ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター・フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、約3年にわたりメーカー営業職とトラベルライターを両立。その後、副業が高じて国内OTAに転職し、宿泊施設向けコンサルティング営業に従事。 現在は、自然や暮らしに一歩踏み込む、旅の発信へ注力する。山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!冬が待ち遠しい、トラベルライターの土庄です。いきなりですが「アイスモンスター」という言葉をご存じでしょうか。

これは東北でみられる、とびきり大きい樹氷を指す言葉です。日本海側からもたらされた寒気により、木の原形がわからなくなるほど樹林が凍てつくこの現象は、主に蔵王山や西吾妻山といった奥羽山脈の山々で見られます。

そんな「アイスモンスター」ですが、実は中部地方でも見られるのはご存じでしょうか?それが、今回紹介する長野県「南沢山(みなみさわやま)」周辺。先日、ようやく神々しい姿に出会えたので、その様子を少しご紹介します。

普段はマイナーや山でも、“冬になると化ける!”――そんな雪山の魅力を再認識した山旅でした。

静寂包む雪の樹林帯。雪山の第一の魅力に浸る


訪れたのは2月上旬。寒波直後の快晴日ということもあり、ここぞとばかりに車を走らせました。登山口があるのは、長野県阿智村のせいなの森キャンプ場。中央自動車道・園原ICから北へ車で20分ほど走った場所です。

10台ほど停められる駐車場も、この日はいっぱい。きっとみんな思っていることは同じなのでしょう。なんとか車を停めるスペースを確保し、サクサクッと準備を進めたら、早速登山口へ。


南沢山の前半は、ひたすら樹林帯。一見単調に思える道ですが、冬になるとまた趣が異なります。

ふかふかとした雪の感触、パリッとした朝の寒さ、鳥の声一つ聞こえない静寂。そして陽の当たり方ひとつで雰囲気が少しずつ変わっていくのです。


また時折雪粉が舞い、そこに光が当たると、温かみのある玉ボケが美しく見えます。足元には、動物の足跡が見られることも。

変化していく表情とともに、雪山はささやかな発見に富んでいます。

見上げれば霧氷の天井。青と白が織りなす絵画作品に見惚れる


途中からアイゼンを装着し、雪を踏みしめながら登ります。ふわふわの雪をホールドしていく感触が心地よいです。20分ほどすれば、少しずつ斜度が落ち着いてきます。

たくさんの登山者が通っているので、道がボブスレーのコースのよう!トレースは明瞭で、道迷いの心配はありません。木々の間から覗く青空に心奪われながら進んでいきました。


一心不乱に進んでいくこと約30分。明らかに雰囲気が変わってきました。そして、ふと見上げてみると、なんと青空とのコントラストが見事な霧氷の天井が!

まるで花のように繊細に、そして美しく輝いている姿を前にして、思わず立ち尽くしてしまいました。ここからは、山頂まですべてが絶景と言えるような美しい道が続いていきます。


歩く感触が心地よく、青と白のコントラストは爽やかで、本当に気持ちが良いんです。どこから眺めても絵になる風景ばかりで撮影がはかどり、なかなか前に進めませんでした。

進みたいけど進めない葛藤もありますが、こうした前半こそしっかり味わいたいものです。というのも、午後になると霧氷は溶けてしまうから。この刹那の美しさこそ雪山登山に惹きつけられる理由のひとつです。

山頂は霧。美しくも過酷な雪山の世界が広がっていた


登山開始から約1時間半。ようやく南沢山の山頂付近へ到着しました。すると、また山は表情を変えていきます。白霧が立ち込め、付近を飲み込んでいったのです。展望が開けた山のはずなのに、何も見えません。

しかし、時々垣間見える美しい山の姿がそこにはありました。ひたすらに凍てつく白き世界。残念という心とは裏腹に、その光景に見惚れます。


南沢山地点で折り返す選択肢もあったのですが、”ここまで来たからには隣の横川山まで縦走しよう!”一緒に登っていた父とそう決めました。

ここからは森林限界の笹原とカラマツが織りなす道をいく稜線歩き。アイスモンスター級の巨大樹氷が迎えてくれます。その荘厳なたたずまいに心を奪われながら進みました。


霧は時折薄くなるものの消えません。しかしその些細な変化が、周囲の風景を劇的に変えていきます。

白い空を背景にしても際立つ、樹氷の純白な輝き。登山道から少しだけ外れて出会った光景でした。未踏の雪原を自由闊歩しながら、ひとときの至福を噛み締めました。

霧の切れ間に、ついに姿を見せた長野の蔵王


樹氷の森を抜けて、横川山への登りに差し掛かる頃、先行していた父の声がしたと思えば、霧がダイナミックに流れ、少しずつかすれていきます。「これはもしかして!?」と思ったそのとき。

あたり一面、目を疑うほどの眩しい光景が広がっていました。


山肌を埋め尽くすように真っ白なカラマツ樹氷が、優しい水色の空の下、輝きを放っています。その燦然とした美しさには、声を上げずにいられません。


登山道の傍らには、アイスモンスター級の樹氷がずらり。人の身長と比べると、その存在感は圧倒的。まさか中部から日帰り圏内で、こんな景色を見られる山があったとは……。

中央アルプスの最南部に当たる南沢山~横川山の縦走路。このネーミングの響きも、アイスモンスターと相性のいい、隔絶した世界観を表していると思います。


そして最後の登りの道へとさしかかります。これがけっこう急登になっていて野趣溢れる区間。下山者と道を譲り合いながら、ふかふかの感触を一歩一歩楽しみます。

そして時折横に目をやれば、樹氷の先に南アルプス・中央アルプスの山並みが展開!この景色は、アルプスの山々に囲まれている長野県阿智村ならではでしょう。

天候変化こそ、冬の山の醍醐味


登山開始から約2時間半で山頂へ。麓の駐車場と同様、山頂は多くの登山愛好家で賑わっていました。この日は風もなく暖かい日でした。過ごしやすい冬日というのは貴重です。

しかし、さきほどまで晴れていた天候も少しずつ変化していきます。再び霧が現れ、少しずつ視界を奪われました。


最後に見られたのがこの景色。カラマツ樹氷と、立ちはだかる南アルプス山脈。樹氷のスケール感がとてつもないです。

そうして辺りは一気にガスに飲み込まれてしまいました。持参したカップラーメンを作り、食べ終わるまで待ってみましたがいっこうに晴れません。

いちだんとガスが濃くなったタイミングで、仕方なく下山することに。


しかしながら、この天候変化こそ私が雪山に憧れを抱く理由かもしれません。冬型の気圧配置になれば、天候は不安定になりますが、その不安定な気候こそアイスモンスター級の樹氷を育み、私たちに非日常の光景を見せてくれるからです。

雪山の刹那の美しさに取り憑かれて、今日も山に登る。この冒険は一生止めることはできないのだろうと思います。

■詳細情報
・名称:南沢山 / せいなの森キャンプ場登山口
・住所:長野県下伊那郡阿智村清内路2991
・地図:
・アクセス:園原ICから車で約20分
・料金:無料(環境整備協力費200円/人)
・所要時間:登山口から南沢山まで往復約4〜5時間、南沢山から横川山まで往復約1時間半
・オススメの時期:1月~3月の降雪直後
・備考:スノーシューやワカン持参ベター。雪山登山の装備を揃えて挑戦してみてください。

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター・フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、約3年にわたりメーカー営業職とトラベルライターを両立。その後、副業が高じて国内OTAに転職し、宿泊施設向けコンサルティング営業に従事。 現在は、自然や暮らしに一歩踏み込む、旅の発信へ注力する。山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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