ライター
岡本 大樹 撮って書くひと

2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

一眼レフで撮ったけど、イマイチ魅力を伝えられる写真になっていない……なんて経験、ありませんか?その悩み、被写体によっては撮り方一つで解決できるかもしれませんよ。

今回ご紹介する撮り方は「スローシャッター」。その名前からもわかるように、シャッタースピードをゆっくりにして撮る方法で、夜景や花火、滝の水の流れといったちょっと特殊な被写体を撮るときに役立ちます。

魅力ある写真を撮れないのはセンスがないから?いやいや、そうとは限りません。まずはいろんな撮影方法を知って、試してみることから始めてみましょう。

スローシャッターってどんな撮り方?


文字通りシャッタースピードを遅くして撮ることを、スローシャッターあるいは低速シャッターと呼びます。

一般的な認識として、写真は「一瞬を切り取るもの」だとされていますが、実際には数分、数時間という長い時間をかけて撮る一枚もあるのです。

スローシャッターの明確な定義はありませんが、一般的には1秒や5秒といった1/10(0.1)秒程度より遅ければスローシャッターにあたるとされます。これは通常の撮影よりも長い時間シャッターを開くことを意味していて、移りゆく時間や動きを表現することができるため、幻想的な一枚が撮れることも。


例えばこの一枚のように、人が残像のようになって見える写真もスローシャッターで撮影したものとなります。これを見てもらえれば、写真は情景を写し止めるだけではなく、一枚で動きを表現できることがわかるでしょう。

実際に目で見えている景色とは違った景色が撮れるため、カメラならではの表現とも言えます。被写体とタイミングを選ぶ撮影方法ではありますが、ぜひマスターして自分の表現に磨きをかけてみてください。

今回はそんなスローシャッターで撮るのに適した3つの被写体を、実際に私が撮った作例を参照しながらご紹介します。

レーザービームのような光跡を残す夜景写真


夜景写真に関しては、多くの方がそれほど意図せずにスローシャッターを使っている可能性があります。

というのも、暗いものを撮影することになるため、そもそもスローシャッターでないと、明るさが足りず真っ暗な写真になってしまうからです。

スローシャッターの使い方は、単純に明るさをシャッタースピードで稼ぐ(シャッタースピードが長いほど取り込める光が多いので、明るく撮ることができます)という用途だけに限られません。


こちらも同じく夜景写真ではありますが、光が筋のようになっています。これは車のヘッドライトとテールライトの光跡が写ったもの。

このように、シャッターを開いている間の光の動きはすべて一枚の写真に反映されます。


シャッタースピードの長さや車の動きによって、そのときそのときで違った一枚になるので、いろいろな設定を試してみることをおすすめします。

ここまでで、なんとなくシャッタースピードと写り方の関係性がわかってきたでしょうか。では、次の被写体での作例を見てみましょう。

滝撮影は流れ落ちる水の動きを表現


次にご紹介するスローシャッターに適した被写体は、滝です。旅をしていると魅力的な滝に出会うことって多くありますよね。

特に日本には大小さまざまな滝が存在していて、滝が好きで写真にどっぷりハマるという方も少なくありません。それほど滝との相性は良いのです。筆者も最初にスローシャッターで滝を撮ったときには、その幻想的な写り方に衝撃を受けて何度もシャッターを切り続けた記憶があります。

では、スローシャッターだと滝はどのように撮れるか確認してみましょう。


どうでしょうか。写真集やSNSで人気の滝写真では、このように滝が美しい布のように撮られていることが多いですよね。

シャッタースピードを特に変えず、オートの設定で撮影するとどうなるか、比較してみましょう。


先ほどの写真はシャッタースピードが1秒、こちらは1/100秒です。数字だけ聞いてもピンとこないと思いますが、結果として写真の印象はかなり違うことがわかるでしょう。

なぜこんな写真になるかは、すでにスローシャッターの原理を理解した人ならわかると思います。上の写真は1秒間、下は1/100(0.01)秒間、時間に差がある分流れた水の量が違いますよね。その差が写りの差になってくるのです。

