乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~布引滝
ライター
かわい まゆみ 絶景ハンター&トラベルライター

かつてミステリーハンターに憧れた、好奇心旺盛、タフさ、度胸、鉄の胃腸とフットワークの軽さ、何より悪運の強さが持ち味の女ひとり旅88カ国。秘境絶景地球のワンダー、日本人になじみの薄いマニアックなスポット、B級グルメに屋台飯が大好物。世界は驚きに満ちている、老いも若きも男女の別なく、"外に出たい"その一歩を後押しする何かを提供できたら嬉しいです。

こんにちは、絶景ハンターのまゆみです。

みなさん、苔の絶景スポットと言えば、どこを思い浮かべますか?

世界遺産の屋久島や白神山地、信州白駒の池、青森の奥入瀬渓流、京都の苔寺など……数え上げたらキリがないですね。

そうしたなかで、苔好きの筆者が強くおすすめするのが奥飛騨地方にある乗鞍山麓「五色ヶ原の森」。日本最後の秘境とも噂されるこの深い森は、苔好きな人にもそうでない人にも必見です。

エコツーリズム大賞受賞!「乗鞍山麓五色ヶ原の森」とは

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~布引滝Photo by 乗鞍山麓 五色ヶ原の森案内センター

富山県、新潟県、岐阜県、長野県の4県にまたがる北アルプス。その最南端にそびえる乗鞍岳の北西山麓およそ3,000haに広がる森林地帯が「五色ヶ原の森」です。このほぼ全域が中部山岳国立公園に指定されています。

古くから霊峰として俗人を寄せつけなかった「乗鞍岳」。近代に入りようやく登山道が整備されると、五色ヶ原の森も登山客で賑わいはじめます。

ところが、大正時代中頃より乗鞍スカイラインの前身となる登山道が整備され、昭和に入って観光道路として畳平まで車両通行できるようになると、旧来の登山道は廃れ、森の存在も人々の記憶から忘れ去られていくこととなります。

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~布引の滝Photo by Mayumi

閉ざされた森が開かれたのは、2004(平成16)年7月。なんと平成に入ってからです。

持続的な自然環境の保全と利用の両立を目指し、丹生川(にゅうかわ)村(現 丹生川町、2005年に岐阜県高山市に編入)と高山市が協力して入山に関する厳格なルールを設けます。必要最小限の開発と入山規制を行うことで、昔ながらの原生的な自然が維持されることに。これが「日本最後の秘境」といわれるゆえんです。

昨今、観光においてサステイナブルツーリズムが注目されていますが、それに先んじたすぐれた取り組みとして2021年3月、環境省と日本エコツーリズム協会が実施する「第16回エコツーリズム大賞」の大賞にも選ばれています。

「認定ガイドつきエコツーリズム」と「森の案内人」

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~ガイド同伴のトレッキングPhoto by Mayumi

開山以来、入山者数の制限と認定ガイドつき有料ツアーの参加がマストとなっている五色ヶ原の森(ツアー実施期間は原則5月20日~10月31日、一部コース除く)。

その目的は「自然地域の過剰利用による自然破壊の防止や豊かな自然環境の保全、植生破壊の防止、来訪者の安全確保、さらには環境教育など」とされています。

戦後の高度経済成長以降、進展してきた旅行の大衆化(マスツーリズム)で、過剰に押し寄せる人・モノ・土地開発により自然破壊や環境汚染、観光公害が深刻化してきました。

こうした流れを受け、五色ヶ原の森では、受け継がれてきた偉大な自然を次世代へ継承しつつ、持続可能な地域社会を継続するために、行政と連携した「認定ガイドつきエコツーリズム」というスタイルを貫いています。

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~認定ガイド同行義務Photo by Mayumi
認定ガイドは、五色ヶ原の森を誰よりも熟知する「森の案内人」。森の存在を通じて自然の重要性、大切さなどを参加者へわかりやすく“翻訳”するスペシャリストとしての役割を担っています。

