最近、よく耳にする「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、貧困や気候変動など、世界が抱えるあらゆる問題を解決し、持続可能な社会をつくるためのビジョンのことをいいます。

そんなゴールが世界各国で掲げられている今、私たちにできることは何なのか。「SDGs」について、TABIPPOは考えます。

GAKU-MCが語る、幸せな社会をつくるための自分の役割

GAKU-MC
東京都出身。ラッパー、ミュージシャン。1990年、学生時代の友人とともに「EASTEDN」を結成。94年に「EASTEND X YURI」名義として『DA.YO.NE』でヒップホップ初のミリオンセラーを記録し、翌95年に第46回NHK紅白歌合戦出演を果たす。99年、ソロ活動開始。2012年、音楽とフットボールという世界二大共通言語を融合し、人と人をつなげていくことを目的とした団体「MIFA」を立ち上げる。13年、自身の音楽活動と並行し、Mr.Childrenの桜井和寿とウカスカジーを結成。19年にソロデビュー20周年を迎え、全国8箇所をめぐるツアーを開催。Twitter:@gaku_mc HP:http://www.gaku-mc.net

GAKU-MCさんは、ミュージシャンとしての活動の傍ら、音楽とフットボールを融合させ、人と人を繋げていくことを目的とした団体「MIFA」を立ち上げ、活動されています。

家族で世界一周をするなどして、世界各地を自分の目で見てきたからこそ思う、自分自身の「役割」、そして、若い世代に伝えたいメッセージとは。

今回のインタビューでは、「SDGs」が掲げる17のゴールの中での「まちづくり」や「健康と福祉」の項目にまつわるエピソードを語っていただきました。

ーーミュージシャンのGAKU-MCさんが、サッカーに目覚めたのはいつ頃の話なのですか。

実は、音楽を始めるずっと前からです。小学生の頃からサッカーをやっていたんですが、「ここに僕の居場所はないな」と挫折を経験して、サッカーが大嫌いな時期がありました。でも、28歳くらいの時に、サッカー日本代表の試合をたまたま見ちゃって…。

それがブラジル代表を破った歴史的な試合(※いわゆる「マイアミの奇跡」)だったんですが、すごく感動して「あぁ。俺、サッカー大好きだな」って思ったんです。そこからまた、サッカーをやり直しました。

不思議なもので、サッカーをやっていると、もちろん健康になるし、新しい友達も増えていったんですよね。TABIPPOのしみなお(※TABIPPO代表・清水直哉)とか翔(※TABIPPO共同創業者・小泉翔)とかずいぶん年下の友人もできたし、コミュニティが広がりました。サッカーが世界を広げてくれているなと感じたんです。

それで、同じ思いを持った友人にMr.Childrenの桜井がいて、一緒に音楽とサッカーで地域貢献ができるような団体を作りたいねという話になって、立ち上げたのが「MIFA(Music Interact Football for All)」なんです。

ーー「MIFA」はどのような活動をしているのですか。

「MIFA」は、音楽とフットボールで世の中にハッピーなコミュニケーションを創ろう!という団体で、音楽部門ではウカスカジーが活動して、フットボール部門ではフットボールパークを運営しています。

いまは豊洲と仙台に二つのグラウンドがあるのですが、このフットボールパークは、土日の朝に地域住民の方へコートを無料開放しているんです。これは、フットボール施設としては結構珍しいことです。

なぜ無料で開放しているのかというと、豊洲は新設の高層マンションが立ち並ぶ新しい街なので、そこで繋がりを作ってほしいなと思ったからなんです。子供同士でコミュニケーションをとってもらったり、家族同士でコミュニケーションをとってもらったり、とにかく「MIFA」に来て笑顔になって帰ってもらえたらいいなと考えて取り組んでいます。

また、毎年かならず周年記念のお祭りを開催していて、盆踊りをやったり、出店を出したりして、地域の子どもたちを無料で招待しています。集まる場所があると子どもたちもたくさん来てくれて、友だちになっていくんですよね。

ーー素敵な取り組みですね。

ありがとうございます。音楽とサッカーは世界共通言語だと思っています。言葉が通じなくても、リズムがあったらそこでグルーブが生まれますし、サッカーに至ってはもう言わずもがなですよ。

