ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

以前、「風景写真を撮りたい人に!撮影トレーニングとしての「山旅」のススメ」にて登山と写真の相性を綴りました。

限られた行動時間の中で、めまぐるしく変わる被写体に合わせ、素早く画角を探し、マニュアル設定を変更しながら、自分の感性で風景を切り取る――風景写真を上達させるためには、山はこれ以上ない環境です。


そこで今回は実践編として、私がカメラを持って実際に登山をしてきた話を寄稿します。「1日の登山でこんなにさまざまな写真が撮れるんだ」と感じてもらえるはず!

またその中で大活躍する広角超望遠レンズ「TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Dill VC」についてもレビューを加えます。汎用性の高い機材を持参すれば、山旅で出会える世界も広がります。

頸城山塊「妙高山・火打山」へ1日の大冒険


今回足を運んだのは、新潟県南部に位置する「頸城山塊(くびきさんかい)」。一般にはあまり知られていない山域ですが、実は日本百名山のうち3座も選ばれており、登山愛好家の間では根強い人気があります。


最高峰は火打山(ひうちやま:標高2462メートル)で次峰が妙高山(みょうこうさん:標高2454メートル)。今回はその2座を1日で登り、帰って来ようという計画です。距離約25キロメートル、標高差が大きいコースのため、普通であれば1泊2日の内容。しかしながら、日帰りロングコースが大好物の私にとっては挑戦しがいのある冒険でした。


持参した機材は、CanonのAPSC一眼レフ/8000Dと、TAMRONの広角望遠レンズ/18-400mm F3.5-6.3 Dill VC。過酷な環境を進んだり、機材を傷つけたりするリスクをはらむ登山では、高価なボディを持っていくのは怖いこと。そして風景がどんどん変わる山というフィールドに対して、高い汎用性を求めた結果、この組み合わせに落ち着きました。

さぁ、それでは12時間にもわたる山旅の奇跡を綴っていきましょう!

時間帯の変化が魅せる山の世界


ロングコースの登山を行うとき大事なのは、いかに前半を稼げるか?ということ。今回のように、歩行時間が12時間を超えるような山行(さんこう)は、日の出前に出発します。日が短い秋シーズンということもあり、早朝5時にはまだ辺りは真っ暗でした。

しかしだからこそ、平日サラリーマン生活で溜め込んだストレス(=冒険心)が解放されます。何も見えない闇夜の森、しかし未知のフィールドを確実に進んでいく感覚。これこそ登り始めの醍醐味です。


そして、日の出の時間を迎えると、次第に陽光が届くようになり、周囲の世界が色づき始めます。登山道序盤のブナの森を通り過ぎ、ちょうど本格的な登りにさしかかった頃、景色の開けたジャストポイントへ到着しました。


するそこには、燃えるように照らし出される頸城山塊の山肌と、北アルプス主脈・白馬連峰がコラボレーションする絶景が!朝ならではのモルゲンロートがかった岩稜に心洗われた瞬間でした。

※モルゲンロート:夜が明けきらない早朝に、東の空より一筋の赤い光が山を照らし、山脈や雲が赤く染まる朝焼け

季節の移り変わりが魅せる絶景が待っていた!


最初に登頂を目指す「火打山」への行程は前半が山場。十三曲がりという急登のつづら折りを越えれば、なだらかなコースへ変わります。息を整えながら進み、中間地点である高谷池を目前にすると、登山道の雰囲気が変化したことに気づきました。


地面を見れば霜で覆われ、木々には冬山の代名詞である霧氷(むひょう)が育っていたのです。季節はまだ10月の半ば、実は初冠雪の翌日。思わぬ冬の芸術作品との遭遇に歓喜しました。

※霧氷:空気中の水分が過冷却で木々に付着する現象

まだ日が上がりきらない早朝だからこそ、山影により溶けないまま残されていたのです。そして、この霧氷はこれから出会う秋から冬へ移行する山の姿の伏線となっていました。


草紅葉と霜が共演する「高谷池」、日が差すと光と陰影のコントラストが幻想的に。


晩秋の燃えるような草紅葉の道を進む、火打山へのハイライト。


火打山随一の景勝地・天狗の庭からは、北アルプスの雪稜が顔を覗かせる。

なかなかタイミングが難しいものの、この刹那の風景変化こそ「山旅」の密かな魅力。標高差のついた旅だからこそ、季節の移行を体感できる。”季節を旅する”って響き、なんだか心惹かれませんか?

望遠レンズで切り取るミクロな世界に引き込まれる


一方で、こうした季節変化には、私の標準装備である「TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Dill VC」がとても有効でした。通常、超望遠域の400mmは手持ちするようなレンズではないのですが、コンパクトに設計されているため、登山でも携行可能です。

このレンズを導入すれば、ダイナミックな山の風景から山の小さな表情変化まで、あらゆるシーンに対応できます。VCとはブレ防止機能で、余分な失敗を防止し、サクサクと写真を撮れるのも嬉しいところ。


葉の上で宝石のようにキラキラ輝く霜柱。一つひとつの葉ごとに違う表情。


目がピントを合わせる前、一瞬の玉ボケが美しい。


いつまで見ていても飽きない天然のガラス細工。

広角で撮影することの方が多い登山ですが、常に敏感にアンテナを立て、ミクロな世界も探す。広角と望遠をスムーズに出し入れできれば、山旅の印象も、出会えるストーリーもより一層深まります。

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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