ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

自分の強みを作り、生かす

前田:フリーランスを目指す方や旅を仕事にしたい方からの相談も多いということですが、どんなアドバイスをされていますか?

扇田:学生さんには「好きこそものの上手なれ」という言葉をお伝えしています。ディズニーでもファッションでも旅でもなんでもいいから、やりたいこと、好きなこと、小さなワクワクを育ててほしい。

それがやがて仕事につながるかもしれないし、つながらないかもしれない。好きなら、必ずしも仕事につながらなくてもいいですよね。好きなものが見つかっていない方には、「いろいろチャレンジしてみては」とお話ししています。


提供:扇田さん

前田:「何が好きかわからない」という方、多いですもんね。社会人の方に対してはどうですか?

扇田:好きなものを仕事にするには、差別化が重要。そのためには、書き出して言語化するのがいいですよとお伝えしています。強みを生かせば、それが仕事になっていくかもしれませんから。

前田:具体的なアドバイスですね。とはいえお話をうかがっているかぎり、扇田さんは、読者の方がイメージしている量の数百倍は努力されているように思いますが……!

扇田:ありがとうございます(笑)。フリーランスは誰かから指導されることがないから、自分が正しい方向に向かってるかどうか不安になってしまうもの。

でも、軸がないとブレてしまいます。私にも「なんのためにやってるんだろう」と悩み、なかなか抜け出せない時期がありました。そんな‟暗黒期”に陥らないよう、「なぜしたいのか」「どうなりたいのか」を明確にしておくといいと思います。

前田:フリーランスになったとき、生活していけるかどうか不安はなかったですか?

扇田:もちろんありましたよ。でも楽しいから、チャレンジしてみたかった。うまくいかなければ会社員に戻ればいいんですから。

前田さんはサラリーマンを辞めてTABIPPOを起業されていますが、不安はなかったですか?

前田:僕は3人でTABIPPOを共同創業しました。あまり不安はなかったですね。

というのも、当時の僕たちは一緒にシェアハウスで生活していて、趣味やファッションにお金をかけるタイプではなかったんです。

家賃は月4万円でしたので、生活費は10万円以下。3人とも激務な広告代理店で働いていたので「本気で働いて30万円稼げないってことはないよね?」と、思って起業しました。

扇田:そういうことでしたか。独立したい方には、どんなアドバイスをされていますか?

前田:3つあります。いい家に住むのはやめる、継続的にお金がかかることはしない、ペットは飼わない。この3つを守れれば、事業がうまくいかなくてもバイトで食べていけます。

 

7年間、ブログ更新を継続できるワケ

前田:「フリーランスとしてやっていけるか不安」という悩みって、突き詰めれば「どうやってお客さんを見つければいいんだろう」という悩みだと思うんです。扇田さんは、どんなふうに依頼されることが多いですか?

扇田:今のところ、Web経由でのご注文がメインです。最初は事例がないので、名刺デザインのショップを作ってサンプルを掲載し、アクティブに動いている雰囲気を見せていましたね。

前田:ブログもその一環なんでしょうか。

扇田:そうですね。旅を仕事にしたいなら「Instagram+ブログ」が必須だと思っています。Instagramのアカウントを持っている人はみんな写真が上手だし、差別化は難しいですから。

一方ブログでは、Instagramのフィードだけではわからない、その人の人柄やスキルを伝えることができます。特に女性は、ブログをじっくり読み、依頼するかどうかを決める方が多いように思いますね。デザインのブログは、2日に1回の更新を7年間続けています。

前田:7年間!僕も2018年の7月からブログを毎日更新しているんですが、扇田さんの継続の秘訣を聞きたいです。

扇田:ルーティンになっているんですよね。フリーランスですから、自分の生活を自分で管理して、ブログのための時間を1日のスケジュールに組み込んでいるんです。

前田:なるほど、時間を固定して習慣化しているんですね。日本にいるときだと、1日の流れはどんな感じですか?

扇田:朝は8時起き。朝ご飯を食べて掃除、洗濯を済ませ、仕事のスタートは9時と決めています。その後、お昼ごろまでは集中して仕事をこなしていきます。この時間が私のゴールデンタイム。

友だちとランチに行って、午後は打ち合わせ。スーパーで買い出しをして夕方17時~19時くらいまでまた仕事。夕食を用意して夫の帰りを待ち、一緒に食事をとります。

前田:作業時間をきっちり決めているんですね。フリーランスには珍しいタイプですね。

扇田:オン・オフをしっかりつけるようにしています。というのも、フリーランスになりたての頃は、土日も仕事をしたり、メールが届くと気になって読んでしまったりしていて。

そんな生活を続けているうちに、ちょっと疲れてしまったんです。それからは、土日は完全にお休みに。メールも見ないと決めました。


提供:扇田さん

前田: フリーランスの方って、線引きをしないとずっと仕事をすることになっちゃいますよね。その他に気をつけていることはありますか?

扇田:電話や対面ではなく、メールでやり取りすること。デザインを発注するときって、迷いがちの方が多いもの。打ち合わせの後に「やっぱり変えたい」となることも少なくありません。トラブルを防ぎ、お互いの時間を節約するために、考えをまとめて文章にし、メールで送っていただくことにしています。

加えて、メールは、旅の間は自動返信設定をしておきます。これもオン・オフのひとつですね。

 

環境を変え、旅先での仕事を楽しむ

前田:仕事をしながら旅すると、納期に追われているような感覚になりませんか?どう折り合いをつけていますか?

扇田:基本方針は2つ。「超短納期のものはお受けしない」「仕事を終わらせてから旅立つ」です。仕事のことを考えながらだと、旅を楽しめませんから。

でも、最初の2日はしっかりやります。トランジットの間も、フライト中にも。後半にはすっかり旅モードになるので、仕事はせず、しっかり楽しみます。


提供:扇田さん

 

前田:お仕事をされるときは、カフェなんかで?

扇田:朝、プールサイドで仕事したり……。

前田:プールサイドで!?

扇田:「こんなに素敵なところで仕事してる私」とテンションがあがるので……(笑)。午前中はプールやロビーで仕事をしていることが多いですね。

朝から観光したいときは、早起きします。6時に起きて仕事を済ませ、観光へ。夜は遊びに行かないので、たっぷり仕事の時間をとります。

前田:午前と夜に重点的に仕事時間を確保して、旅と仕事を両立されているんですね。参考になります。

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

扇田:撮影が楽しいので、もっとカメラのお仕事にチャレンジしていきたいと思っています。ふだん家で作業している分、外に出て行く、人とコミュニケーションを取るようなお仕事も増やしていきたいですね。

前田:撮影、マネジメント、SNS運用など、さらに幅広いご活躍を楽しみにしています!扇田さん、ありがとうございました。

 

Text:西嶋結
photo:前田塁

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西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

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