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yui ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。

 

フィジー人の生き方に学んだ「幸せ」のありかた

前田:フィジーではどんなことが印象に残っていますか?

MaSaTo:フィジーには、ケレケレという文化があります。これは言うなれば、優しいジャイアンのような感じ。「お前のものは俺のもの、でも俺のものはお前のもの」っていう。

前田:ジャイアンは「お前のものは俺のもの、おれのものも俺のもの」ですもんね。

MaSaTo:そう。この文化を象徴する出来事があります。ある日、フィジー人の友人とバスに乗ったんです。すると僕たちの後ろに並んでいたフィジー人が「お金がなくて運賃が払えません」と言い出しました。知らない人ですよ。こんなとき、日本人ならどうしますか?

前田:よっぽど困っている様子でしたら何とかしてあげたい、と思わなくはないですが、普通は断りますね。

MaSaTo:ですよね。でも僕の友人は、その人の運賃を支払ってあげたんです。「なぜ?」と聞いたら、「僕はお金を持っているから」と。「僕のお金がなくなったら、誰かが払ってくれる」とも言っていましたね。

この光景を見たとき、「国単位で家族みたいな国だな」「こんな国は決して破綻しないだろう」と思えました。

前田:みんなが助け合えて、帳尻が合いますからね。

MaSaTo:フィジーには、先進国の日本とは違う幸せがある――そう感じさせられました。

その出来事をきっかけに、もっと世界を見て「幸せな生き方」を見つけたいと思い、海外に出ることを決めました。

 

「自分が本当にワクワクしていること」×「誰かがワクワクしてくれること」

前田:MaSaToさんは、サハラ砂漠マラソンをはじめ、いろんなことに挑戦されていますよね。一般人にとっては無謀に思えるようなチャレンジもありますが、不安はないのでしょうか。

MaSaTo:不安はまったく感じていません。むしろ、自分の実力を試せることにワクワクしています。

サハラ砂漠マラソンでも、「絶対に完走できる」という根拠のない自信があったんですよね。だから走り切れたんだと思っています。少しでも「無理かも」と思ったら、完走は無理だったでしょう。

前田:チャレンジがどんどんエスカレートしていく怖さや、周囲からより過激なチャレンジを期待されてしまう怖さはありませんか?

MaSaTo:本意でないことをやるのは怖いです。一方、自分が本当にしたいこと、ワクワクできることの延長であれば、失敗しても楽しめると思っています。

僕の生き方は、「自分が本当にワクワクしていること」と「誰かがワクワクしてくれること」の掛け算の最大点を伸ばす生き方です。このどちらが欠けていても嫌ですね。

前田:ちなみに旅に出る前は、どんなお仕事をされていたんですか?

MaSaTo:3年間、歩合制の営業マンをやっていました。成績が良かったので、給料も良かったですね。

ただ、お金がほしいから仕事をしていたわけじゃないんです。「自分にとって社会で働くってなんだろう」「お金って何だろう」「働くという旅をしてみたい」という思いがあったから、サラリーマンとして働くことを選びました。

仕事を辞めたのは、「ワクワクしない作業に自分の人生を費やしたくない」と感じたから。僕がやりたいのは、もっと世界を見て、もっと輝く自分になることなんです。

 

まずは自分の「楽しい」を見つけてほしい

前田:僕は、「好き」と「自信」はらせん状になっていると思っています。自信があるからこそ好きなことを続けられて、それが次の自信につながる。でもこの話をすると、「どうすればそのループに入れるんですか」という質問をいただくんですよね。

つい「好きなことをやればいいのでは」と言ってしまいそうになりますが、好きなことが見つけられない人もいます。MaSaToさんは、そんな人にはどうアドバイスしていますか?

MaSaTo:「楽しい」を体験してみようと伝えています。楽しいと思えるからこそ好きになり、もっと勉強してみようと思えるものだから。

僕は、世界一周学校を「楽しい」を体験できる場所にしたいんですよね。いろんな人に出会えたり、部活があったり。そこで好きなものを見つけて、一歩を踏み出すきっかけになればいい。

前田:TABIPPOの学生インターンを見ていると、みんな悩んでいるなーと思います。その理由は、すぐそばに自由に生きている人たちがいるから。‟より良さそうな人生”を知ってしまうことで、その人たちと自分を比べてしまう。知らなければ悩むこともありませんからね。

こんな人たちに対して、MaSaToさんならどんなメッセージを送りますか?

MaSaTo:まず伝えるのは、人生はいつも今がスタート地点だということ。そのうえで、遊びや旅に誘いますね。その人が好きなものを見つけるまで、ともに旅すればいい。

悩んでいる人って、自分の持っている世界観のなかで悩んでいます。世界観が広がれば考えも変わるはず。悩みを解決するには、世界観を広げるのが一番の近道だと思っています。

 

悩んだら、自分の世界から出てみよう

前田:ヴィパッサナー瞑想(一言も話さずに数日間を過ごす瞑想)やカミーノ(聖地へ続く道を100km歩くスペインの巡礼)は、MaSaToさんにとって新しい世界でしたか?

MaSaTo:そうですね。たとえばヴィパッサナー瞑想では、ただただ散歩をする時間があります。

散歩をしていると、バッタがぴょんと跳んできて、とっさに「気持ち悪い」と思ったんです。でも思い返してみると、子どものときにはバッタをつかまえて遊んでいたし、バッタを気持ち悪いなんて思わなかったはず。それはなぜか。バッタは変わっていないのだから、自分の心が変わったんだという結論に達しました。

これに気づいたことで、自分の心のボーダーがなくなった気がしました。だって、好きになれない人がいたとしても、自分が一方的に嫌っているだけですよね。

前田:たしかに、そういう考え方ができますね。そんなふうに、過酷な挑戦を通してさまざまな発見をされているんですね。

MaSaTo:僕に不安がないのは、常に動き回っているからかもしれませんね。やっぱり立ち止まると悩んじゃうと思います。悩みの世界で立ち止まっていても、悩みしか生まれませんから。

ちょっと散歩したり、誰かと話してみたりすると、「なんで悩んでたんだろう?」と思うことがあります。悩んでいるときには、今いる自分の世界から出てみることをおすすめします。

前田:たしかに、自分の世界を広げてみること、ちょっと環境を変えてみることって大事ですよね。お話、ありがとうございました!

 
text:西嶋結
photo:前田塁

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