ガイドのクオリティを維持するため、定期的なガイド研修、コースパトロール・維持管理(補修メンテナンス)、モニタリングによる高山市との連携を図っているそうです。

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~ゲートPhoto by Mayumi
前述のとおり、五色ヶ原の森では徹底した入山管理が行われています。関係車両以外は進入禁止、登山ルートはガイドの頭の中に叩き込まれ、目印や標識はほぼなく、素人目にはわからないようになっています。

また、コンセプトである「自然環境へ最大限配慮」したコース整備も特徴のひとつ。倒木や石を再利用した登山道、河川を生かしたマイクロ水力発電のほか、休憩所のトイレには微生物を使ったバイオマス浄化システムが採用されています。

さらに森の中の作業では重機を使わず、手動ウィンチなどを使って可能な限り人の手で作業するなど、既存の環境に負荷をかけない取り組みがなされています。

全6種類!五色ヶ原の森を堪能できるコース

さて、それではいよいよ五色ヶ原の森のトレッキングコースの紹介です。

用意されたコースは大きく6つ、1日がかりのロングコースと半日程度のショートコースが用意されています。

ロングコース(1日コース)

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~ゴスワラコースPhoto by Mayumi
ほぼ1日がかりの、ややタフなロングコースは以下の3つ。それぞれに特徴があり、原生林か滝か湖沼か、何を優先したいかで決めることになります。
※所要時間は休憩時間を含みます。
※スタート地点まで専用車両で移動します。
※万一の場合に備えて、エスケープルート(緊急退避用ショートカットルート)も用意されています。

【1】ゴスワラコース
 

内容:巨木が立ち並ぶ原生林と苔むす森
 歩行距離:6.4km
 所要時間:約8時間
 標高:1,620m~1,920m
 難易度:★★★★
 ※雪解けの都合、シーズン開始が遅れる場合あり

【2】カモシカコース

 内容:滝めぐりと岩登り
 歩行距離:6.7㎞
 所要時間:約8時間
 標高:1,360m~1,620m
 難易度:★★★
 ※管理道工事のため、2022/8/8~8/24は休業

【3】シラビソコース

 内容:池めぐりと伏流水の布引滝
 歩行距離:7.3㎞
 所要時間:約8時間
 標高:1,360m~1,640m
 難易度:★★★

上記、料金共通で大人9,000円、高校生以下5,400円(ツアー参加料金・保険料・消費税含む)

ショートコース(4時間~半日コース)

乗鞍山麓「五色ヶ原の森」~シラビソコースPhoto by Mayumi
約4時間~半日がかりの体力的にやさしいショートコースは以下の3つ。
※シラビソショートコース、雌池布引滝コースはスタート地点まで専用車両で移動します。

【4】シラビソショートコース

 内容:湖沼めぐりと伏流水の滝(シラビソコースの後半部分)
 歩行距離:4.4㎞
 所要時間:約4時間半
 標高:1,360m~1,640m
 難易度:★★
 料金:大人7,000円/高校生以下5,000円

【5】久手御越滝(くてみこしたき)コース

内容:久手御越滝と里山歩き(カモシカコースの前半1/4程度)
 歩行距離:3.4㎞
 所要時間:約3時間
 標高:1,360m~1,500m
 難易度:★★
 料金:一人3,500円(子ども料金設定なし)

【6】雌池布引滝コース

内容:神秘の雌池と布引滝鑑賞(シラビソコースの前半1/4程度)
 歩行距離:2.0㎞
 所要時間:約2時間
 標高:1,360m~1,460m
 難易度:★
 料金:一人5,500円(子ども料金設定なし)

★その他、各ツアーの詳細は【公式サイト】をご参照ください。

ライター
かわい まゆみ 絶景ハンター&トラベルライター

かつてミステリーハンターに憧れた、好奇心旺盛、タフさ、度胸、鉄の胃腸とフットワークの軽さ、何より悪運の強さが持ち味の女ひとり旅88カ国。秘境絶景地球のワンダー、日本人になじみの薄いマニアックなスポット、B級グルメに屋台飯が大好物。世界は驚きに満ちている、老いも若きも男女の別なく、"外に出たい"その一歩を後押しする何かを提供できたら嬉しいです。

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