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帆志 麻彩 旅と暮らしの文筆家

小学5年生のときにオランダでみた運河の光が忘れられず、旅が人生の大きな軸となりました。これまで、旅メディアの編集、企業広告コピーや雑誌取材記事、ガイドブック制作などを担当し、2019年からは〈サステイナブル〉をテーマに活動。その他、詩の創作や旅の貼り絵など、好きなことをしながらゆるりふわりと過ごしています。好きな言葉はモンテーニュの「自分は自分のものである」で、憧れの人はターシャ・テューダー。著書に『本能のデザイン』(実業之日本社)。

サステイナブルという言葉には、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。むずかしいこと、自分とはあまり関係のない話のように感じてしまう人もいるかもしれませんが、サステイナブルは私たちが人生の中でより良い選択をするための大きな軸となります。

環境問題はもちろん、私たちの暮らし、仕事、人間関係など、ずっと続けていける方法を身近なものから考えることはとても大切です。

今回は、様々な面からサステイナブルについて考えるきっかけとなる映画をご紹介していきます。

『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』

アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーの暮らしを記録したドキュメンタリー映画。子育てを終えた56歳でバーモント州に18世紀風の家を建て、92歳で亡くなるまでの間、ずっと自然と寄り添いながら暮らしていました。

時間をかけてゆっくりと作り上げた美しい庭とその暮らしは世界中のガーデナーたちの憧れ。さらに、その自由な精神と自分の心を大切にする生き方、本当の意味で豊かに生きるための哲学が世界中の人々の心をつかみ、「スローライフの母」としても親しまれています。

ターシャは映画の中で繰り返し人生について語ります。

人生なんてあっという間に終わってしまうわ。好きに生きるべきよ。幸せは自分で創り出すのよ
豊かな人生を送りたいと思ったら心が求めるものを心に聞くしかないわ。私は時々腰をおろしてゆっくり味わうの。花や夕焼けや雲、自然のアリアを。人生は短いのよ。楽しまなくちゃ

何十年も前から自分の人生や自然のためにどう行動すべきかを考え、「選ぶことの大切さ」を理解していたターシャは、常に「何をして何をしないか」を大切にして生きてきました。

人生は小さな選択の積み重ねでできていること、自分の世界を築くにはひとつひとつを真剣に選択していくこと。心が迷子になったとき、優しく道しるべになってくれる映画です。

『西の魔女が死んだ』

あるときから登校拒否になってしまった中学生の女の子が、森の中で暮らすイギリス生まれのおばあちゃんのもとで、ひと夏一緒に暮らしながら魔女修行をするお話です。原作は梨木香歩さん。

「どうして自分は周りに馴染めないのだろう」と悩む思春期真っ只中の主人公を、ときに厳しく、ときに優しく包み込んでくれる魔女のおばあちゃん。女の子が学校への悩みを打ち明けると、その気持ちを静かに受け止めこう言いました。

サボテンは水の中に生える必要はないし、シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、誰がシロクマを責めますか

つらい環境を飛び出してのびのびと自分らしく生きていける場所を選ぶこと、それを決して後ろめたく思う必要はないのだということを教えてくれる言葉です。そして、おばあちゃんは映画の中でこんなことも言っています。

悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です

女の子に告げられた魔女修行の内容は、早寝早起きをすること、食事をしっかり摂り運動をすること、規則正しい生活をすることでした。そんな簡単なことで悪魔を防げるの?という疑問に対しておばあちゃんはこう答えました。

きっと、精神力を鍛えることでこの世にいる悪魔(悪い欲望や誘惑、猜疑心など)に心が乱されることはなくなるのですよ、と伝えたかったのでしょう。大人になった今でも、忘れず大切にしていきたい言葉です。

『人生フルーツ』

雑木林に囲まれた一軒の平屋に暮らす、津端夫婦の生活を記録したドキュメンタリー映画。建築家である夫の修一さんは、自身が手がけた津知県春日井市の高蔵寺ニュータウンに土地を買ってワンルームの平屋を建て、その周りに30坪の雑木林を作りました。

敷地内で育てられる四季折々の野菜や果物は修一さんが時間をかけて育てたもの。その作物で妻の英子さんが愛情たっぷりのごちそうを作る。そんなお二人の食事シーンはとても幸せそうで、笑顔で溢れているのが印象的でした。

ナレーションを担当する樹木希林さんが、映画の中で繰り返している言葉があります。

風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。

津端夫妻がお金を使うシーンはほとんど映し出されません。外に遊びに出かけるわけでも、外食をするわけでも、贅沢をするわけでもない。それでも、とても生き生きとしているお二人の姿を見ていると「本当の豊かさ」とはなんだろうかと考えさせれらます。

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帆志 麻彩 旅と暮らしの文筆家

小学5年生のときにオランダでみた運河の光が忘れられず、旅が人生の大きな軸となりました。これまで、旅メディアの編集、企業広告コピーや雑誌取材記事、ガイドブック制作などを担当し、2019年からは〈サステイナブル〉をテーマに活動。その他、詩の創作や旅の貼り絵など、好きなことをしながらゆるりふわりと過ごしています。好きな言葉はモンテーニュの「自分は自分のものである」で、憧れの人はターシャ・テューダー。著書に『本能のデザイン』(実業之日本社)。

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