ライター
岡本 大樹 撮って書くひと

2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

一眼レフのレンズ選び、と聞くと難しそうなイメージを持つ方も多いかもしれません。が、被写体によって選ぶレンズをかえるのは、写真表現の幅を広げるためにかなり有効な手段です。

とはいえ、レンズの特徴を知っていなければ、選択肢にすらならず、もしかしたらシャッターチャンスを逃すことになるかも……。

そんなことにならないためには、まず「どのレンズを使うと、どのように撮れるのか」を知るべきです。

photo by pixta

今回は、数あるレンズの中でも特に写真の違いがわかりやすく、適した被写体を理解しやすい望遠レンズの特徴をご紹介します。

望遠レンズを使ったことがない方も、この記事を読んで気になったらぜひ一度実際に使ってみてくださいね。

望遠レンズってどんなレンズ?

photo by pixta
望遠レンズと聞いても、使ったことがなければどういったものかイメージしづらいかもしれません。

一般的には、スポーツや動物の撮影によく使われます。プロ野球の放送や野生動物を追ったドキュメンタリー番組などで目にしたことがある方もいるでしょう。

photo by Daiki Okamoto

一般的に、望遠レンズはその焦点距離が50mmより大きいものを指します(明確な定義はなく、100mm前後は中望遠レンズと呼ばれることもあり)。大きいものだと、長さが40cm以上、重さは3kg以上もあるほどです。

基本的には、望遠レンズは”遠くのものを大きく撮る”ことができるレンズ。それは一般的なイメージとも重なっているでしょう。

ただ、他にも望遠レンズを使うことによってもたらされる効果があるのです。

望遠レンズを使うメリット

では、実際に望遠レンズを使うと、どういった写真が撮れるかを見ていきましょう。

photo by Daiki Okamoto

まず、こちらはとある海岸で広角レンズを使って撮影した1枚。画面の手前には波打ち際が写っており、奥には朝日が昇ってくる直前の空が広がっている様子が見えます。

そして、タイミングは少し後になりますが、ほとんど同じ場所から撮った望遠レンズでの1枚が次のものです。

photo by Daiki Okamoto

同じ場所で撮った2枚の写真ではありますが、写真の出来上がりは完全に違ったものになっていることがすぐに見てとれると思います。

望遠レンズは”遠くのものを大きく写せる”という特徴があることはすでに紹介しましたが、それは言い換えれば”主役をはっきりさせる”ということでもあります。

この写真の場合であれば、望遠レンズで撮影した方が、「朝日と船」といった主題がよりわかりやすいですよね。そのため、広角レンズは”主役を際立たせるのが難しいレンズ”とも言えます。

望遠ならではの「ボケ味」と「圧縮効果」

photo by Daiki Okamoto

ここまでは、望遠レンズを使ったことがなくとも、イメージとして理解できるレンズの特性だったかもしれません。ここでは、望遠レンズを使うときに写真に大きく関係してくる「ボケ味」と「圧縮効果」も理解しておきましょう。

「ボケ味」はともかく、「圧縮効果」は、あまり聴き馴染みがない言葉かもしれませんが、難しく考える必要はありません。言葉の通り、画面の中の世界が”圧縮されたように見える効果”と理解すればいいでしょう。

photo by Daiki Okamoto

例えばこちらの1枚だと、阿蘇の噴煙を背景に人を撮っていて、その間の距離が詰まって見えますが、実際には数百メートルは離れている中での撮影です。

このように、限られた狭い範囲をグッとズームして撮影できるのが望遠レンズの特徴です。背景が迫ってきているように見え、被写体と背景の距離が圧縮されたように感じられる効果のことを、「圧縮効果」と呼びます。

photo by Daiki Okamoto

他にも、「合成かな?」と思えるくらい、月や夕日などが巨大に見える写真を目にしたことがあるかもしれませんが、基本的にこの圧縮効果が活用されています。もちろん合成の場合もありますが……。

photo by Daiki Okamoto

一眼レフを使っていれば「ボケ味」という言葉はよく理解されていることでしょう。ただ、同じ被写体を同じ大きさで撮ったときに、設定は同じでも望遠レンズの方がより強いボケ味の写真を撮ることができるのは、あまり知られていないかもしれません。

望遠ズームレンズ(例えば70−200mm)を持っている場合は、同じものを同じくらいの大きさで撮ってみるとその違いがわかると思いますよ。ぜひ一度お試しください。

望遠レンズに適した被写体

最後にご紹介するのは、望遠レンズに適した被写体やシチュエーションです。

スポーツの撮影は基本的に望遠レンズで

photo by pixta

望遠レンズでの写真と聞くと、スポーツでのワンシーンを切り取った写真を思い浮かべる方もいるかもしれません。プロスポーツの試合でも、望遠レンズをつけたカメラがズラっと並んでいますよね。

これは、遠くからでも大きく撮れるという特徴を考えれば最も基本的な使い方と言えるでしょう。

近い距離から撮影できないことに加えて、活躍している選手を大きくとらえた写真でなければ、主役としての迫力やインパクトに欠ける一枚になってしまう可能性が高いため、スポーツの撮影では望遠レンズは必須といえます。

近づけない野生動物の撮影にも利用価値あり

photo by Daiki Okamoto

こちらも、理由が似ているのですぐにイメージできるかもしれません。動物、特に野生動物は、近づきたくても近づきすぎると逃げてしまう可能性が高い被写体。

動物の種類によっては、かなり距離をとった場所からしか撮影できないことも珍しくありません。

景色と一緒に撮る方が、野生動物としての魅力を伝えやすい一枚にはなりやすいですが、あまりに動物が写っている範囲が少ないと、何を撮ったのかわかりづらい一枚になりかねません。

photo by Daiki Okamoto

鳥やリスなど、小さな動物の場合には、その特徴はより顕著になります。望遠レンズを使わない場合には、動物がどこにいるのかわからない写真を量産することになりかねないので、ご注意くださいね。

咲き誇る花には圧縮効果を活用した撮影を

photo by Daiki Okamoto

3つ目の被写体は「花」です。花の場合は、近づけないケースは少ないため、意外に感じるかもしれませんが、すでに紹介した圧縮効果は、花が並んで咲いている様子を写す際にも役に立ちます。

例えば桜並木であれば、桜の木の1本1本が実際よりも近くに立っているように感じられる一枚を撮ることができます。

photo by Daiki Okamoto

他にも、ネモフィラやコスモスが咲き誇っているような、花が群生している様子を上手く表現するには望遠レンズならではの圧縮効果を活用しない手はありません。

圧縮効果により、画面の中の花の密度がギュッと高まり、印象的な1枚になりますよ。

望遠レンズならではの良さを知ろう

photo by pixta

ここまでは望遠レンズのメリットをお伝えしてきましたが、デメリットもあります。その最たるものが「重さ」です。

近年は軽くて使いやすい望遠レンズも増えてきてはいますが、望遠レンズはその特性上、大きくならざるを得ない構造を持っています。そのため、基本的に重いものが主流。旅にはレンズの重さが致命的となりかねません。

photo by Daiki Okamoto

とはいえ、”望遠レンズでしか撮れない写真”は確実に多く、未だにスマホカメラでは太刀打ちできないゾーンでもあります。

メリット・デメリット、その両方を知った上で旅のお供にするかどうか、ぜひご一考くださいね。

ライター
岡本 大樹 撮って書くひと

2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

RELATED

関連記事