ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!昨年、旅行業界へ転職をしてから、旅行の目的が「宿」へ変わりつつあるトラベルライターの土庄です。

温泉旅館というと、リゾート地にある豪華なお宿をイメージする方もいるかもしれません。ですが、実はかなりマニアックな「秘湯の宿」というジャンル、つまり野趣溢れる源泉掛け流しのお湯と、自然に溶け込む滞在を大切にしている宿泊施設も含まれます。

今回は、そんな秘湯に泊まる魅力をご紹介したあと、今まで訪れてきた魅力的なお宿をセレクトしたいと思います。

秘湯とは?


秘湯とは、交通の便がいいとは言えないような山奥や大自然の中にひっそりとたたずむ温泉のこと。

「日本秘湯を守る会」の設立を提唱した岩木一二三(ひふみ)氏によって考案された造語で、1975年ごろから使われるようになりました。

日本各地に存在する、隔絶した自然に囲まれた「秘湯の宿」は、ほぼすべてが源泉掛け流しのスタイルをとっており、山間部の原風景を象徴する場所として、多くの温泉ファンに親しまれています。

秘湯の魅力


「日々の疲れを癒やしたい」「非日常に浸りたい」そんな思いを持っている方には、ぜひ秘湯の宿に泊まっていただきたいです。

日頃の悩みや背負っている荷物はすべて置いて、大自然の中で温泉に癒やされれば、明日への活力を得られるはず!

ここでは、秘湯の魅力をご紹介します。

四季折々美しい、宿までの道のり


まず秘湯の宿に向かう道中について。前述したように、秘湯は電波の入らない秘境にあることもしばしば。「本当にお宿があるのか?」そんな気にさえさせてしまうロケーションにポツンとたたずんでいるのが特徴です。

宿までへの道のりでは、四季折々の表情をはっきりと伝えてくれる大自然に目を奪われます。花々が咲き始める春、生命力溢れる緑に輝く夏、錦絵のような秋や、一面が白銀の世界に変わる冬など、劇的に趣を変えていく四季との一期一会を楽しめます。

自然に身を委ねて、リフレッシュする滞在


都会に住むほど、自然への憧れが強くなるもの。

機械的で便利な日常に慣れてしまった都会人の私たちですが、あえてそんな当たり前の日常と距離を置いてみると、普段忘れかけていた大事な感覚を思い出すかもしれません。

森を照らす朝日や、懐かしい草の匂い、静寂の中で響き渡る鳥のさえずり、こんこんと湧く清流など。どこか五感を刺激されつつ、ゆったりとお湯で温まる時間はプライスレスです。

自分をリセットする内省の時間


めまぐるしく過ぎる日常。日々自分のキャパシティと向き合い、ギリギリのところで踏み止まりつつ、全力で仕事に臨んでいても、正直気が滅入ってしまうこともあるでしょう。

そんなとき、懐広く受け入れてくれる秘湯は、心の拠り所となってくれるのです。そして同時に、思考をリセットする貴重な機会にもなっています。

一切のストレスから解き放たれて、自分を客観的に見つめ直す時間。目の前のことから将来に至るまで、さまざまなインスピレーションを得て、それが仕事にも生かされるのです。

