ライター
morinohinako Go with the flow.

Writer / Editor. 山梨県北杜市、沖縄の離島、東京を行ったり来たり。おいしいもの、美しい自然があるところなら、どこでもかけつけます。旅をすればするほど、甘酸っぱい記憶が増えていく。だから私は旅を続けています。

おいしいものに出会ったとき、感動のあまり「このお野菜たちはいったいどんなすばらしい農家さんによって育てられたのだろう」と、私は勝手に想像してしまいます。

だって、雨の日も暑い日も寒い日も休みなく愛情を注いで野菜を育てているって、すごいことだと思いませんか?


最近では、スーパーで売られている野菜にも生産者さんの名前が書かれていたり、マルシェでは生産者さんから直接買うことができたりと、日々の食卓と生産者さんの距離は近くなってきました。

でも、好奇心に身を任せてもう一歩進んでみたい。今日は、千葉と東京の畑、そしてお野菜をおいしくいただけるお店をめぐる“Table to Farm”旅をご紹介します。

千葉県・我孫子市「自然野菜のら」で畑のお手伝い


“Table to Farm”の旅でやってきたのは、千葉県・我孫子市の「自然野菜のら」。

「自然野菜のら」では、中野牧人さんが農薬・除草剤・化学肥料不使用でお野菜を育てています。冒頭に出てきたお野菜は中野さんが育てているコリンキーというお野菜で、生で食べてもおいしいかぼちゃの仲間です。

中野さんの畑には、めったにお目にかかれない野菜がたくさん。たとえば、このお野菜はなんという種類か、ご存じですか?


正解は、ヒルカントリーレッド。オクラの仲間で、生のまま食べてもシャキッと甘くてとってもおいしいんです。

その他にも、人参やごぼう、枝豆など、その季節のお野菜を育てている中野さん。「自分の野菜をお客さんが食べてくれるのは、農家としてうれしいこと」とおっしゃっていました。


広大な敷地で、日々野菜と土と生きものと向き合いながらしなやかに生きる中野さんの姿は、その味に感動させてくれた野菜の姿と重なりました。

東京・三鷹の鴨志田農園で土の大事さを学ぶ


続いての旅先は、東京・三鷹の鴨志田農園。2020年の春から開講している堆肥づくりの講座に参加している私は、月に2回、三鷹にある鴨志田農園の畑に通っています。

「腐った野菜からは腐った野菜炒めしかできないように、腐った土からは腐った野菜しかできないんですよ」

このハッとさせられる言葉は、堆肥づくりの講座の先生である、鴨志田純さんのお言葉です。


ここで私たちが学んでいるのは、野菜づくりの前に大切な、土づくり。おいしい野菜を育てるため、野菜それぞれに合わせた土を、自分たちで地域の資源を使いながらつくる方法を学んでいます。

土づくりだけでなく、その季節の野菜の育て方や仕立て方、種まきの仕方などを教わり、農業の基本の「き」も教わっている私たち。

そんな私たちのお楽しみタイムは、手づくりの野菜たっぷりランチです。毎回、食卓と畑を行ったり来たりしながら、育てることと食べることのよろこびを身体で感じています。


土、水、光、空気、微生物、農家さんの手……。たくさんの要素がつながり影響し合うことで育っていく野菜たち。野菜だけでなく他の動物たちや私たちも、多くのものが関わり合いながら生きているのだなと、土を学ぶことを通して気づかされるのです。

「自然野菜のら」の野菜が食べられる「農en restaurant Table Beet」


2カ所の畑を訪れ、もう一度食卓へ。訪れたのは、「自然野菜のら」で中野さんが育てた野菜をいただける「農en restaurant Table Beet」です。

「農en restaurant Table Beet」は、8年前にオーナーの安生さんが、自然野菜のらの中野さんと出会って始めたお店。本当の意味の「Farm to Table」を軸にして、その季節に採れた野菜をもとにレシピを考え、提供されています。


この日いただいたのは、「馬肉 / 黒無花果 / フロマージュブラン」「本州鹿 / 青トマト / ゴボウ」「発酵フライドポテト」など、どんな味かパッと想像できないものばかり。


びっくりしたのは、お野菜をつかったデザート。こちらは、「焼き茄子と抹茶のムース」です。焼き茄子と抹茶……!?どんな味かまったく想像がつきませんよね。


けれど食べてみると、驚くほど自然にマッチする組み合わせ。焼き茄子のくせになる後味と、抹茶のふんわりとした香ばしさと、程よい甘さのあるなめらかなデザートでした。

野菜やお肉などの素材に愛をもち、そのよさを生かしている料理は、食べる私たちはもちろん農家さんも幸せにしてくれると感じます。

「農en restaurant Table Beet」には、育てる人、つくる人、食べる人それぞれがうれしくなる循環がありました。

■詳細情報
・名称:農en Restaurant table beet
・住所:千葉県柏市中央町7-26栄マンション1F
・地図:
・アクセス:JR常磐線「柏駅」南口より徒歩7分
・営業時間:ランチ/11:30~15:00(L.O.14:30)、ディナー/17:00~23:00(L.O.22:00)
・定休日:なし
・電話番号:04-7103-6395
・公式サイトURL:https://www.tablebeet-kashiwa.com/

CSAで、農家さんの顔が浮かぶ食卓に


食卓から畑への旅も、そろそろ終盤。最後に自宅でいろいろな農家さんのお野菜を直接買えるシステム「CSA:Community Supported Agriculture」をご紹介します。CSAは、自宅近くの農家さんの野菜を定期便で買えるシステムです。

生活者の私たちにとってCSAは、顔の見える地域の農家さんの野菜を食べられること、移動距離が短く環境負荷の低い野菜を取り入れられることがメリット。農家さんにとっては、定期的に買ってもらえるお客さんがいることで安定収入となったり、飲食店やスーパーに卸しにくい少数の野菜を食べてもらえたりすることがのメリットと言われています。

最近では「食べチョク」や「地産マルチェ」、「坂ノ途中」などといったCSAのサービスがあり、私も実際に「食べチョク」で鴨志田農園の野菜定期便を購入してみました。


甘長やプチトマト、モロヘイヤ、茄子、空芯菜など、定番の夏野菜からちょっと変わった種類まで、さまざまな野菜がぎゅっと詰められていました。レシピもついていて、ちょっと変わった野菜もおいしく食べることができます。

野菜セットが届いた日は、贅沢をして野菜の天ぷらに。


スーパーの野菜売り場ではあまり感じられない季節感も、農家さんの畑の採れたてが詰まっているCSAなら、箱を開けるたびちゃんと変化を感じられます。

鴨志田さんに次に会ったとき「おいしかったです」と伝えようと思いながら食べるのは、なんだか少しうれしいものです。

食卓と畑を結ぶ、いい循環をつくりたいから


私たちが生きる上で、切っても切り離せない、食。

世界の食や環境を取り巻く状況は、決して楽観視できるものではありません。取り組まなければならない課題も、確かにあります。

けれど、食べることや生きることに罪悪感を抱くよりも、目の前の食事に愛やよろこびを感じて、それがきっとつくり手の元にも届くようにと、いい循環が続いていきますようにと願うことからはじまることも、あるのではないでしょうか。

そんなことをちょっとだけ考えながら、今日もおいしく、いただきます。

All photos by morino hinako

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morinohinako Go with the flow.

Writer / Editor. 山梨県北杜市、沖縄の離島、東京を行ったり来たり。おいしいもの、美しい自然があるところなら、どこでもかけつけます。旅をすればするほど、甘酸っぱい記憶が増えていく。だから私は旅を続けています。

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