南アジア:複雑な宗教・民主問題
インド
インドの部族・言語の数は3000にものぼります。こんなに多様な言語があると、コミュニケーションもままなりません。
そんなインドをイギリスが植民地化し、学校を作って英語教育を始めた結果、インド全土が英語で取引ができるようなりました。
またインドには地下資源もありますが、その国土の広さゆえ、取引ができていませんでした。そこでイギリスは、インドに長い鉄道網を建設。スムーズな取引が実現しました。
植民地化はたくさんの人を傷つけるもの。一方でインドの英語教育や鉄道建設のように、植民地に恩恵をもたらすものでもあるのです。
インドを統治しやすくするためにイギリスがとった手段は、「紛争を起こさせ、その仲介に入って信頼を得る」というもの。宗教ごとに土地を分け、東側と西側にイスラム教徒を、真ん中にヒンドゥー教徒を住まわせることにしました。
当時、インド国民はイスラム教徒が10%、ヒンドゥー教徒が86%を占めていました。これらを一つの国にすると、多数決でヒンドゥー教徒が圧勝することになります。だからあえてバラバラで住まわせたのです。
こうしてイスラム教徒が住む土地を「パキスタン」に、ヒンドゥー教徒が住む土地を「インド」としました。といっても、ラダックなどがあるカシミール地方のように、イスラム教徒が77%が占めるにもかかわらず「インド」になってしまった土地もありました。
スリランカ
近年、宗教・民族間の対立が絶えないスリランカにも目を向けてみましょう。
スリランカには、多数派の仏教徒(シンハラ人)と少数派のヒンドゥー教徒(タミル人)がともに暮らしています。タミル人は、イギリスの植民地だった時代に、紅茶を栽培するために南インドから連れてこられた人びとです。
スリランカがイギリスから独立した後も、タミル人はスリランカに残ります。その存在を疎ましく思ったシンハラ人と対立して起こったが、スリランカ内戦です。この紛争は、1983年から2009年まで続きました。
一方、2019年4月に起こったスリランカ連続爆破テロ事件は、イスラム過激派がキリスト教徒を狙って起こしたものでした。ひとくちに「スリランカ国内の紛争」といっても、以前から起こっていたものとは、対立する民族が異なっているのです。
以上、佐藤先生による講義の一部をレポートしました。今回の講義をきっかけに、世界史と世界情勢に興味を持った方も多いのではないでしょうか?佐藤先生、ありがとうございました!
ゲストのご紹介
代ゼミ世界史講師。
1967年 栃木県生まれ。東京都在住。 代々木ゼミナールの世界史講師としてサテライン・TVネットで活躍中。 予備校講師という硬いイメージに邪魔されず、生徒が授業を楽しめる工夫を。との思いから年に1回、必ず世界一周へ。 自分の目で見た世界遺産を、歴史的ストーリーとともに生徒へ伝えること25年。 その生徒との対話を大切にする親身な姿勢が受け、多くの生徒の支持を得る。 また大学生となった教え子を集め、世界史スタディツアーを催行。
自分が学んだモノを実際に目で見て感動し、世界への見聞を広げて欲しいという思いから始めたツアーも、気づけば50回目となった。 現在、約88ヵ国500都市へ渡航。その広い世界情勢への知見を活かし、全国でトークイベントを行う。