ライター
多葉田 愛 セールスディレクター

国内外でまちづくりを手がけるUDS株式会社にて広報と新規事業の立ち上げを経験後、株式会社TABIPPOにて観光PRを担当。現在は福岡⇄東京の二拠点生活を送りながら、フリーランス広報ユニット「ふたり広報」を運営。

船で片道24時間。ここにしかない自然と歴史が残る小笠原諸島


東京都・竹芝ターミナルからフェリー「おがさわら丸」に揺られ、24時間。移りゆく空の色を眺めながら、伊豆諸島を越えて、さらに南に向かいます。



ボニンブルーの海
「ボニンブルー」と呼ばれる深い青色の美しい海に浮かぶ、小笠原諸島の「父島(ちちじま)」と「母島(ははじま)」「南島(みなみじま)」を目指します。今回は「ひとつの島でゆったり過ごす」よりも全ての島を見てみたくて、父島経由で先に母島、南島の順に巡り、最後に父島へ帰ってくる旅程に決めました。

母島の植物の生態系を学ぶ、南崎・小富士ツアー


父島からさらに2時間船に乗り、日本で最も遠い島とも言われる「母島」に到着。母島ならではの自然を体験するべく、都道・最南端の「南崎ロータリー」から植生を観察しながら、小富士の頂上(約86m)を目指すツアーに参加しました。

山に入る前には、固有種であるカタツムリを保護するため、天敵の「プラナリア」を持ち込まないようにブラシで靴裏を擦り、お酢のスプレーをかけます。


ガイドの茂木さんは、母島に移住されて40年。本業は、観葉植物を中心に栽培されている農家であるため、植物に関する知識が豊富です。

小笠原諸島は、海底火山の爆発により生まれた「海洋島」のため、大陸の植生とは大きく異なります。また、父島は乾性低木林、母島は湿性高木林が特徴で、それぞれの島でも違いを感じることができます。


スリバチ展望台からの眺め
小笠原の特徴である「赤土」、木々の「緑」、海の「青」。自然が織りなすカラフルな景色が鮮烈に心に残りました。


小富士の頂上からは南崎の珊瑚礁が見渡せます

■詳細情報
・名称:小笠原母島観光協会(南崎/小富士コース・茂木永楽園)
・住所:東京都小笠原村母島字元地
・地図:
・営業時間:8:00〜17:00(12:00〜13:00 お昼休み)
・定休日:なし
・電話番号:04998-3-2300
・公式サイト:https://hahajima.com/

ボニンブルーの海に囲まれた美しい「南島」へ


父島の南西に位置する南島。「小笠原南島の沈水カルスト地形」として国の天然記念物に指定されており、貴重な固有種も生息する南島に上陸するには、「東京都自然ガイド」の同行が義務付けられています。
海に魅せられて小笠原に移住されたガイドさんが南島へと案内してくれました。


父島からボードで約20分。風を切り海を進んでいきます
南島は、隆起石灰岩からなる無人島で、かつてここが森だったことを表すように「ヒロベソカタマイマイ(カタツムリ)」の半化石が多数残っています。


ヒロベソカタマイマイの化石
扇池のビーチは貸切状態で、美しく煌めく海を存分に堪能。


透明度が高く、シュノーケルで海中を覗くと、たくさんのカラフルな魚が泳いでいました。夏の日差しと心地よい冷たさの海を感じ、波の音を聞きながら、いつまでも浸かっていたいと思わずにはいられませんでした。

■詳細情報
・名称:ST TOUR(体験サップ&南島ツアー)
・住所:東京都小笠原村父島清瀬(宿泊施設まで送迎あり)
・地図:
・営業時間:8:00〜17:00
・定休日:不定休
・電話番号:090-6933-6858
・公式サイト:https://sttour2018.com/

夜にしか見られない生き物も多数!神秘的なナイトツアー


多様な生き物が暮らす小笠原諸島には、日中だけでなく、夜に出会える夜行性の動物も多く生息しています。特に夏の夜は、夜行性の生き物の活動が活発ということで、ナイトツアーに参加してみました。

