ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

「エクボクローク」って?


工藤さん率いるecboが提供するサービス「エクボクローク」は、スマホ予約でかんたんに荷物を預けることができるサービスです。

みなさん、せっかくの旅行なのにコインロッカーが埋まっていたり、サイズが合わなかったり、荷物を預けられず「コインロッカー難民」になったことはありませんか? 工藤さんらの試算によると、日本中の「コインロッカー難民」は、1日あたり17.6万人。コインロッカーに荷物を預けるまでにかかる時間は平均24.9分にのぼります。

とはいえ、駅ナカにこれ以上コインロッカーを作ることはできません。そこでひらめいたのが、街中のお店や施設に荷物を預かってもらうというアイデア。小さい荷物(バッグサイズ)なら400円、大きな荷物(スーツケースサイズ)でも700円で預けることができます。

現在全国47都道府県・1,000店舗以上に導入されており、旅行やお出かけ、出張、イベント等の際にぜひ利用したいサービスです。

*バッグサイズ:最大辺が45cm未満の大きさのお荷物(例:リュック、ハンドバッグ、お手荷物など)、スーツケースサイズ:最大辺が45cm以上の大きさのお荷物(例:スーツケース、ベビーカー、ギターなど)


ユーザーのメリットは、コインロッカーを探す手間が省けることと、事前に予約することで確実に荷物を預けられること。保険会社と提携しているため、万が一の紛失・破損・盗難もばっちり補償されるというから安心です。

オーナー(荷物を預かるお店)のメリットは、登録・導入・維持コストがゼロなのに、お店の空いたスペースが副収入を生むこと。ユーザーがお店に足を運んでくれることで、新規顧客の獲得にもつながります。

ユーザーの手順は、ユーザー登録→事前予約・クレジットカード決済→実際にお店へ行って、店員さんに荷物を預けるだけと、あっという間に完了!荷物を預けたらお店のスタッフ(オーナー)が荷物の写真を撮影します。ユーザーへ共有され、これが荷物の預かり証となります。荷物を引き取るときは、預かってもらった荷物の写真を見せるだけです。言葉が通じない外国人観光客でもスムーズにできて、番号札などの備品の必要もない、シンプルながら画期的なシステムです!


2017年1月に渋谷・浅草を中心に都内でサービスをスタートさせ、今や47都道府県、1000店舗以上に広がっています。パートナーも、JR東日本や西日本、マルイ、郵便局、ビッグエコーなど、誰もが知る企業・機関ばかり。

Q.「エクボクローク」を着想した背景や原体験は?


「どんな事業を展開するにせよ、一番大事なのは“のめりこみ度”です」と工藤さん。起業を成功させるには、うまくいくまでひたすらトライするしかありません。成功するまでやり続けるための燃料になるのが、“原体験”です。

工藤さんの原体験は、小学3年生で初めて経験した商売。日本で1枚10円で売られていた遊戯王カードが、中国で100円で売られていることに気づいた工藤さんは、お父さんから1万円を借り、日本で買ったカードを中国のカードショップで売ることに。1万円の元本は、なんと14万円になったそう!

この経験から、「ちょっと動いただけで稼げるんだ!」と気付いたそうです。また、「僕が動いたことでカードを流通させることができた。必要なところに必要なものを供給すると、こんなに喜ばれるんだ!」と、商売の喜びを知るきっかけになりました。

Q. シェアリングエコノミーに着目したのはなぜ?


工藤さんは、シェアリングエコノミーにこだわっていたというより、「いかにサステイナブルにサービスをつくれるか」に興味があったそう。ただ生産して消費するというサイクルではなく、持続可能なサイクルを循環できるプラットフォームを考えていたところに、現在の事業が思い浮かんだと話してくださいました。

サステイナブルなサービスを考えていたときに出会ったのが、Uber。「Uberのやろうとしていることこそサステイナブルだ」と感じ、インターンとしてジョインしました。

Uberでの経験を経てなお、シェアリングサービスを始めようとは思っていなかったそう。でも、リソース(お金とヒト)が足りなかったため、必然的に、持ち出しの少ないシェアリングサービスに着地したとのことです。

Q. アイデアを形にするまでにやったことは?


何より大切なのは、根気強くやること。工藤さんは300個ほどアイデアのストックがあり、何度もチャレンジと挫折を繰り返してきたそう。それでも諦めなかったから今があるといいます。

また工藤さんは、「いいアイデアの定義は、効率よく世の中の課題を解決できる(=一つのアイデアで複数の課題を解決できる)こと」だと断言。たとえば「エクボクローク」は、オーナーの作業は「預かって、写真を撮って、荷物を渡す」こと、「エクボピックアップ」も「預かって、バーコードをスキャンして、荷物を渡す」こと。登場人物が違うだけで、コインロッカー不足問題と再配達問題という、2つの課題を解決できるのです。

「お金をかけたら戻れなくなるので、最初はできるだけリソースを使わないように」とおっしゃっていました。

ワーク「あらゆるものがシェアされると、どんな世の中になる?」


最後にワークとして、「お金、時間、場所、ヒト、食事……あらゆるものがシェアされると、どんな世の中になる?」というテーマで話し合いました。主な意見をシェアします!

・個人の信頼を計るための「信頼ポイント」のようなものが導入されるかも?
・シェアが広がりすぎると、税収が減って公共サービスが手薄になるかも?
・家族シェア、恋人シェアなどのサービスも生まれるかも?
・アイデア次第で何でもリソース化できるようになるかも?

以上、石山さんと工藤さんにご登壇いただき、シェアについて考えた回でした!

ゲストのご紹介


内閣官房シェアリングエコノミー伝道師/一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長/一般社団法人Public Meets Innovation代表理事

1989年生まれ。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。 シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。

総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほか NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC、拡張家族Cift メンバーなど、幅広く活動。著書「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。


ecbo株式会社 代表取締役社長。

1990年生まれ、マカオ出身、日本大学卒。Uber Japan株式会社を経て、2015年6月ecbo株式会社を設立。2017年1月より荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営。2019年9月宅配物受け取りサービス「ecbo pickup(エクボピックアップ)」を発表。

2018年 Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2018 – Business Entrepreneurs部門に選出、2019年 Forbes 30 Under 30 Asia 2019 – Consumer Technology部門に選出。

All photos by Mayu Saito

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西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

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