最近、よく耳にする「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、貧困や気候変動など、世界が抱えるあらゆる問題を解決し、持続可能な社会をつくるためのビジョンのことをいいます。
そんなゴールが世界各国で掲げられている今、私たちにできることは何なのか。「SDGs」について、TABIPPOは考えます。

NOMAに習う、自然の摂理から学ぶ暮らし

日本人の父とシシリア系アメリカ人の母の間に生まれた、佐賀県出身のモデル、NOMAさん。雑誌や広告、映像などで活躍しているNOMAさんですが、大学で国際情勢や環境法について学び、2012年以降は植物やフードコンシャスネスの知識を生かして、ダイニングレストランやカフェ、イベントやプロダクトのディレクションも手がけています。

NOMA
ファッションからビューティーまで幅広いジャンルの雑誌や広告、映像等を中心に活躍中のモデル。アーティストやアパレルブランドとのコラボ制作にも携わり、ダイニングレストランやカフェ、イベントやプロダクトのディレクション等も手がける。独学で、植物学や薬草学を学んだ後、植物療法、アロマテラピー、フードレメディーの資格をとる。幼い頃より大好きであった植物と宇宙への偏愛っぷりを中心にビューティーからカルチャー、サイエンス、ジャンルレスにトークショーやイベント出演を多数こなす。
Instagram:@noma77777 | HP:http://noma-official.com/

今回は、NOMAさんがなぜ植物や宇宙に興味を抱いているのか、そして、彼女なりの哲学から生まれた「SDGs」へのアプローチについて聞きました。

モデルのお仕事をされているNOMAさんが植物に興味を抱くようになった理由を教えてください。

自然豊かな故郷と生物学者だった親の影響だと思います。実家には昆虫の標本や自然科学系の図鑑がいっぱいあって、幼稚園ぐらいの時から葉っぱ集めや木登りが好きな野生児でした(笑)なかなかに厳しい家庭だったので、ゲームやテレビは禁止されていて。だから、自然の中で遊ぶしかなかったんですよね。

子どもの頃、母がよく連れて行ってくれるハーブショップがあって。そこでいろんなハーブを買って、ハーブティーとして飲ませてくれました。オレンジやレモンにクローブを刺すポマンダーも作りましたね。

心と体が離れていっているようなときとか、体調不良になったときとか、ふとそういうことを思い出して。あぁ、私は植物が好きだったなって。自分の中にあった「点」と「点」がいま、一つの「線」になって浮かんできている感じがします。

思春期に多少の「反動」はありましたけど、モデルの仕事をするようになって、自然や宇宙の摂理を学ぶことの大切さを感じるようになりました。というのは、モデルの仕事は、自分の見た目を常に判断されるから、リラックスして自分らしく表現できないとダメなんですよね。

忙しかったり、体調が悪かったりすると、意外とナチュラルになれない。だから、どこか遠くの国に行って、自分の中に潜り込む旅をしたり、まぁ都内でも一人でいろいろ思想にふけったりして、自分の体や精神に向き合うようになって。その時に、植物と宇宙の力ってすごいなと思うようになったんです。

心と体が離れていってしまいそうな時は、自分の頭の中の回転数が早すぎたり、自然のリズムと離れちゃったりしている時なので…。そんな時に、宇宙の摂理をもう一回見直したり、植物の力を取り入れたりすることが本当に大切だなというのを改めて知ったんです。

ーー壮大なお話!

例えば、生命はもともと海から始まっているじゃないですか。未だに私たちは海のものを食べて生きているし、海がない生活なんて考えられないですよね。海水や海泥を用いて身体の不調の改善をする「タラソセラピー」(海洋療法)が生まれるぐらい、私たちと密接に関わっている。

私は特に植物が好きだけれど、地球の歴史、生物の歴史、宇宙の摂理を学ぶことで、自ずと見えてくるものがあると思うんです。いまの時代は、モノも情報も溢れているから、選択する時に迷いが生じやすいけれど、そういう摂理を知って、感じることができれば、人生の選択肢って自然と見えてくるし、自分の哲学が生まれてくるんじゃないかな。

人間は地球、そして宇宙と、総合的にいろいろな環境から影響を受けている。そのことに、最近の人たちは前よりも敏感に感じるようになった。だから、エシカルやオーガニックな選択肢が増えて、マーケットが拡大しているんだと思うんですよね。

