振り返れば、沢の先に広がるオホーツク海と田園風景。道東のダイナミックさと牧歌的な雰囲気が共存する、お気に入りの一枚を撮影することができました。
それにしても相変わらず、沢の横を進んでいくワイルドな登山道。後半になればなるほど傾斜が険しくなるため、なんだか沢登り(シャワークライミング)に挑んでいる感覚になります。
「まさかラストで本当に沢登りをするとは!?」
とはいえ、深さはほとんどないので、靴の中まで濡れることはないのですが、完全に沢の中を直登していきます。ほとばしる水滴が涼しく、最高にアドベンチャーな体験を楽しむことができました。
そしてスタートから約3時間で、2つ目の分岐にあたる上二股へ到着。ここから30分ほど進むと、いよいよ森林限界(高木が生育できず森林を形成できない限界線)を越え、クライマックスを迎えます。
知床連山を見渡すクライマックスの稜線へ
上股から20分ほど歩いて、いよいよ斜里岳の稜線へ。ここまで変化に富んだ、雄大な登山道を進んできたので、半端ない達成感があります。振り返ると、幾重にも重なる道東の山並みと、ハイマツの峰々。
雲の先には、雌阿寒岳(めあかんだけ、標高1,499m)も顔を覗かせています。まるで吸い込まれるような、青と緑の景色を前に、ただただ感動してしまいました。
そして今まで山に阻まれて見えなかった北側のパノラマも開けてきます。そこに佇んでいたのは、知床連山の最高峰「羅臼岳(らうすだけ、標高1,661m)」。海から山までひと続きの知床の壮大な自然が広がります。
しかし、山頂はまだ先です。すばらしい景色で疲れを吹っ飛ばしたら、いよいよラストクライムへ。距離は短いものの、傾斜はきつく、最後まで休めません。改めてタフさが要求される山だと再確認させられます。
さて、その先に待っているのは、雄大な自然を見渡す道。まさに隔絶された”雲上の世界”に来たと感じられる絶景の連続です。北海道の世界観を象徴する劇的な景色変化こそ、「斜里岳」が名峰たるゆえんだと実感しました。
「数時間前に見上げていた、遥か遠く感じられた山の山頂に、あと少しでたどり着くのだ!」と、思わず感動が込み上げてきます。
圧倒的な達成感を味わう。百名山「斜里岳」へ登頂
山頂は目と鼻の先。その先にはオホーツク海のパノラマが広がっています。日本各地にも、海の展望が美しい山は多くありますが、森林限界の山からこれほど近く海を眺められる場所は極めて珍しいです。
これこそ知床が世界遺産に登録されている理由だったりします。さあ、そんな贅沢なパノラマを前に、4時間にわたる登りのゴールです。
山頂は展望が360度開けていて、抜群の開放感! 山頂標識の先には道東の田園地帯がパッチワークのように広がります。網走の能取岬から知床連山まで、緩やかにカーブを描くオホーツク海も含めた、果てしなく美しい景色。
西に目をやれば、雌阿寒岳と阿寒摩周国立公園。東に目をやれば、遠く浮かぶ国後島の姿も。知床から360度見渡した道東は圧倒的なスケール感を見せてくれました。
下りのことも考えると、あまりゆっくりする余裕もないのですが、しばし山頂で達成感と感動に浸っていました。こんなすばらしい山に親子で来られたこと、そして最高の天気に恵まれたことに感謝です。
夏になると斜里岳に思いを馳せずにはいられないほど、強く記憶に残る山旅となりました。
下山後は斜里温泉へ。珍しいモール泉に浸かる
下山後に温泉に浸かるのも山旅の醍醐味。ということで、最後は斜里町の中心部にある「斜里温泉 湯元館」へ。
最大の特徴は、モール泉という珍しい泉質です。ドイツ語の泥炭 (Moor)に由来しており、モール泉とは植物生の腐植物を含んだ温泉になります。
赤ワイン色のお湯は独特な脂の匂いがして、ポカポカと身体を芯から温めてくれます。身体の疲れをほぐしてくれる名湯でした。
ということで、今回は道東の名峰「斜里岳」の登山レポートをお届けしました。北海道の山は一つひとつが山深く、登り応えがあり、印象的な山ばかり。ぜひ夏に、北海道の飽くなきフィールドを求めて山旅に挑戦してみてはいかがでしょうか。
・名称:斜里岳(しゃりだけ、標高1,547m)
・住所:北海道斜里郡清里町江南
・地図:
アクセス:斜里岳登山口まで斜里町中心部から車で約35分
・所要時間:往復9〜10時間
・備考:渡渉が連続するため、天候が安定しているタイミングでの登山がおすすめです。Yamapのログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。知床連山はヒグマの生息地ですので、熊鈴や熊スプレーの持参をおすすめします。
・オススメの時期:夏
・公式サイトURL:https://www.kiyosatokankou.com/sharidake/
All photos by Yuhei Tonosho