ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

道中新たな名所を発見!千手ブナ


ヤマップ平を越えると、また一つ大きな見どころが現れます。それが「千手ブナ」です。登山道の整備に伴って偶然発見されたブナの巨木で、いくつも派生する枝が千手観音の姿を連想させます。

実は「天蓋山」は、山の形が仏像の頂上にかざす衣笠(天蓋)に似ていることから名付けられています。その山の麓に仏像(千手観音)を思わせる巨木が根付いているという事実は、なんだか自然のロマンに思いを馳せずにはいられない奇跡です。


「森からか木からか」という議論があるように、木々の総体としての山と、命を輝かせる一本の木は、切っても切り離せない関係性。飛騨の自然がはぐくむ神秘に感銘を受けるスポットだと思います。

大変さが伝わってくる終盤


そんな「千手ブナ」を過ぎると、山頂手前の三叉路まで、急斜面をいくワイルドな道が続いていきます。登山道を整備したボランティアの方によれば、ここが道を作る上で一番大変だったとのこと。

ロープを垂らしながら、どの導線が一番傾斜が少なく安全かと何度もシミュレーションをして完成させたそうです。実際に歩いていても、整備の難しさが伝わってくる、絶妙なコース取りでした。


「よくここに道を通してくれた!」と通過するたびに感動しながら、最後は次第に現れる紅葉に見惚れながら山頂を目指しました。登山開始から約2時間半。ようやく天蓋山に登頂です。

日本百名山を11座も望む。地元の宝・天蓋山へ


最高のコンディションに恵まれた今回、山頂に待っていたのは北アルプスの山々と紅葉のコラボレーションが織りなす絶景でした。

剱岳(つるぎだけ、標高2,999m)から槍ヶ岳(やりがたけ、標高3,180m)、乗鞍岳(のりくらだけ、標高3,026m)、御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)、白山(はくさん、標高2,702m)まで日本を代表する名峰がずらり。なんと天蓋山山頂からは日本百名山に選ばれている山を11座も望めるそうです。


この日は地元の親子連れのグループで賑わっており、地域の方に愛されている郷土の山らしいシーンにほっこり。そして今年も秋の山に登って、四季との一期一会を楽しんでいる幸せを実感しました。

大学来、7年もプライベートで一緒に旅している友人にもなんだか感謝を伝えたくなります。私にとって山は、当たり前のようで当たり前でない、ふとした幸せに気づかせてくれる場所です。

美しい紅葉とアルプスの共演が待つ。天蓋山登山道


YAMAP新道が完成したことで、YAMAP新道→天蓋山→天蓋山登山道(逆もOK)の一周ルートが取れるようになりました。今回はYAMAP新道をメインでご紹介しましたが、天蓋山登山道の景色も実にすばらしいです。

特筆すべきは紅葉の美しさ。黄色やオレンジ、赤とパッチワークのように山肌を彩ります。秋晴れの青空を背景にすると、いっそう鮮やかで何度も立ち止まってしまいます。


そしてもう一つ、北アルプスの名峰を近く感じられるのも魅力です。紅葉の窓から覗くのは、後立山連峰の薬師岳(やくしだけ、標高2,926m)。遠く岳人(※2)憧れの名峰に思いを馳せながら下山しました。

(※2)岳人:都山愛好家のこと

■詳細情報
・名称:天蓋山(てんがいさん、標高1,527m)
・住所:岐阜県高山市上宝町金木戸
・地図:
・アクセス:山之村牧場まで飛騨市街から車で約70分、登山口まで約10分
・所要時間:YAMAP新道→天蓋山→天蓋山登山道の周回で約4時間40分
・オススメの時期:秋
・Yamap公式サイトURL:https://yamap.com/mountains/3790

下山後は山之村ならではの観光&グルメを堪能!


今回は天蓋山「YAMAP新道」についてご紹介しましたが、実はコースが整備されたことで魅力が高まっているのは登山だけではありません。下山後には山之村グルメや観光体験を楽しむことができます。

まず代表的なスポットが「山之村牧場」。ソーセージバイキングやスイーツ「ヨーソフハニー」が絶品です。また北アルプスを見渡しながらの乗馬体験や牧場見学も楽しめます。

■詳細情報
・名称:山之村牧場
・住所:岐阜県飛騨市神岡町森茂1157
・地図:
・アクセス:飛騨市街から車で約70分
・営業時間:10:00~17:00(レストランでの食事 11:00~15:00)2023年度は4/25(火)~11/5(日)まで営業
・冬季休業:11月上旬~翌年4月下旬
・電話番号:0578-82-5890
・料金:入場無料
・所要時間:1時間
・公式サイトURL:https://www.yamanomura-makiba.jp/


また山之村牧場の近くにある「りょうし食堂」も、地元の方の憩いの場。ワンコインという都会ではあり得ない価格で、ミニジビエカレーとミニ猪汁がセットになった卵かけはんセットをいただけます。

■詳細情報
・名称:りょうし食堂
・住所:岐阜県飛騨市神岡町森茂1098-1
・地図:
・アクセス:飛騨市街から車で約70分、山之村牧場から徒歩すぐ
・営業時間:11:00〜18:00
・定休日:平日
・料金:1,000円以内

「YAMAP新道」の完成によって、さらに盛り上がりを見せる飛騨市のエコツーリズム。地元の輪がつくり出す新しい山旅から目が離せません。気になった方はぜひ、飛騨市山之村を訪れてみてくださいね!

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

RELATED

関連記事