ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!トラベルライターの土庄です。2023年に入って半年と少し。ようやく以前の活気が戻ってきたように感じられますね。

私は本業で携わっているのが宿泊業なので、お宿様の稼働が回復してきたという嬉しいお声を聞くことも増えました。

一方、社会情勢やライフスタイルの変化で、旅の捉え方がずいぶん変わったのも事実でしょう。二拠点生活(デュアルライフ)という言葉が流行したり、旅と暮らしの融和が生まれたりするなど、旅の概念が大きく広がりました。

まさにTABIPPOでも提唱している「あたらしい旅」=旅の深化です。

今回はそんな旅のもつ価値と、その影響にフォーカスしたいと思います。

娯楽からライフスタイルへ。「あたらしい旅」とは?


抽象度の高い言葉でもある「あたらしい旅」。もちろんいろいろな解釈がありますが、一言でまとめるなら、旅がもたらす意味や意義のなかに”単なるレジャーだけではない価値観”も含まれるようになった……ということを意味しているのではないでしょうか。

この数年、劇的な社会情勢の変化に伴って、働き方や人とのコミュニケーション、家庭での過ごし方など、さまざまな選択や変化を余儀なくされました。そんななか「本当に大事にしたいものは何で、自分の行動基準は何か?」などと、自問自答する機会も多かったのではないかと思います。


一言で言うなら個人化が進んだことで、娯楽としての旅行から、ライフスタイルの一つとして旅を捉え直す考え方に焦点が当たってきました。

ステイケーションや暮らすように旅をする、二拠点生活(デュアルライフ)といった言葉が象徴的です。TABIPPO.NET読者の方からすれば、旅そのものの価値や魅力が、より根源的な部分へ原点回帰をしていると言い換えてもいいかもしれませんね。

新鮮なインプット


単なるレジャーから、人生まで広がりを持った「あたらしい旅」。そんな旅がもたらす人生にとっての価値と影響について掘り下げて考えてみたいと思います。

まず1つ目は「新鮮なインプット」です。

いざ旅に出ると、見知らぬ土地を深く知ることになったり、印象的な出会いがあったり、自分の殻を破る経験をしたりと、多くの学びが得られます。

大事なのは、無理やりではなく、意図さえせず、自然と学びが得られている点です。学ばなければならないという義務はなく、旅に出るだけで無意識のうちに学びを実践できていると言い換えてもいいかもしれません。


目の前に現れることに素直に受け取って、自分と似た価値観や考え方を大事にしている人に共感したり、逆に自分と異なる価値観や考え方を吸収したり、「人生において本当に大事なものは何か?」という指針を得ることもあります。

きっと旅好きな読者の皆さんも、職場と自宅に加え、サードプレイスとして”旅”という場に身を置くことで、平然と過ごす日々の何倍も刺激的な一日が過ごせるという実感を持っている方も多いのではないでしょうか。

そして旅で得たインプットを原動力として、新たなアウトプットへと踏み出せば、自分の成長を感じられることも。旅での学びは日常に気付きを与え、行動の動機づけやモチベーションの向上をもたらしてくれます。

内なる自分に出会う


アクティブで外向的なイメージの旅ですが、その一方で自分を深く掘り下げていくこともできます。そしていわば”内なる自分”に出会えることこそ、あたらしい旅の価値の一つではないでしょうか。

旅先での行動や意思決定は、明確に自分の価値観を反映しています。ともすると、周囲を気にして自分の本音を覆い隠すこともある日常とは異なり、自分に対して正直であり続けられるのが”旅”でしょう。


旅の中でユニークな人や生き方に出会うと「自分はどうしたいのか?」「自分がもっとも大事にしたいものは?」「今の生き方でいいのか?」などと、たくさんの自問自答を繰り返します。

旅とは、いわばさまざまな刺激からのインプットの場。それらを吸収して飲み込むとき、常に内省が伴います。この内省こそ「自分の人生においてかけがえのないものは何か?」を明らかにしてくれます。

小さな挑戦を繰り返し、ピンチに対処する


旅とは”手軽な挑戦”とも言い換えられるのではないでしょうか。計画を立てて、準備をし、現地に適応しながら最後の最後まで旅を楽しむ。時には悪天候やアクシデントなど、壁が立ちはだかることもしばしば。

旅を通して、そうしたピンチに自分で対処する能力が身につきます。これは実践的な学びにほかなりません。

そして何度か旅を繰り返しているうちに、壁を事前に察し、対策を講じられるようになります。これはリスクマネジメント能力の向上ともいえるでしょう。


“旅”という小さな”挑戦”を繰り返すことで、人としてたくましくなれる気がするのは私だけでしょうか。そして小さな挑戦が習慣化されることで、日常でもそのアグレッシブさが生かされている感覚があります。

旅を通して、挑戦に抵抗を感じにくくなったり、臨機応変な対応力が身についたりすること。これは、仕事や将来設計などにおいても武器になってくるはずです。

人生とともに変容する旅


人生とともに変容していくこと。これが旅の面白さであり、奥深さでしょう。例えば筆者も、学生時代の自転車旅→社会人の週末を楽しむ山旅→パートナーとの夫婦旅行→旅をしながら仕事というように旅のスタイルが変わってきています。

「人生のそれぞれのステージで、そのときを一番楽しむスタイルを考える」
「不確実で予測不可能な時代を生きていくために、常に前を向きながら自分を変える」

こうしたポジティブなマインドやスタンスは、きっと人生や日常の生活へいい影響をもたらしてくれるのではないかと思います。


そんな旅の変化は、転職や移住、多拠点生活、これからの将来設計など次のステップの指針になることも。

悩みがあるときこそ旅に出てみると、自分の殻を破れる体験が待っているかも。旅へ一歩踏み出せば、自分の人生に一石を投じられるかもしれませんよ。

あなたの「あたらしい旅」は?


今や娯楽の範疇を超えて、解釈が拡大し続けている「あたらしい旅」。

もはや旅とは、旅行そのものを指すのではなく、生き方そのものを表現する概念と言っても過言ではないかもしれません。

そして、その人の好きな旅スタイルや旅遍歴などを聞くことで「その人がどんな方で、どのような生き方を実現しようとしているのか?」を把握できる時代がやってくると思います。


旅の社会的な価値や見方を変えるために、ぜひTABIPPO.NET読者の皆さんも、自らの「あたらしい旅」の体験を身近な人から伝えてみてください。もしかしたら周囲の方にもいい影響をもたらすかもしれませんよ。

All photos by Yuhei Tonosho

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土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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