9月21日の国際平和デーに開催されたイベント「PEACE DAY」のトークショーに出演されたマリエさんと鎌田安里紗さん。

おふたりはモデル経験があることに加え、エシカルやサステイナブルについて発信しているという共通点があります。

最近は、「エシカル」というワードもよく耳にするようになってきましたが、「結局、エシカルファッションって何?」「環境には気を配りながら、おしゃれもWゲットできるの?」などと考える人も多いと思います。

今回は、マリエさんと鎌田安里紗さんに、エシカルファッションに関心を持つようになった経緯やファッション業界の課題、消費者が意識すべきことなどを語っていただきました。

マリエ
モデル・タレント・アパレルブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル マリエ デマレ)」デザイナー。10歳からモデル活動を始め、タレントとしても活躍。2011年、アメリカの名門校パーソンズ美術大学に留学し、ファッションについて学ぶ。2017年、自身のブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS」を立ち上げた。現在は、モデル・タレント活動を続けながら、ファッション、エシカル、サステイナブルについての情報発信を精力的に行っている。2020年から環境省森里川海アンバサダーに就任。
鎌田安里紗
“エシカルファッション”に関する情報発信を積極的に行い、ファッションブランドとのコラボレーションでの製品企画、衣服の生産地を訪ねるスタディ・ツアーの企画などを行っている。衣食住やものづくりについて探究するオンラインコミュニティ「Little Life Lab」主宰。一般社団法人unisteps共同代表。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。同大学総合政策学部非常勤講師。

ーーエシカルファッションに関心を持ち始めたきっかけは?

マリエさん

元々小さい頃から、お菓子の過剰包装やフードロスに疑問を持っていました。でも、実際に思想を持って活動を始めたのは2017年くらいで、きっかけはNY留学ですね。

それまでかなり身体に負担をかけた生活をしてしまっていたのですが、NYで暮らす健康的な人たちの生活を見て、私も自分自身にきちんと向き合うようになったんです。

マリエさん

そこから、自分の食べるものや着るものについて考えたり調べたりした結果、エシカルやサステイナブルに辿り着きました。

そして、健康になった自分がこれからどんな活動をしようかと考え直したときに、同じことで悩んでいる日本人の方たちに向けて、身をもって学んだ知識をシェアしていくのが良いと思ったんです。

鎌田さん

マリエさんの体験、すごく共感できます。エシカルやサステイナブルについて発信していると、“正義感”から活動していると思われがちだけど、実はプロセスが逆なんですよね。

私の場合は、アパレル店員や雑誌モデルをしていたときに、服が大好きなはずなのに、ある時期から「自分の本当に着たい服がない…」と感じるようになって。

マリエさん

私もそういうときあった!

鎌田さん

自分が“気持ちよく着たい服”を求めて、生産背景などを辿っていった結果、エシカルにつながりました。

当時は「エシカル」や「サステイナブル」という選択肢がなかったので、発信して増えたらいいなと思ったんです。ちょうど10年くらい前かな。

マリエさん

最近はエシカルファッションが雑誌やメディアで取り上げられることも増えたけど、10年前はまだ全然聞いたことなかったよね。

ーーとはいえ、人によってまだまだ環境問題やサステイナブルに対する意識の差はありますよね。

鎌田さん

今は、おしゃれなマイボトルやエコバッグなど、いろんな種類のものが売られているけど、可愛いからと言って、たくさん買ってしまうのは本末転倒ですよね。

でも、私たちも“エシカル”を意識し始めた頃は、確かにそういう入り方だったと思うし、まずは何でも取り組んでみること、意識すること自体に意味があると思います。

マリエさん

私が今、一番悲しいなぁ…と思っているのは、地球上のみんながプラスチック中毒だということ。スーパーに行くと、何から何まで全部プラスチックに包まれていて、心底ゾッとします。

しかも、コーヒーを買うためにマイタンブラーを持参しても、コーヒー自体の売り上げ量を数えるために、使わなかったカップをわざわざ捨てるお店もあると知ったときには、本当に衝撃を受けました。

鎌田さん

それは、ありえない……!

マリエさん

アメリカでは、添加物のせいで子どもたちが病気になったことに、消費者が気づいたことで、オーガニック製品の需要が高まって、オーガニック製品のみを取り扱うスーパーが設立された事例もあります。

でも日本では、“大企業がトレンドを作って、消費者に浸透させていく”という反対の流れの方が多いから、消費者ひとりひとりには、自覚というか… 意識が根付かない。だから、発信者である私たちがもっと根底からサポートして、共感してもらえるように伝えていく必要があると思っています。

鎌田さん

企業側もアイデアを実現しやすいように、消費者も、ただ与えられたものや流行っているものをなんとなく消費するだけじゃなくて、「もっとこういうアイテムにしてほしい」とポジティブに発言しやすい雰囲気になれるといいですよね。

消費者側の意識が変わらないと、いくら企業に変化を求めても変わらないです。

ーー今、日本のファッションに関しての課題は何だと思いますか?