下の写真が悪いというわけではありませんが、なめらかに流れ落ちる感じがより伝わるのは上の方ではないでしょうか。目で見た景色とまったく同じではないかもしれません。でも、滝を見たときに受けた印象をよりうまく伝えられる可能性があるという意味で、スローシャッターを使う意義はあります。


もちろん大事なのは見たときの自分の印象です。その印象や感動をより正確に伝えるために、今度滝を訪問する際にはスローシャッターという選択肢も試してみてください。

実際には、水量などによってちょうど良いシャッタースピードはその場その場で変わってきます。設定をいろいろと試して画面で確認しながら撮影を楽しみましょう。

夜空に咲く花火もスローシャッターで


最後は花火です。ドンと打ち上げられて上空で開く花火といえば、興奮や感動を与えてくれる夏の風物詩の代表格ですよね。

しかしながら、花火ほど見た目と写真で違いが出やすい被写体はなかなかありません。実際にその違いにガッカリしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

でも、それは当たり前のことなんです。打ち上げられてから花火が開いて消えるまで、大きいものだと10秒以上かかるものもあります。

ただ写真を撮るだけでは、その打ち上げられている途中の一瞬を切り取るだけになってしまうのが、ガッカリ写真になる大きな原因。そこで使えるのがスローシャッターというわけです。


こちらは花火が上がり始めて開き終わるまでを一枚に収めるため、シャッタースピードを13秒にして撮っています。滝と同じくこちらも目で見たものと同じとは言えないかもしれませんが、実際に感じた印象に近い一枚になっているのは、撮影法のおかげです。

連続で上がるスターマインなどもシャッタースピードを調整することによって、うまく一枚に収めることができますよ。


ただ、同じ場所に何発も花火が連続で上がる場合は、そこだけが明るくなりすぎて、真っ白になってしまうことも。多くの花火を写したいからと、シャッタースピードを長くすればいいというわけではないことも頭に入れておきましょう。

また、花火は種類や大きさによって開き終わるまでの時間に差があります。そのため、あらかじめシャッタースピードを決めて撮る方法よりも、マニュアルモードでシャッタースピードを「BULB」という設定(機能がない機種もあり)にして撮ることをおすすめします。

BULB設定にしていると、シャッターのボタンを押している間ずっとシャッターが開いている状態になります。


つまり、花火が上がると同時にシャッターボタンを押す、そしてそのまま開き終わるまで押し続けて終わったらボタンを離す、というふうに、花火のタイミングに合わせてシャッターを切れるのです。

花火は、あらかじめどんなものが上がるのかはわかりません。その場で花火に合わせて撮ることになるため、失敗も多くなる難しい被写体でもあります。その分、満足の一枚を撮れたときの喜びは他ではなかなか味わえないものですよ。

目で見たときのた感動を伝えられるような一枚を目指して、ぜひスローシャッターを練習してみてください。

スローシャッターの注意点


最後に、撮影する際に注意すべきことをまとめておきます。

まずスローシャッターは明るい場所ではほとんど使えません。夜であったり、太陽が当たってない場所だったりと、うまく使えそうなタイミングを見計らいましょう。

また、長い時間シャッターが開いている撮影方法なので、普通に手で持って撮ると高確率でブレてしまいます。シャッターが開いている間は一切動かないようにしっかり固定しましょう。三脚を使うのがベストです。

といった注意点はあるものの、今回ご紹介した被写体であれば、シャッタースピードを1〜15秒程度に設定すれば撮れるものばかりです。手軽に挑戦できるので、ぜひ一度試してみてください。


今回は一眼レフの使用を前提としていますが、実際はシャッタースピードを設定できる機種であれば基本的にどんなカメラでも大丈夫。

滝や花火以外でも、スローシャッターを活かせる被写体はあります。カメラならではの世界を体験できるので、色々な場面で試してみてくださいね。

All photos by Daiki Okamoto

ライター
岡本 大樹 撮って書くひと

2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

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