ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

みなさん、こんにちは!TABIPPO編集部の西嶋です。

今回は、11月16日にTABIPPOオフィス本社で行われたPOOLOの講義 「グローバル人材になるために僕らが考えること」の様子をレポートします。登壇者は、株式会社スクールウィズ代表取締役の太田英基さんです。

そもそもPOOLOって?

POOLOのことを初めて知る方も多いかと思うので、簡単に説明すると、TABIPPOが今年3月に21世紀型のグローバル人材を育成するべく200名のメンバーを募集し、新しい学びの場としてオンラインとオフラインの両軸でコミュニティを作りながら、1年間を通して21世紀型のグローバル人材に育っていくというプログラムです。

詳細については、POOLO公式サイトをご覧ください。

さて、今日はそんなPOOLOのイベントレポートをお届けしたいと思います。来年POOLOに参加してみたいなと考えている方はぜひ読んでいただけたらうれしいいです。

 

ビジョンは「世界を舞台にする人が当たり前になる社会へ」

まず、太田さんのご経歴の紹介から。

太田さんは、株式会社スクールウィズの代表取締役でいらっしゃいます。大学2年生のときに起業され、広告事業「タダコピ」を展開。3か月間のフィリピン留学と、2年間の世界一周旅行も経験されています。

スクールウィズは、日本最大級の留学・語学留学の情報サイト。「tripadovisorの留学版です」と説明してくださいました。そのビジョンは「世界を舞台にする人が当たり前になる社会へ」、ミッションは「“世界のドコで何しよう”をつくる」です。

太田さんは会場に、3つの街の写真を見せてくださいました。「この写真を見て、どこの街かわかる人はいますか?」

大都会、奇抜な形のビル、ショッピングモール……なかなか正解は出ません。答えは、アルゼンチン、イスラエル、フィリピンでした。特にイスラエルのビルには、会場のみなさんもびっくり。

太田さんがこれらの写真から伝えたかったのは、日本にいて知りうる情報と、実際に現地に行って知る情報にはギャップがあるということ。イスラエルに行ったことがない人の多くは、「イスラエル=紛争、怖い」というイメージを持っているのではないでしょうか?

 

世界一周を決意したワケ

留学と世界一周を経験し、留学ビジネスを展開されている太田さん。そのご経歴には、グローバルなイメージを持ちます。でも実は学生のときにはグローバル志向はまったくなく、英語は「絶望的にできなかった」そう。

そんな太田さんが、なぜ世界を舞台にしようと思われたのでしょうか。そのきっかけは、大学4年生のときに、マッキンゼー東京支社長の横山禎徳さんと出会ったこと。横山さんは、「世界のどこで誰がどんなものを必要としているか想像して、それを届けるのがグローバルなビジネスだ」と教えてくださったそうです。

当時22歳だった太田さんは、「自分は海外にまったく目を向けてこなかった。外国人の友だちもいないし、英語すらできない」と気づきました。といっても、仕事が忙しく、すぐに何かができたわけではありません。

それから2年ほど経った24歳のとき、「30歳で世界で活躍できる人間になりたい(FUTURE)」「そのためには、語学力を身につけ、世界中に友人をつくり、世界を知らなければならない(MUST)」と考えました。

海外MBAなども検討したそうですが、現メルカリ創業会長の山田進太郎さんの一言が太田さんの人生を変えることになります。その一言とは、「太田くん、やっぱり世界一周じゃない?今後の人生、どこかにとどまることは何度でもできるけど、ぐるっと世界を見てくる機会はなかなかつくれないよ」というもの。

太田さんは、いつか行きたいと思っていた世界旅行を手段として、MUSTを手に入れることを決意しました。

 

サムライバックパッカープロジェクトから見えてきたもの

自分の旅を通して、世の中にどう貢献できるだろう」と考えた太田さんは、サムライバックパッカープロジェクトを立ち上げました。

その背景にあったのは、優秀な友人たちがまったく世界に目を向けていなかったこと。「日本人は、グローバル志向がないわけではない。まわりにロールモデルがいないのだ」――そう考えて、海外で活躍している人を見つけ出し、日本人に情報を届けることにしたのです。

そして太田さんは、「どこに行く」よりも「誰に会う」を重視した旅をしました。20人ほどにメッセージを送り、何人から返事をもらえたかによってその街での滞在日数を決めていたそう。出会った日本人は、総勢300人ほど。バックパックの中には、常にジャケットやワイシャツ、革靴がスタンバイしていました。

そこで確信したのは、海外で活躍しているからといって、その人が特別な能力を持っているというわけではないということ。テクノロジーが発展し、仕事の仕方はどこに行っても同じなのだから、成否を握るのはコミュニケーション能力(語学力含む)を持っているかどうかだったのです。

太田さんは、「英語ができれば世界は10倍楽しくなるし、旅の仕方もキャリアも変わる。自分が経験したフィリピン留学を通じて、日本人に英語というツールを授けたい。長らくイノベーションの起こっていない留学にイノベーションを起こしたい」と考え、スクールウィズを立ち上げることを決めました。

 

日本地図を世界地図に塗り変える

太田さんが海外で受けた最大のカルチャーショックは、ヨーロッパやアジアの若者たちのグローバルな視野を目の当たりにしたことでした。

転職するにしても、「どの業界(会社)にする?」という話ではなく、「次はロンドンで働いてみたい」「いや、シンガポールか香港でしょ!」なんて話が繰り広げられていたのです。日本はなんて閉ざされているんだろう――太田さんは衝撃を受けました。