鎌田さん

まずは、服を作りすぎていること。アパレルは欠品していたら売り上げの機会損失になってしまうので、できるだけ商品を並べるようにしています。だけど、作られているものの半分くらいは廃棄されているんですよね。

マリエさん

服の素材をサステイナブルに変えるといったことも大事ですが、その前にもっとできることがあると思います。たとえば、タグや過剰包装などのすぐに捨ててしまうものは、もはやなくてもいいと思うんですよね。

物がたくさん売れているニュースを見ても、一体どれだけのビニールを消費したんだろう…と考えると胸が痛くなります。

鎌田さん

過剰包装って、傷を付けない・シワをつけないといったクレーム防止の役目もありますもんね。

でも逆に、過剰包装がクレームになるくらい意識が変わればいいですよね。企業はひとりひとりの声を大事にしているから、消費者それぞれが何を重要視しているかが、ダイレクトに物づくりに影響します。

マリエさん

私のブランドはできるだけ紙の包装を使用するようにしています。でも、ECサイトによっては、ビニール包装を絶対にしないと納品できないところもあって…。そういった場合には、地球にやさしい素材を選ぶようにして使っています。

鎌田さん

そういう規約も変わっていってほしいですよね。ふとした時に気づく、「ここではビニールいらなくない?」っていう素朴な疑問や意見をスルーしないことが大事ですよね。

ーーちなみに、環境にやさしい素材を使いながら、服のファッション性も同時におさえることについて、マリエさんご自身のブランドでは、どうされていますか?

マリエさん

たとえば、私のブランドで発売したこのファーバッグは、工場で排出されたファーの切れ端を使ってパッチワークしています!

鎌田さん

めっちゃ可愛い!

マリエさん

さらにこのバッグ、裏地はウェットスーツを生産する際に余った生地の切れ端、ショルダーベルトは廃棄物になる予定だった飛行機のシートベルトを使っています。


エコファーが可愛いショルダーバッグ

マリエさん

エシカルファッションって言うと、“アーシーでシンプルなデザイン”というイメージを持たれがちですが、おしゃれが好きだからこそ、デザイナーが遊び心を持ってクリエイトすることが大事だと思っています。

鎌田さん

捨てられるはずだった素材をどうやって活かそうって考えたり、エシカルファッションって制約じゃなくてクリエイティビティの源ですよね。最近は服が消費材のように扱われることもありますが、愛着を持って付き合っていきたいですよね。

マリエさん

本来、服ってたくさん買えるものじゃなかったはずなのに、年々価格が下がっていることで、大量消費をする人も増えているんでしょうね。値段ではなく本当に欲しいもの・必要なものを選べる人間になることで、たくさんの選択肢が変わってくるのかなと。

鎌田さん

そのことを考えるために、2018年から「服のたね」というコットンを種から育てて服をつくる企画を続けています。参加者のみなさんがそれぞれ自宅で育てたコットンを使って服を作るんです。

今の世の中は、まだまだ作り手と買い手が乖離してしまっている状態だけど、そんな風に一度、作り手側となってプロセスを体験してみると服の見方も変わりそうですよね。

***

最近はプチプラファッションが流行ることも多く、消費者目線としては安い方がいいと思ってしまいますが、たしかに安く買った服には思い入れがないなと痛感しました。

今はエシカルなものでも可愛いアイテムはたくさんあるし、どのような素材で作られているといったアイテムのストーリーを知ることで、愛着も湧くようになると思います。

「安いから」「流行っているから」というなんとなくの理由で買うのではなく、自分で何を着たいのかを見極めて服を購入するようにしたいですね。

PEACE DAYとは

人類は有史以来、人が人を殺さない日はないといわれています。たった一日でいいから「人と人が争わない日」をつくろう。それが9月21日の「国際平和デー=PEACE DAY」です。

そんな想いを広めるために、「Believe in Peace with Love」をコンセプトとして、世代、立場、すべてのジャンルを超えて楽しめる野外フェスとして2018年からスタートしたのが野外フェスである「PEACE DAY」です。

毎年、野外フェスとして開催していたイベントが、オフラインでは開催が難しい。だけど、こんな時代だからこそ、ちゃんと立ち止まってみんなで平和について考えたい。そんな想いから、2020年は場所を選ばずに参加できるオンラインで開催しました。

All photos by Kazuki Miura

その他

1996年東京生まれ。ステキな人やモノを広めるライター。2019年にフリーライターとして独立し、インタビュー記事、地方取材記事、イベントレポート、プレスリリースなどの執筆を手がける。短期間でサクッと行く旅と音楽が好き。普段は多国籍なシェアハウスで暮らしています。

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