ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

 

気軽に行ける珍国「リヒテンシュタイン」

前田:渡航国は高井さんの好みではなく、お客さまのご要望で選ばれているんですよね。いざ現地に行ってみて「この国、好きになれない!」と思うことはないですか?

高井:国自体があまり好きになれないこともありますね。でもそんな国でも、生活している人たちのことは好きなもの。そこで折り合いをつけています。トラブルが多くてテンションが下がっても、結局助けてくれるのも現地の人なので、「まあいいや」と思えるんです。

前田:人との出会いが旅の醍醐味のひとつですよね。TABIPPO.NETの読者は若者が多いんですが、お金はないけど時間と度胸はある若者におすすめの珍国はありますか。

高井:リヒテンシュタインはいかがでしょう。スイスから日帰りで、ヨーロッパに行ったついでに訪問できますよ。

Photo by Hideko Takai

前田:リヒテンシュタイン! 意外と行かないところですよね。

高井:イギリスのまわりにあるチャンネル諸島、マン島、ガンジー島、ジャージー島、フェロー諸島あたりもすごくよかったです。イギリスからすぐに行けるので、こちらもイギリス旅のついでに行ってもいいかもしれませんね。

前田:イギリスのまわりにはたくさん島があるんですね。初めて知りました!

高井:ケルト神話が根付くマン島は、1日半あれば1周できます。世界最大の水車があったり、1000年以上立っている青銅器のお墓や世界一といわれる公道のバイクレースがあったりと見どころも多く、いろんな投げかけをしてくれる、飽きさせない島です。いたずら好きな妖精も棲んでいます。

 

アフリカでは自然と民族を楽しんで

前田:ヨーロッパやアジアに一通り訪問して、そろそろ珍国にチャレンジしてみたい方って多いと思うんです。そんな方におすすめの珍国はどこですか?

高井:やっぱりアフリカですね。いろいろ行っていてもアフリカはまだ、という方も多いのではないでしょうか。

前田:僕も52か国訪問してきましたが、アフリカはこれからなんですよね。2019年にアフリカ縦断しようかなと考えているんですが、どんなふうに旅したら楽しいですか?

高井:おすすめは、自然を楽しむことですね。ボツワナでは沼サファリがありますし、タンザニアやケニアではライオンやゾウなどの野生動物を見に行くのはどうでしょう。砂漠だけでないアフリカを楽しんでほしいと思います。

Photo by Hideko Takai

民族を楽しむのもいいですね。ナミビアには、ヒンバ族という、身体に泥を塗りこんだ民族がいるんですよ。

前田:楽しそう。でもアフリカって、お金がかかるイメージがあるんですよね。

高井:サファリに行くとお金がかかりますよね。節約するなら、ケニアのナイロビの国立公園がいいですよ。首都ナイロビから30分程度で行けて、バッファローの群れや絶滅危機にあるシロサイ、ライオンを見ることができるスポットです。空港の幹線道路でキリンを見かけたこともありましたね(笑)。

 

日本人が知らない「フィンランド領オーランド諸島」

前田:多くの珍国に訪問されてきた高井さんですが、本当は誰にも教えたくないくらい大好きな珍国はありますか? TABIPPO.NET読者に特別に教えてほしいです!

高井:ヘルシンキから飛行機でアクセスできる、フィンランド領オーランド諸島です。
戦争が終わった後にロシアから解放され、帰属問題でフィンランドかスウェーデンになるかで揉めた地域なんですが、それを平和的に解決したのが新渡戸稲造です。彼が提案したのは、「フィンランドの統治を認める一方、スウェーデンの文化や言語のほか自治の保証を義務付ける」というもの。外国風の「白黒はっきり」ではない、日本人特有のグレーの考え方が生きたのではないでしょうか。

Photo by Hideko Takai

前田:へえ、新渡戸稲造が関係しているんですね! 驚きです。

高井:こうした歴史的背景があるので、日本人ならぜひ行ってみてほしいですね。食べものもおいしいし人もいいですよ。日本の百貨店で催事販売されることもあるチョコレートショップ「メルセデス ショコラトリー」もおすすめです!

 

旅を仕事にしたいなら、最低限やってほしいこと

前田:TABIPPOのミッションは「旅で世界を、もっと素敵に」ですが、メジャーな国は今さらTABIPPOがおすすめしなくてもいいんじゃないかな、と思うことがあります。でも、メジャーな国のほうが読者にとってはわかりやすく魅力的だったりもしますよね。高井さんが珍国を選ぶ理由はなんですか?

高井:ヨーロッパやアメリカについては、憧れはあるものの、自分の担当じゃないなと思っています。SNSにも情報があふれていますし。そのぶん今は、日本人があまり行かない珍国の知識をつけたいですね。私のお客様は、160カ国以上を訪問し、世界一周どころか2周も3周もしている方たちです。そんな方たちのために新しいスポットを見つけ、旅を楽しんでいただくことが課題です。

Photo by Hideko Takai

前田:なるほど。最後に、TABIPPO.NETの読者には、世界を飛び回る仕事に就きたい人も多いと思います。そんな若者に対して、先輩からのアドバイスをお願いします。

高井:語学はぜひやっておいてほしいですね。ペラペラ話すということではなく、言いたいことを伝えられて、相手の言っていることもわかるというのが重要です。これは決して単なる「勉強」で身につくものではありません。

前田:旅するうえで、コミュニケーションは重要ですよね。

高井:加えて私が大事にしているのは、訪問前にその国の歴史や大統領、人口、産業などをできる限り調べていくこと。Wikipediaでかまいません。そうした情報を頭に入れていると違う世界が見えてきますし、何も知らずに行くことは失礼だと思っています。これは私の考えであって、すべての方に押し付けるつもりはありませんが……。

前田:事前に情報収集しておくと、旅がぐっと豊かになりますよね。高井さん、ありがとうございました。

 

text:西嶋結
photo:前田塁

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西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

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