自分の意思次第でどこにでも行ける時代。日本国内であれば数時間、24時間あれば世界のどこにでも行けますし、日本のパスポートを持っていればたいていの国に入国できます。検索すれば家も仕事も見つかります。

こうしてフィジカルの範囲はグローバル化が進んでいるのに、私たちのメンタルはドメスティックなままで、「脳内鎖国」をしているのです。

頭の中にある日本地図を世界地図に塗り替えよう。自分が学びたいことをどこで学べばいいか想像して、それを実行できる人生を過ごしてほしい――それが太田さんからのメッセージです。

 

グローバル化が進むと、僕らの生活はどう変わる?

モノのグローバル化が進む一方、人のグローバル化はまだまだ発展途上です。

では、人のグローバル化が進むと、私たちの生活はどう変わるのでしょうか?太田さんは、(1)人類グローバルノマド化、(2)シンギュラリティの到来の2つの軸で話してくださいました。

人類グローバルノマド化が進むと、自分のできること・したいことにあわせて居場所が変わります。国家に対する帰属意識が弱まり、就活でどの会社に入社するかを選ぶように、住む国をも自分の軸に沿って選ぶ時代になります。

シンギュラリティが到来すると、人種を越えた競争が激化し、世界中の人と一緒に作る・考えるのが当たり前に。人間同士だけでなく、人類とAIの競争もはじまり、人のやるべき仕事は次第になくなっていきます。

人間がAIに勝てるのは、クリエイティビティとリーダーシップだといわれています。太田さんは、「クリエイティビティは才能ではない」と強調します。

たとえば世界中の人を驚かせたUberやAirbnb。一見斬新なアイデアのようですが、既に世の中にあるものを組み合わせてできています。こうした発想力は、トレーニングで磨くことができるのです。

「みなさん、自分の興味範囲の外にある情報もインプットしていますか?アイデアが出ない人は、インプットが足りないのです」と太田さんはいいます。

そして、いくらインプットをしても、アウトプットがなければその知識はあっという間に忘れてしまうもの。だから太田さんは、「POOLOでインプットした情報をアウトプットに変えてほしい。できれば仲間と一緒にできることや社会を巻き込むアウトプットに挑戦して」といいます。

 

食い逃げ泥棒になるな

みなさんの表情を変えたのは、太田さんの「食い逃げ泥棒になるな」というメッセージ。

「自分さえよければいい」「自分には関係ない」と思うのではなく、自分のまわりの人や自分の子ども、孫世代のために、自分がどう生きていくべきかを考えよということです。

私たちが享受している豊かさは、私たち自身がつくってきたものではありません。私たちの先祖が一生懸命つくってきた平和の上にあぐらをかいて、豊かな生活をさせてもらっているのです。

「『日本は終わってる』なんて言わないで。自分のことだけでなく、世の中をどう変えていくかを考えて人生の時間を使ってほしい。次の世代、その次の世代のためにいい時代をつくることを一緒に考えていきましょう」――これが、太田さんの願いです。

 

「世界で見つけたおもしろいビジネスは?」

最後に、質問タイム!太田さんが海外で見つけたおもしろいビジネスをシェアしていただきました。

まず、海外のスーパーなどで見かける“Buy1, GET1 FREE!”。そのような売り方をするのは、教育水準が必ずしも一定でなく、30%オフといわれても瞬時に計算できない人も多いから。日本の教育水準の高さ=豊かさを実感するエピソードではないでしょうか。

また、BOPビジネス(途上国の貧困層をターゲットとしたビジネス)についてもシェアしていただきました。BOP層の可処分所得は、一人ひとりで見ればごくわずかですが、40億人分となると相当のもの。貧困層に少しずつ何かを買ってもらえれば、大きな売り上げとなるのです。

 

そこに目をつけた商品が、途上国でよく売られている、シャンプーや歯磨き粉のパウチ。日本のようにボトルやチューブではなく、1回使い切りで売られているのです。大きなボトルは変えないけれど、デート前にシャンプーしたい――そんなニーズに応えているんですね。

もっと知りたい方は、太田さんが世界一周中に書かれていた「AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議」の連載コラム「若手起業家、世界一周へ)」もぜひ。

 

ゲストのご紹介

1985年生まれ。東北の温泉街出身。
大学2年時にビジネスプランコンテストで最優秀賞を獲得し、株式会社オーシャナイズを仲間と起業。広告事業「タダコピ」を手掛ける。丸5年働いた後退職。フィリピンでの英語学習を経て、世界一周へ。「若者のグローバル志向の底上げ」を使命としたサムライバックパッカープロジェクトを立ち上げる。

約2年間、50ヶ国を旅しながら、現地のビジネスマンを中心とした様々な人たち1,000人以上と交流。2013年、スクールウィズを立ち上げ、代表取締役に就任。

【著書】
『フィリピン超格安英語留学』(東洋経済新報社)
『日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く。』(いろは出版)
『僕らはまだ、世界を1ミリも知らない』(幻冬舎文庫/いろは出版)
『WORK MODELS』(いろは出版)

Text:西嶋結

ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

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