ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

夏の香りがする言葉「ライダーハウス」。それは、僕たち二輪乗りにとって、かけがえのない思い出を蘇らせてくれる魔法のワードです。

夏休みになると、全国各地からたくさんの学生・社会人が北海道をバイクや自転車で旅します。その泥臭い思い出が、旅の一期一会が、そこで感じた人の温かさが忘れられないのです。

旅とは、出会いの場だと思います。いろいろな価値観に触れ、そのたびに自分がアップデートされていく感覚は、TABIPPOの読者の方であれば経験したことがあるものではないでしょうか。

今回は私にとって、旅人としてのアイデンディティが詰まっている場所「ライダーハウス」について紹介すべく、筆を執ってみました。

北海道ツーリング文化を背景とした「ライダーハウス」


二輪乗り向けの宿「ライダーハウス」。一言でまとめると、二輪界のゲストハウスといえば、わかりやすいでしょうか。

特徴としては

・北海道に集中、本州はちらほら
・宿泊代が無料~1000円ほどと格安
・寝袋を持参して雑魚寝をする宿泊形態が多い
・営利目的というより趣味でやっているところが多い

という点が挙げられます。この時点で、既に独特ですね!

そんな「ライダーハウス」の成立は、北海道のツーリング文化と切っても切り離せないものです。1980年以降、北海道をオートバイでツーリングするライダーの増加とともに、こうした簡易宿泊施設が急激に増えていきました。

ライダーハウスに泊まることで、旅費を安く抑えられるのが最大のメリット。バイクのガソリン代や往復フェリー代を考えると非常にありがたく、多くの二輪乗りに重宝されてきました。


その一方で、「ライダーハウス」は、プライバシーが少な目。そのため、他の宿泊者のいびきや会話に悩まされたり、寝るスペースの確保に困ったり、クーラーがなく灼熱のように暑かったり、正直悩みは尽きません(笑)。

しかしながら、北海道を旅する人たちの交流・情報共有の場となっており、人の温かさを感じる機会も多くあります。宿泊代というメリットだけでなく、その一期一会を求めて、思わず足を運んでしまう側面もあります。

「ライダーハウス」は、旅人を生み出す立役者


北海道にあるライダーハウスのうち通年営業しているところはまれで、多くはハイシーズン6月~9月のみの期間限定。そのため、私たち二輪乗りとしては、「ライダーハウス」という言葉を聞くと、すぐさま夏を連想します。

・どこまでも続く地平線を駆ける冒険
・町と町をつなぎつつ、山に抱かれ、海を見渡し、みるみる変化していく風景
・旅仲間とギリギリの旅をした思い出
・こんな出会いってある!?というほど濃い一期一会

これらの忘れられない思い出が、すぐさま脳内を駆け巡るのです。


私の経験として、一度「ライダーハウス」を訪れた人の北海道リピート率はとても高いです。夏休みのたびに、フェリーや飛行機、時には自走で北の大地を目指し、連休すべてを旅に充てる人も数多くいます。

この点で「ライダーハウス」は、旅人を生み出し、再生産する役割を担っていると言えるでしょう。一度くらい北海道を訪れてみようと思った人が、熱烈なホッカイダ―(北海道を愛する旅人たち)へと変わるきっかけを作る立役者となっているのです。

かくいう私も、「ライダーハウス」に人生を変えてもらった


一方で日本各地には、北海道での旅の思い出が忘れられず、自らライダーハウスを運営する方がいます。たまたま私も旅人になったばかりの頃、そんな宿に泊まる貴重な経験を得ました。香川県小豆島にある「ライハのツボ」です。

今でもこの宿を初めて訪れたときのことを鮮明に覚えており、私の旅の原点となっています。

・サービス精神に溢れたオーナーや、個性豊かな宿泊者との出会い
・スーパーで購入した食材をシェアし、一緒に盛り上がったBBQ
・オーナーと一緒に、自転車で小豆島最高点に上った時の達成感


そうして大好きな場所となった「ライハのツボ」。初めて宿泊して以降、積極的に自転車ツーリングを楽しむようになり、その原点である小豆島が第二の故郷となりました。

その一方で、「ライハのツボ」が、北海道のライダーハウスでの経験をもとに始められたということを聞き、「本場のライダーハウスも体験してみたい!」という思いから、2016年の夏に北海道ツーリングへ行くことを決めます。

いろんなことがありましたが、結果的にそこで得た旅の経験やスタイルが、旅人としてのアイデンティティを形作り、トラベルライター活動へ帰結するに至りました。かくいう私もライダーハウスに人生を変えてもらった一人なのです。

いつまでも忘れられない!印象深い「ライダーハウス」たち


そこで次に、今まで宿泊した中から、忘れられないライダーハウスを全国からピックアップします!個人的なエピソードも含みますが、ライダーハウスらしい魅力?だと思って読んでいただければうれしいです。

なお、この中には一部、現在閉鎖している宿も含まれています。近年、北海道では行政指導で簡易宿泊施設の許可が下りず、営業を止めるライダーハウスが後を絶ちません。

難しい問題ですが、少しでも「大切な北海道のツーリング文化が守られてほしい」という思いを込めて、ご紹介します。

公営の名物ライハ「モーラップ樽前荘(支笏湖)」


まず一つ目は、北海道・支笏湖畔に位置する「モーラップ樽前荘」。ライダーハウスの中でも珍しい公営施設で、二輪以外のお客さんでも宿泊することが可能です。

施設は立派な山荘で、中も綺麗に清掃されています。この綺麗さは、ライダーハウスでは珍しい部類です。


エピソードとしては、オーナーから支笏湖の天然ヒメマスを仕入れた、バイクのおっちゃんと仲良くなり、焼き魚にして一緒に焼いて食べたこと。

また東大バイオリニスト自転車乗りと、毎年北海道へ自転車旅するために、北海道の大学の嘱託を受けている自称・放浪者の客員教授に出会いました。(今振り返ると、出会いが濃すぎです……笑)

■詳細情報
・名称:モーラップ樽前荘
・住所:北海道千歳市モラップ番外地
・地図:
・アクセス:新千歳空港から車で約45分
・営業期間:4月16日~11月15日
・電話番号:0123-25-2902
・料金:大人一泊素泊まり1500円(2泊目から1000円)※シャワーは別途有料
・公式サイトURL:https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kankojoho/kankoannai/tarumaeso.html
ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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