」と呼ばれており、訪れた人たちの心魂がよみがえり、新たな気持ちになれる場所だといわれています。荘厳な自然に触れることで日常のしがらみや悩みから解放され、改めて自分と向き合える。そんな場所こそが熊野なのだと痛感しました。

熊野に関しては、100人の会公式HPYouTube関連動画でも知ることができます。この機会に興味を持った方はぜひチェックしてみてください。

All photos by シャンディ(岡村龍弥)

ライター
シャンディ (岡村龍弥) TABIPPO学生支部ディレクター

合同会社ギルド代表。トラベルプロデューサー/フォトグラファー。学生時代に海外旅の楽しさに魅了され、大手IT企業に就職後も旅を継続、退職して世界一周後、起業。自分のやりたいをみつけ実現までサポートする「タビゼミ」主催。場所を選ばないノマドワーカーという働き方を広めることで人生の選択肢を増やしてほしい。大学講師、チェコ親善アンバサダー。

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