南極マラソンの概要と攻略方法
photo by MaSaTo
南極マラソンの特徴を教えてください。
南極マラソンは独特ですね。まず参加資格。砂漠マラソンには、ゴビ砂漠マラソン、アタカマ砂漠マラソン、サハラ砂漠マラソンがあり、この3つのうち2つを完走すれば南極マラソンに挑戦する権利が与えられます。
参加資格を得ても、南極にたどりつくまでが大変。僕の場合、パリとアルゼンチンの首都・ブエノスアイレスを経由して、南米の最南端・ウシュアイアに向かいました。ここまでで日本から40時間ほどかかります。
そこからさらに、南極まで2日間の船旅です。これがまた大変。世界で最も揺れる航海だといわれています。スーツケースは倒れ、コーヒーカップは転げ落ちるほど。マラソンの前にこの難関が待っているわけですね。
参加者の数も、他の砂漠マラソンとは違いました。他のマラソンはどれも200人ほどでしたが、南極マラソンはたった51人でしたね。2つのマラソンをクリアした人にしか、参加資格がありませんから。
持ち物にしても、南極には「南極条約」というものがあり、持って行ってはいけないものが定められているんです。植物や土はNGだし、ビスケットのようなぽろぽろとこぼれる食べ物は持ち込めません。
南極マラソンは何日間くらいかけて走るんですか?
4日間走って、その翌日が表彰式です。合計で約200キロメートルを走るので、毎日フルマラソンを走るようなものですね。
南極マラソンでは、どんなものを食べていましたか?
チーズやバター、チョコレート、水筒に入れたゼリーなどを持っていきました。ゴミになるものは持ち込み不可なので、パッケージから出しておく必要があります。
南極マラソンに出場するためには、どのくらいの費用がかかるんですか?
エントリー費用が150万円ほどかかります。これには、ウシュアイアからの交通費(船)が含まれています。
ウシュアイアまでの交通費や装備品なども加えると、全部で230万円ほどかかったでしょうか。
南極は寒いんですよね?どんな服装ですか?
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マイナス10℃の世界です。吹雪いていますし、常に雪山を走っている感じですね。
アンダーウェアの上にランニングウェアとソフトシェル、ゴアテックスを着込みます。走るうちにだんだん体があたたまってくるので、服を脱いで調節していました。
靴は、濡れても平気なゴアテックスを。日焼け防止のために、サングラスと日焼け止めが必須です。加えて、防寒のために目出し帽を装着していました。
南極には、1日中明るい「白夜」と1日中暗い「極夜」があります。僕が南極に行ったときは白夜で、日焼けで皮がめくれるほど。寒さからくる痛さと日焼けからくる痛さ、常に2つの痛さと戦っていました。
南極マラソンも、1日に走る距離が決まっているんですか?
南極マラソンでは、「この時間内にこの距離を走ってください」ではなく、「この時間でどれくらい走れるか」の勝負なんです。だから、人によって走る距離が異なります。自分の限界に挑戦、という感じですね。
1日に走る距離が決まっていないので、当日スタッフから言われた通りに走るしかありません。6時間しか走らなかった日もあれば、10時間走り続けた日もありました。初日は60km以上走りましたね。
南極マラソンも、リタイアする人はいるんですよね?
かなり過酷な環境ですから、もちろんリタイアする人もいます。僕が走ったときは、参加者51人のうち、2~3人はリタイアしていたはずですよ。
サハラ砂漠マラソンや南極マラソンの参加者は、どんな人が多かったですか?
経営者や、フリーで仕事をしている人が多かったですね。お金と時間、向上心、好奇心が必要ですから。自然と仲良くなり、仕事が生まれることもありましたよ。
南極マラソンに挑戦したい人に、アドバイスをお願いします!
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南極マラソンをめざす人は、ゴビ砂漠マラソン、アタカマ砂漠マラソン、サハラ砂漠マラソンのうち2つを完走しなければなりません。
この中で最も初心者におすすめなのは、ゴビ砂漠マラソン。「砂漠」といっても、ゴビ砂漠マラソンのコースは大半が草原。だから走りやすいですよ。ただ天候はよくないので、注意が必要です。
「もう一度走りたい」という人が多いのは、アタカマ砂漠マラソン。世界一乾燥した砂漠と言われており、星空がきれいに見えます。ただしスタート地点の標高が3800メートル、お昼の気温が40~50℃なのに対し夜は氷点下に下がるなど、過酷であることに変わりはありません。
そして最も過酷なのがサハラ砂漠マラソンですね。ただ、サハラ砂漠マラソンが最も「砂漠らしい」コースを走ることができます。その点では、サハラ砂漠マラソンを強くおすすめしたいです。
以上から、より簡単に南極マラソンへの挑戦権を手に入れるには、ゴビ砂漠マラソン→アタカマ砂漠マラソンの順がいいと思いますよ。
――――MaSaToさん、ありがとうございました!
text:西嶋結
photo:前田塁