ーーすごく、SDGsにつながるお話ですね。

思春期はファッションやカルチャーにどっぷりでしたが、色んな流れで大学で国際法律を専攻する事になり、環境問題や国際自治などを学びながら国連に携わる仕事を目指していました。

結局、在学中の一人旅がきっかけで、帰国後すぐに旅とモデル業への専念で上京を決めたのだけども、大学時代に学んだことは好きだったな。当時学んだ事は結構抜けてしまったけれど、感じた世界の広さや、マクロな視点で良い未来に繋がる「何かしたい」というあの時の感覚は残っているんだと思います。

EMPOWER Project(エンパワープロジェクト)という活動に出会ったのも、その一つ。東京大学の井筒節・特任准教授に出会って、知ったプロジェクトです。

「誰かの力になりたいけれど、声をかけにくい」「支援してほしいけれど、頼みにくい」という経験ありませんか? 困っている状況の時に、助けてくださいって言えない、甘えられない。そんな状況を無くそうよという、東京大学の生徒さん達が立ち上げたプロジェクトなんですね。

バッジを身に着けることで、自分に協力したい気持ちがあることを示すんです。SDGsの最も大切なメッセージである「誰一人取り残さない」という言葉をキーワードにした活動なので、気になる人はぜひ調べてみてほしいですね。

ーーSDGsの目標達成のために、これからどんなことができると思いますか。

さっきも少し話しましたが、やっぱり、自然界の摂理や宇宙の摂理を知ること。全ては繋がっているので、その大きな営みを知ることだと思います。

歴史を知っていくだけでも、自分たちのルーツを知ることができるし、生態系の仕組みを紐解くと、なぜ自然栽培の野菜の方が私たちの体が気持ちよくなるのかなど、溢れる選択肢の中から、何を選んだらいいか、自ずと見えて来る。貪欲に知ってほしいなと思います。豊かな未来を紡ぐのに、どちらの選択肢をとった方が良いのか教えてくれる知恵になると思います。

もう1つ伝えたいのは、物を買うときや、食べるときに、購入した後にそれがどう循環するかを想像してみることも、豊かな未来につながる1票を導きやすいと思います。長く愛用できるか、どのようなセカンドライフが待っているか考えてみる。

例えば、今日、身につけているバンクルはシルバースプーンでできているんです。ドレスはアーミーウェアと生地帳のレースをアップサイクルして創られたもので、ファッションの分野でも循環の中から生まれた選択肢は増えつつあります。

ライフワークとしては廃材を顔料やキャンパスにした作品創りも行っていたり、まだまだ模索中ですが、人間も他の生命体たちと同じように、より循環されたシステムの中で生きるべきだと思うので、まずは自分の生活の中から実践できる事を増やしていく。そして、そんな個々の意識がより豊かな未来へと繋いでくれる。そう感じています。

All Photos by Kazuna Hanada

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私たちはもっと「循環」を意識しなくてはいけない

NOMAさんが繰り返した「自然界や宇宙の摂理を知る」こと。どれぐらい自分ができているのか、わたしも31歳にもなって考えてしまいました。

どうしても目の前のことに捉われて、自分のルーツや自然のリズムを感じることを怠ってしまいそうになりますが、もっと広い視点で、深呼吸するように、見つめ直してみること。そうすると、自ずと目の前に「選択肢」がすっと見えてくるのかもしれません。

みなさんももし、NOMAさんの経験や思想から刺激を受けたら、日常生活から一度立ち止まってみてください。「SDGs」へのアプローチとして、「まず思想を変えること」から始めて「必要な行動を選択する」ことができるようになるのが、とても大事だと思います。

NOMAさんの「まずは自分の生活の中から実践できる事を増やしていく。そして、そんな個々の意識がより豊かな未来へと繋いでくれる」というメッセージの通り、みんなの小さな一歩から未来が変わりますように。

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ライター
五月女 菜穂 ライター/株式会社kimama代表取締役

1988年、東京都生まれ。横浜市在住。1児の母。 大学卒業後、朝日新聞社に入社。新聞記者として幅広く取材経験を積む。2016年に独立し、ウェブや紙問わず、取材・執筆・編集・撮影を行う。22年4月、合同会社アットワールドを起業し、旅好きのフリーランスが集まるコミュニティ「@world」を運営。23年5月、編集プロダクションの株式会社kimamaを創業。世界一周経験者で、渡航歴は45カ国超。

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