お財布にも優しく、静かに休みを満喫できる


最後に、現実的な滞在費用について。昔ながらのお宿が多い「秘湯の宿」では、1泊2食付きで1万円台のお宿が多く、比較的リーズナブルに過ごすことができます。

休前日と平日で金額が変わることの多い温泉宿の中でも、価格差が少なく、なかにはほぼ均一の料金を保っているお宿も。

どこへ行っても混雑するGWや夏休み。そんな繁忙期でも安く泊まることができ、ゆったりと過ごせるのは「秘湯の宿」ならではと言えるでしょう。

アウトドアライターおすすめの秘湯宿4選

それでは、筆者が今まで足を運んだ中で、特に良かった「秘湯の宿」を4つご紹介します。

【秋田県】鶴の湯温泉


秋田県・乳頭温泉郷の中でも一番古い歴史をもつ「鶴の湯温泉」。秋田藩の藩主が湯治に訪れたことでも有名で、本陣は重要文化財に登録されている建物です。

大自然に囲まれ隔絶した場所で、こんこんと湧くミルキーブルーの源泉流しのお湯。広々とした露天風呂の一角では、珍しい足元湧出も楽しめます。

建物の随所に設けられた貸切風呂や、山の幸が詰まったお料理も人気の理由。一度訪れると、思わず連泊したくなる魅力を備えています。

■詳細情報
・名称:鶴の湯温泉
・住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50
・地図:
・アクセス:秋田空港から車で約1時間30分
・電話番号:0187-46-2139
・料金:1泊2食付き9,830円〜/人
・オススメの時期:通年
・公式サイトURL:http://www.tsurunoyu.com/

【北海道】十勝岳温泉 湯元 凌雲閣


北海道最高所にある温泉・十勝岳温泉を代表するお宿が「湯元 凌雲閣」です。その名の通り、宿名は”雲を凌ぐ”という意味で隔絶したロケーションが魅力。

十勝岳連峰と相対するようにたたずむ露天風呂は、他では絶対味わえない最高のパノラマ。鉄分豊富なとろとろのお湯に浸かりながら、非日常の時間を過ごせます。

特に冬季、アクセスが困難ですが、それゆえに味わえる感動もひとしお。帰りには野湯である「吹上露天風呂(無料)」へ立ち寄るのもいいでしょう。

■詳細情報
・名称:十勝岳温泉 湯元 凌雲閣
・住所:北海道空知郡上富良野町 十勝岳温泉
・地図:
・アクセス:上富良野市街から車で約25分
・電話番号:0167-39-4111
・料金:1泊2食付き12,000円前後/人
・オススメの時期:冬
・公式サイトURL:https://www.ryounkaku.jp/

【岐阜県】新穂高温泉 深山荘


北アルプスに抱かれた秘湯・新穂高温泉で一番大きな露天風呂を有しているお宿が「深山荘(しんざんそう)」です。王道の秘湯の風情を醸しつつ、比較的アクセスしやすいのが魅力です。

お湯はすべて源泉掛け流し。開放的な混浴の露天風呂では、宝石のように美しい高野川を眺めながら、遥か天上のいただきに思いを馳せます。

北アルプスがもたらす温泉という山の恵みを享受すると、「自然があってこそ私たちの生活が潤っているんだ」と気づかされるはず。

■詳細情報
・名称:深山荘
・住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂720-1
・地図:
・アクセス:高山市街から車で約1時間10分
・電話番号:0578-89-2031
・料金:1泊2食付き13,500円〜/人
・オススメの時期:夏
・公式サイトURL:http://shinzansou.com/

【大分県】法華院温泉山荘


九州最高所の温泉宿が「法華院温泉山荘」です。九州の屋根・くじゅう連山の中腹、標高約1200mに位置しており、2時間歩かなければ辿り着けない秘湯です。

シンプルな浴槽ですが、泉質はピカイチ。すべすべとした単純温泉は、体を芯から温めてくれますよ。他のお客さんとの一期一会も楽しいです。

山小屋風のお宿ですが、個室が充実しており、快適に滞在できるのがうれしいポイント。特に休日は予約でいっぱいのことも多いので、あらかじめ電話を入れておきましょう。

■詳細情報
・名称:法華院温泉山荘
・住所:大分県竹田市久住町大字有氏1778
・地図:
・アクセス:長者原・九重登山口から徒歩約2時間、牧の戸峠登山口から徒歩約3時間
・電話番号:090-4980-2810
・料金:1泊2食付き10,000円〜/人
・オススメの時期:通年
・公式サイトURL:http://hokkein.co.jp/

大自然に囲まれた秘湯へ泊まってみよう!


今回は、筆者の愛してやまない「秘湯の宿」の魅力をご紹介しました。

アクティブな旅もいいですが、ひたすら温泉につかる穏やかな旅もまたいいもの。「秘湯の宿」の数だけ、違ったお湯との出会いがあり、日々の活力を補充できると思っています。

日々の疲れを癒やすために、「秘湯の宿」の旅へと出かけてみてはいかがでしょうか。

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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