旅の自由化から約60年。物理的な移動の制限がなくなり、世界一周航空券、多拠点居住、定額制コワーク・リビングの登場など、ライフスタイルが大きく変わり、LCCの航空業界参入でさらに移動が容易になった近年。けれど、2020年のコロナの出現で、世界がガラリと変わりました。
旅や移動に限らず、「今までの常識」全般が通じなくなり、「ニューノーマル」と呼ばれるこれからの時代の在り方が、模索・形成されながら日々が進んでいます。
正解は誰にもわからない「今」、旅や移動にまつわるライフスタイルやカルチャーをつくることを社是に携える 「HafH(ハフ)」とTABIPPOの代表のふたりは、どんな世界を見ているのでしょう?
最前線でもがくふたりの「現在地」と「あたらしい旅の未来予想図」を、ちょっぴり盗み聞きしてみるのが、この記事です!
1983年長崎市生まれ。2007年に筑波大学を卒業後、電通入社。2015年から官邸初のソーシャルメディアスタッフとして従事。2019年4月より定額制宿泊サービス「HafH(ハフ)」のサービスを開始、2019年9月 電通退社。2018年4月〜2021年3月 つくば市まちづくりアドバイザーに就任。2021年4月〜(一社)日本ワーケーション協会顧問。東京に住みながら地元の地方創生活動に従事、原爆の実相を伝える「Nagasaki Archive」発起人として、2010年Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード特別賞受賞他、2011年〜在京長崎県人会「しんかめ」を主宰など。
1年半で、ガラリと変わってしまった世界で
ーー新型コロナウイルスが流行して、これまでのような生活ができなくなってしまいましたよね。実際、どうですか?会社としても個人でも、思うことがあればお伺いしたいです。
大瀬良
清水
大瀬良
清水
ーー(TABIPPO、残っていてよかったなぁ。)
「旅」という本丸を狙いにいくための、HafHリニューアル
ーーそんな状況から1年以上経ったいま、HafHは「旅のサブスク」として大幅リニューアルしました。これはいつ頃から考え始めたことなんですか?
大瀬良
福岡県宗像市のHafHの提携施設「MINAWA」付近
Photo by Osera
清水
大瀬良
すごくありがたいことだよね。でも、一方で「やっぱり思ったよりも伸びないな」という印象もありました。ワーケーションは僕らが目指しているライフスタイルの一選択肢ではあるけれど、僕らHafHが目指している、3年目として伸びなきゃいけない成長曲線ほど、ワーケーションのマーケットはすぐには広がらないなと。
もちろん、注目度や普及度が右肩上がりなことは確かなんだけど、ちょっとずつ……っていう感じで。やっぱり今は緊急事態宣言もあって、ワーケーション関連に予算が使われない状態。世の中としてはもっともっとプロモートしたいんだけど、なかなかパブリックには、移動を伴う働き方をプロモートすることが難しい状態が長期間続いていますよね。
さまざまなことが落ち着けば一気に伸びていくことは期待はしているけれども、今ワーケーションに事業をかけるは、リスクを伴うなという判断をしたわけです。
清水
大瀬良
「旅のサブスク」を謳うHafHは、「トラベルテックカンパニー」へ
東京都上野のHafHの提携施設「NOHGA HOTEL UENO」
Photo by Osera
ーー「旅のサブスク」をリリースしたいま、大瀬良さんが描く今後の旅のスタイルってどんなイメージなのでしょうか?