まずは暗闇で光るキノコ、ヤコウタケ(通称グリーンペペ)を探しに向かいます。傘の直径は大きいもので2cm程の小さなキノコですが、まるでホタルのような明るさです。


ヤコウタケとその菌糸が暗闇できらめいていました。初めて見る神秘的な光景に、ツアーへの期待値が高まります。

続いて、小笠原諸島に生息する唯一の固有哺乳類「オガサワラオオコウモリ」を探します。暗闇の中で黒いコウモリを探すのは至難の技ですが、ガイドさんが2匹のコウモリを見つけて教えてくれました。


タコノキにぶら下がるオガサワラオオコウモリ
最後に、アオウミガメの産卵場所としても知られるコペペ海岸で、星空を鑑賞。満天の星空に心を奪われます。夏の星座たちが夜空を彩っていました。

一緒にツアーに参加した子どもたちは初めて見る生き物に興味津々の様子。
私も童心に返り、夜の冒険を楽しみました。

■詳細情報
・名称:竹ネイチャーアカデミー(ナイトツアー)
・住所:東京都小笠原村父島字東町
・地図:
・営業時間:9:00~18:00
・定休日:なし
・電話番号:04998-2-3305
・公式サイト:https://take-na.com/

ディープな父島に出会う、ジャングルツアー

アメリカ軍との戦争の舞台となった小笠原諸島には、数多くの戦跡が残っています。
ガイドさんの案内のもと、旧海軍通信隊の地下本部跡がある夜明山(よあけやま)へ。


墜落したアメリカ製の戦闘機「マスタング」の翼
人の何倍もの大きさのマスタングの翼が山の中に横たわっています。所々に軍道や防空壕跡と思われる場所もあり、忘れてはいけない過去を心に刻みました。

車での移動中、道路脇を見るとフェンスが長く続いています。

これは島の固有種であるアカガシラカラスバト(通称アカポッポ)をノネコから守るためのものだそう。今回の旅では出会えませんでしたが、ガイドさんと一緒であればこのアカガシラカラスバトサンクチュアリ内にも入ることができます。


バードサンクチュアリ
そして、ガイドさんおすすめのとっておきの場所「傘山(かさやま)」にも連れて行っていただきました。ここもガイドなしでは登ることができない場所です。


急な崖を数メートル登る必要がありますが、その分頂上にたどり着いた時の達成感は格別。360度広がる父島の絶景を見渡せます。

ジャングルツアーでは、来島回数や興味関心によってツアー内容をアレンジしてくれるそう。あなただけの特別な体験ができるはずです。

■詳細情報
・名称:シャンティーバンガロー&シャンティーボビーズ(ジャングルツアー)
・住所:東京都小笠原村父島北袋沢58番
・地図:
・営業時間:8:00〜21:00
・定休日:なし
・電話番号:04998-2-7266
・公式サイト:shantibungalow.com

大自然に浸り、五感を満たす世界自然遺産へ


人生で初めて、知床・白神山地・小笠原諸島を訪れ、それぞれの個性豊かな自然にエネルギーをもらいました。

都心から訪れるには、飛行機の乗り継ぎや長時間のドライブ、24時間の船旅などが必要で、いずれの場所も決して利便性の高い場所とは言えないかもしれません。

でもさまざまな情報に簡単にアクセスできるようになったいま、時間をかけて自分の足で訪れ、目の前に広がる自然を五感で感じる体験価値はこれまで以上に増しています。

知床の美しい湖と野生の動物たち、白神山地の生命の息吹を感じるブナ林、小笠原諸島の鮮やかに輝く海と固有の自然。そして、道中に偶然出会った美しい景色や、地域の方との会話。

それぞれの土地で見て感じたことは、色褪せずに私の心の中に残ることでしょう。


「おがさわら丸」帰りのお見送り
長いようで短い人生において、何を心に刻むかは自分次第。力強い自然の色があなたの心のアルバムに鮮やかな彩りを加えてくれるはずです。

photos by Taka(知床・白神山地)
Shigeki Naganuma(小笠原諸島)

ライター
多葉田 愛 セールスディレクター

国内外でまちづくりを手がけるUDS株式会社にて広報と新規事業の立ち上げを経験後、株式会社TABIPPOにて観光PRを担当。現在は福岡⇄東京の二拠点生活を送りながら、フリーランス広報ユニット「ふたり広報」を運営。

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