自分もブラジルW杯を観戦する旅へ行った時に、試合がない日にビーチへ出かけて、朝から晩まで色んな国の人たちと一緒にサッカーをしたことがあるのですが、本当にあれは楽しい経験でした…。サッカーって人を笑顔にするし、その笑顔が活力になって、みんなが健康になって、街が活気づくんだなと思ったんですよね。

ーーそういう背景や旅の経験をお持ちだからこそ、「SDGs」の項目の中で特に「すべての人に健康と福祉を」、「住み続けられるまちづくりを」といったテーマに関心があるのでしょうか。

そうだと思います。これまでいろいろな国を旅してきましたが、僕がいいなと思う国は、みんながすごく生き生きしていて健康で、あたたかいコミュニティがたくさんある国なんですよね。それは先進国でも、プリミティブな国でも。

それを自分の家族にも知ってもらいたくて、2016年には家族で世界一周をしました。子どもが今は3人いますが、当時はまだ2人だったので、家族4人で2ヶ月間かけて10カ国ほど周りました。上の子が2年生、下の子はまだ2歳の時です。

インターネットで見たら、ブラジルの路地裏まで見ることができちゃう今の世の中ですが、最初に「本物」を見せた方が良いなと思ったんですよね。仕事の関係で最大2ヶ月間しか休めなかったのですが、便利な世の中だからこそ実際に足を動かして、世界一周に出ようと決意したんです。

今振り返っても、貴重な2ヶ月間でしたね。僕はこんな仕事をしているから、家には居られる方だと思うんですけど、あれだけ濃い時間を家族と過ごすのもなかなかないと思います。

ハプニングも色々ありましたよ。オムツが足りなくなってどうするんだ問題とかね(笑)。でも、旅先で出会った人たちが助けてくれて、どうにか乗り越えられたんですよね。

ーー最後に、TABIPPOの読者へメッセージをお願いします!

TABIPPOが掲げている「旅で世界を、もっと素敵に」というコンセプトって、めちゃくちゃ素晴らしいなと思っています。本当に旅に一歩出ちゃう、アクションが大事だと思っていて。

人は、人と関わることで色々なことに気付くじゃないですか。自分の足で出て行って、実際に自分の目で見ることで学べるし、誰かと出会うことで新しい考え方を知ることができる。

僕もたくさんの人に出会ってきたからこそ、今の考え方に繋がっているんだと思うし…、「何を始めるのにも遅すぎることはない!」とよく聞くのでね、実際に動いてみたらいいんじゃないかなと思います。

僕は長年、音楽活動を続けているけれど、デビューした頃に比べて、人をハッピーにしたいという思いがより増幅している実感があります。みんなを笑顔にする役目を担っていきたいなと、素直に思うんです。

今、自分ができるアプローチは、音楽とサッカーで人を繋いで、その場所がとにかくポジティブでハッピーになっていること。それが自分の「役割」なのかなと思っています。

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GAKU-MCさんは「音楽とサッカーは世界共通言語だ」と語ってくれました。言葉が通じなくても、社会情勢に隔たりがあっても、音楽とサッカーがあれば「繋がり」が生まれる。ご自身からの体験から感じたことだと仰っていました。

その思いが今、GAKU-MCさんの中で明確な「役割」としてあって、「MIFA」をはじめとする様々な活動を通して、世の中のためにアクションされています。

人をハッピーにしたい。みんなを笑顔にしたい。そのために音楽とサッカーで人を繋いで、あたたかい場所をつくっていきたい。そんなGAKU-MCさんの姿勢から、私たちも学ぶことが大きいと感じました。

自分が果たすべき「役割」は何なのか。決して大きいことではなくてもいいのだと思います。その「役割」をみんなが認識できた時、「SDGs」の達成に繋がるのかもしれないと感じました。

All photo by Kazuna Hanada

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ライター
五月女 菜穂 ライター/株式会社kimama代表取締役

1988年、東京都生まれ。横浜市在住。1児の母。 大学卒業後、朝日新聞社に入社。新聞記者として幅広く取材経験を積む。2016年に独立し、ウェブや紙問わず、取材・執筆・編集・撮影を行う。22年4月、合同会社アットワールドを起業し、旅好きのフリーランスが集まるコミュニティ「@world」を運営。23年5月、編集プロダクションの株式会社kimamaを創業。世界一周経験者で、渡航歴は45カ国超。

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