ライター
帆志 麻彩 旅と暮らしの文筆家

小学5年生のときにオランダでみた運河の光が忘れられず、旅が人生の大きな軸となりました。これまで、旅メディアの編集、企業広告コピーや雑誌取材記事、ガイドブック制作などを担当し、2019年からは〈サステイナブル〉をテーマに活動。その他、詩の創作や旅の貼り絵など、好きなことをしながらゆるりふわりと過ごしています。好きな言葉はモンテーニュの「自分は自分のものである」で、憧れの人はターシャ・テューダー。著書に『本能のデザイン』(実業之日本社)。

みなさんは、1年間でどれくらいの食料が捨てられているかをご存知ですか?日本の食品廃棄量は年間2,759万トン、そのうち食品ロス(本来食べられるのに捨てられている食品)は643万トンにもなると言われています。

あまりに数字が大きすぎて正直ピンときませんが、日本人1人あたりの食品ロス量は1年で約51kg、つまり毎日1人1人がお茶碗1杯分のご飯を捨てている計算になるのだそうです。(参考資料:農林水産省

私もあなたも、会社の上司もご近所さんも、みんな毎日お茶碗1杯捨て続けたら……あっという間に日本中がご飯の海になってしまう……!想像するだけでも恐ろしいです。ご飯の海で溺れるのは嫌だけれど、そんなこと言ったってどうしたらいいの? 食品廃棄問題への対策が積極的に行われているスウェーデンの「食」をのぞいてみましょう。

 

食品をレスキューするという考え方

最初にご紹介するのはストックホルムの街中にある「Sop köket」。スウェーデン語で “ゴミのキッチン” という意味をもつ、なんとも大胆な名前のレストランです。こちらのお店のテーマは「食材のレスキュー」。

スーパーなどで廃棄に回されてしまう食材を無料で分けてもらい、その都度メニューを考案しているのだとか。提供される料理の少なくとも50%はレスキュー食材で、残りの足りない分を卸しなどから仕入れているそうです。

 

「元々インドで暮らしていたので、こんなにも食品が捨てられてしまうことに最初はとても驚きました。そこから、サステナブルという考え方に興味を持つようになりましたね」と話すのはオーナーのフィリップさん。

続けて、「見た目が悪くて売れないもの、賞味期限が近くて廃棄されてしまうようなものでも、まだまだ美味しく食べられるんです。お肉によっては賞味期限が切れる直前が一番美味しくなるものだってあるんですよ」と教えてくださいました。

この日はランチビュッフェ(99クローネ=約1,300円)をいただくことに。自分が食べられる量だけを取ることができるので、食べ残す心配もありません。レスキュー食材のお店だと知らずに利用されているお客様も少なくないそうで、廃棄される食品でもそれだけ美味しいお料理を提供できるということを、常に満席の店内が証明しているようでした。

「オープンして5年経ちますが、レスキューした食材は約18トンになります。お店で残ってしまったお料理はホームレスの人たちに提供しているので無駄がありません。今までに8500食ほど寄付できました」。

それでも、もっとたくさんの食材をレスキューしたいと少しもどかしそうにお話されていたのがとても印象的でした。

■詳細情報
・名称:Sop köket
・住所:Medborgarplatsen 3, 118 26 Stockholm, Sweden
・地図:
・公式サイトURL:https://sopkoket.se/

 

自家菜園で循環させる仕組み

次にご紹介するのは、ヤーナ地方にある野菜中心のオーガニックレストラン「Restaurang Varma Skillebyholm」。ストックホルムから車で1時間弱の場所に位置するヤーナは、スウェーデンの中でもエコやサステナブルへの関心が高い人たちが多く暮らしている地域です。

オーナー兼料理長のシモンさんも、かつてはストックホルムのお店でシェフをしていたそうですが、ヤーナで出会った有機栽培の野菜に惚れ込んで移り住んできたそう。

「レストランの料理には自分たちのガーデンで作った野菜を使うようにしています。ストックホルムにあるミシュランのレストランにも卸すほどうちの野菜は美味しいんですよ」と、シモンさんは誇らしげに話します。

 

自家菜園を持っていることで、野菜の皮や使えない部分も肥料として活用できるのでゴミが出ることはほとんどありません。また、なるべく自分たちの暮らす地域で完結させることで、食料の運搬にかかるエネルギー削減などにも繋がっていきます。

今目の前に見えることだけではなく、その先を想像する一人一人の力。それがスウェーデンのサステナブルなライフスタイルを支えているのかもしれません。

ライター
帆志 麻彩 旅と暮らしの文筆家

小学5年生のときにオランダでみた運河の光が忘れられず、旅が人生の大きな軸となりました。これまで、旅メディアの編集、企業広告コピーや雑誌取材記事、ガイドブック制作などを担当し、2019年からは〈サステイナブル〉をテーマに活動。その他、詩の創作や旅の貼り絵など、好きなことをしながらゆるりふわりと過ごしています。好きな言葉はモンテーニュの「自分は自分のものである」で、憧れの人はターシャ・テューダー。著書に『本能のデザイン』(実業之日本社)。

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