大瀬良
「旅をする人」というと、アドレスホッパーや旅暮らしをしている方々のイメージが強いかもしれないけど、「2泊の旅を年に4回」みたいなカジュアルな旅好きたちもたくさんいるんです。「旅を日常にしていく」という意味では、その人たちがHafHを使ってくれないといけないんですよね。
「どこか旅行に行きたい」と考えたとき、毎回宿を探して、値段やレビューを見て比較して……って、じつはめちゃくちゃ大変なことなんですよ。TABIPPOのみんなや、TABIPPO読者の人は「そんなの朝飯前でしょ」と思うかもしれないけど、世の中を見渡すと、手間と感じる人が実際は多い。そういう面でもHafHはすごく便利なものになるはずだし、「定額の旅」という新しい体験価値の提供にもなると思います。
清水
大瀬良
たとえ年に4回しか旅に行かないとしても、「旅のサブスク」になったHafHなら、旅行に行かなかった月のHafHコイン(HafHの独自通貨・ポイント制度。宿泊予約に利用できる)を翌月に繰り越して、次の旅行に活かすことができる。HafHコインを「積み立てる」ことで、「もともとは旅行に行く予定じゃなかったけど行ってみよう」とか、「行きたかったけど行けてなかった」という旅行スタートの動機にもつながるかなと。
今までワーケーションって言われたところで全然イメージがわかなかった人たちも、HafHを使うことで、自分らしい生き方の実践につながっていけばいいなと思います。
長崎県長崎市のHafHの提携施設「i+Land nagasaki」
Photo by Osera
清水
大瀬良
今の話を聞くと、TABIPPOが10年前からずっとやってきたアプローチと方向性が一緒だと感じますね。僕らって、「世界一周っていいじゃん!」っていうことを発信しているけど、いきなり世界一周行こうぜ!なんて言われても、誰も行かない。
だから僕らは、ボトムアップ的にコミュニティを作って、ライトユーザーさんたちと交流する中で、僕たちの考える旅を伝えていく。なので今の大瀬良さんの話はすごく共感しましたし、「だから今、一緒にいろんなことをやれてるんだな」と思いますね。
清水
TABIPPO.NET掲載記事【「起業しようと思ったことは、一度もない」 経営者たちが胸に抱く “旅にかける夢のあり方” とは】より。
画像一番左が清水、その右隣が大瀬良さん
大瀬良
清水
大瀬良
僕たちは会社のポジショニングとして、そのトラベルテック市場を動かしていくためにも、本丸にアプローチしなくてはいけないなと考えていて。
先日リニューアルしたコーポレートサイトで、はじめて自分たちの会社のことを、「トラベルテックカンパニー」と定義づけしたんです。
大瀬良
清水
観光や旅の概念すらアップデートしていきたい。非日常を、日常へ
ーーすこし事業の話からは離れてしまうのですが、世界が変わってしまったこの1年半、旅業界に携わるお二人は、どういう風に世の中の変化を見ていました?
大瀬良
ーー家の外に出ていいのかもわからなくなっている状態ですもんね。
大瀬良
大瀬良さんが訪れた、徳島県神山町「week」。
非日常の空気が吸いたい、という声をこの1年半で多く聞いた Photo by Osera
清水
大瀬良
大瀬良さんの話も踏まえて言うと、物理的に移動するってすごくいいことだったなと感じますね。海外に行かなくても、自宅以外の場所に泊まるとか、近くの居酒屋でちょっと飲むとか、物理的な移動が伴う体験って人の心を豊かにしたり、人のストレスを解消するものだったりしたなって。だからHafHがちょっとでもいいから外に出るきっかけになるのは、素晴らしいよなと思うし。
最初、今回のHafHのリニューアルは、「旅と日常の境界線をなくしていく」ことがメインの目的なのかと思ったんだけど、違うね。大瀬良さんが個人noteの記事で言及していた「旅が日常になるサービス」もそうだけど、「一歩目を踏み出すきっかけ」とか「旅をすることが選びやすくなる」が近いのかもなぁ。
清水
2021年夏に清水が長野県乗鞍高原のサスティナブルツアーで訪れた、
山頂の様子。清水自身もずっとまえから、旅と仕事、暮らしの境目はもう曖昧だ
大瀬良
清水
大瀬良
清水
大瀬良
今って、HafHのホテルに泊まる前提で旅先を決める人が、僕のまわりでめちゃくちゃいるわけですよ。HafHが旅のきっかけになるっていうのがすごくいい。
ただ、今回のリニューアルの本質=「旅のサブスク」が本当に画期的であるということが、どこまで伝わっているのかっていうのはちょっと不安ですね。さっきも大瀬良さんが言ってたけど、HafHってサブスクだけど、毎月使わなくてもコインが繰り越せる、貯められる仕組みじゃないですか。そのあたりのサブスクならではの利便性が、ちゃんと伝わってるのかなっていうのは気になりますね。
清水
大瀬良
そうなんですよ、それが本当に難しいところで。HafHって、旅のコストパフォーマンスのよさじゃないところで勝負をしたいんですよね。過去に旅行代理店が作ってしまった「コスパがいいことが善」「コスパの追求」という旧価値にとらわれてしまった人たちは、「HafHを使うと1泊あたりいくらで、どのくらいほかのサービスよりお得なんだ」ってことをものすごい追求したくなっちゃうんです。
僕らが「宿泊のサブスク」ではなく、「旅のサブスク」って言ってるのはここにも意味があって。JR西日本の実証実験で40%分の値段が含まれるとか、個人賠償責任保険が付帯されてるとか、旅全体のお得さも含めたサービスにしていくって言い続けていても、まだまだ通じない。でも、それがここ30年くらいで出来上がった観光のあり方なので、しょうがないんですよね。だから、それを僕らの会社だけで変えようなんて無理な話で。HafHを使ってみれくれた人たちが徐々にわかってくるものだと思うんですよね。
清水
大瀬良
清水
大瀬良
清水
大瀬良
清水