ライター

1994年生まれ。国内の旅行WEBメディアでライター・編集者の経験を積んだのち、2021年よりオアハカに在住。アートシーンやフードカルチャーを中心に、メキシコで見つけた〈おもしろいもの、すてきなもの。〉を取り上げています。

こんにちは!オアハカ在住ライターのHISAKOです。

メキシコのお酒といえば?と聞かれると、きっと多くの人がテキーラをイメージするはず。しかし近年メキシコ人にとってこの国を代表するお酒は、テキーラよりも断然メスカル!ただ、日本であまり流通していないことから、メスカルと聞いても具体的にどんなお酒なのか想像しづらいですよね。

そこでこの記事では、オアハカ観光でポピュラーな「メスカル蒸留所見学」の体験を通して、メスカルのあれこれを紹介していきます。

オアハカを代表する蒸留酒・メスカルってなんだ?


まずはじめに、メスカルの基本情報から。メスカルは原料のアガベ(マゲイとも呼ぶ)を発酵させてつくられた蒸留酒で、メキシコ国民に最も愛されているお酒のひとつ。平均で5年から15年かけて生育したアガベを用いており、なんといってもそのスモーキーな香りが最大の特徴です。


メスカルに使われるアガベは、最も一般的なエスパディン(Espadin)をはじめとしてさまざまな品種があり、その数は少なくとも200種類以上。また、メキシコでつくられるメスカルの70%以上がここオアハカ産なのだとか。


異なる品種、また異なる成長期間のアガベを使用することから、甘みやマイルドな酸味など味にも個性が出ているのもメスカルのおもしろいところ。

つくられてすぐにボトリングされるホヴェン(Joven)、2ヶ月以上1年未満熟成させたレポサド(Reposado)、1年以上3年未満熟成させたアニェホ(Añejo)といった熟成の違いによる呼び名もありますが、メスカルはあまり熟成向きのお酒ではないため、流通しているメスカルはホヴェンがほとんどです。


ちなみに、テキーラもメスカルと同じくアガベからつくられますが、ブルーアガベのみを主原料としている点がメスカルとの最大の違い。生産地域も限られているため、例えば筆者の住むオアハカではほとんどテキーラの流通が見られません。

ここからはメスカル蒸留所見学の内容を紹介していきます。

メスカルの産地・マタトランで大人の社会科見学


わたしが訪問したのは、オアハカの中でもメスカルの一大産地として知られているマタトラン(Matatlan)村にある「マクリチョス(Macurichos)」の蒸留所。オアハカ市内から蒸留所へ向かう道にはアガベがたくさん植えられた畑があり、メスカルの産地ならではの景色が訪れる者を出迎えてくれます。


蒸留所に到着して頑丈そうな門をくぐると、文字通り“メスカルづくりの原風景”が広がっていました。現代的な機械は一切なく、樽があり石で囲まれた蒸し場があり、馬が石臼をひいているという、古い映画のワンシーンのような世界です。

メスカルの蒸留プロセス


メスカルづくりは、以下の工程で行われます。

1. 収穫と蒸し焼き


アガベを収穫し、葉と根っこを取り除いた中心部(ピニャ)を土の中で蒸し焼きにする。蒸し焼きはおおよそ3日間から5日間かけて行われ、じっくりと火を通す。

2. すりつぶし


蒸し焼きにしたあとのピニャを石臼ですりつぶす。巨大なピニャをすりつぶすには巨大な石臼が必要なため、多くの蒸留所では馬力を用いる。

3. 樽で発酵


すりつぶしたピニャを木の樽に入れて発酵させる。ピニャからは糖分を多く含んだ液体が抽出されているので、時間とともに酵母が糖分を食べ、アルコールに分解されて発酵が進んでいく。発酵の期間はおよそ2週間から1ヶ月ほど。

4. 蒸留


発酵が終わったら、その後蒸留をする。現代ではお酒全般の蒸留に機械を用いることがほとんどだが、この蒸留所では、レンガを積んだ手作りの蒸留場で蒸留が行われる。薪で火を焚き、竹のパイプを通して蒸留したメスカルを瓶づめする昔ながらの方法。


上記の工程からもわかるように、筆者が訪れた蒸留所ではすべての工程を手仕事で行っているというから驚きです。この工程を知れるだけでも、メスカル蒸留所見学に行く価値がありますよ。

テイスティングタイムでお気に入りの一本を見つける


蒸留のプロセスを一通り見学し終わったあとは、いよいよメスカルテイスティング。ほとんどの蒸留所でこのメスカルテイスティングが行われているので、チャンスを逃さないためにも、蒸留所へは必ずタクシーやバスなどの公共機関を使ってアクセスしてくださいね。

メスカルを試飲するときのポイントは、まずその蒸留所のスタンダードメスカル(多くの場合がエスパディンと呼ばれる品種)を飲んでみること。そこから別の品種のメスカルを試飲して、味の違いを感じてみましょう。


また、メスカルは神の酒とも呼ばれていることから、ローカルは「神に口づけするように飲む」のだとか。ショットのように一気には飲まず、少しずつ口に含み、舌の上に液体をのせて空気を鼻から出すように飲むと、よりアロマを実感できます。

お気に入りのメスカルを見つけたら、是非蒸留所で購入を。街中のメスカル屋さんで買うよりも価格が安く、何より生産者から直接買う経験は貴重ですよ。

■詳細情報
・名称:Fabrica de Mezcales El Sabino
・住所:Carr. Internacional Cristóbal Colón 5-Km 49, 70440 Santiago Matatlán, Oax.
・地図:
・営業時間:7:00~22:00
・定休日:なし
・電話番号:+529515183119

村の「プルケリア」で新鮮なプルケを体験


マタトラン村にはメスカルの蒸留所だけでなく、プルケ(Pulque)を販売する大衆酒場・プルケリア(Pulqueria)もいくつかあります。

プルケとはアガベの樹液を発酵させてつくるお酒で、白濁した見た目が特徴的。あまり日持ちせず鮮度がその味を左右する飲み物なので、メスカルの産地でそのほとんどが消費されています。


その見た目からどぶろくかマッコリのような味を想像しますが、新鮮なプルケはまるで自然派ワインを飲んでいるかのような味わいで、発酵の香りも複雑さを帯びています。筆者の印象は、「意外にも飲みやすい」でした。プルケにはさまざまなフレーバーがありますが、最初はプレーンを味わってみて。


プルケリアに来たらプルケのほかにアグアミエル(Agua Miel)を試してみるのもおすすめ。アグアミエルは、プルケとしてアガベを発酵させる前の状態のドリンク。たとえるならアガベのネクターのようなもので、すっきりさとほどよい甘さが感じられます。

オアハカに来たら、一度はメスカルを飲んどかないと!


オアハカはメキシコ国内でも有数のメスカル産地。この記事で紹介した蒸留所以外にも、オアハカ内にはメスカル蒸留所のツアーがさまざまな場所で開催されています。

事前にネットでメスカル蒸留所ツアーを探すか、気に入ったメスカルがあれば直接その蒸留所のSNSなどでコンタクトをとることをおすすめします。オアハカに来たら、蒸留所見学でメスカルの魅力を知ってみてくださいね。

All photos by Hisako Tanaka

ライター

1994年生まれ。国内の旅行WEBメディアでライター・編集者の経験を積んだのち、2021年よりオアハカに在住。アートシーンやフードカルチャーを中心に、メキシコで見つけた〈おもしろいもの、すてきなもの。〉を取り上げています。

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