ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!秋真っ只中の11月、雪が降る直前まで山で過ごしているトラベルライターの土庄です。まるで絵画のような紅葉に引き込まれ、そのたびに心の赴くままシャッターを切っています。

今回はそんな筆者のもとへ、おもしろい情報が舞い込んできました!それは飛騨山之村にある天蓋山(てんがいさん、標高1,527m)に、新しい登山道が完成したというもの。その名も「YAMAP新道」です。

地元愛から始まった活動が行政を巻き込み、YAMAPユーザーの手を借りて整備されたのだそう。今回はそのプロジェクトについて簡単にお話ししながら、実際に筆者が歩いてきた登山の様子をレポートしたいと思います。

飛騨市山之村とは?


北アルプス山麓にある7つの村の総称「山之村」は、飛騨市の中心・古川から約25km離れた神岡、そこからさらに約20kmほど離れた場所にあり、まさしく秘境と呼ぶにふさわしいロケーションを誇っています。

標高約1,000mの峠を越えてアクセスし、北アルプスの薬師岳(やくしだけ、標高2,926m)や黒部五郎岳(くろべごろうだけ、標高2,897m)などに囲まれた牧歌的風景から、”天空の隠れ里”という愛称でも有名です。


人口はわずか120名ほどという集落ですが、山之村牧場という観光施設があり、寒干し大根や山之村そばなどの伝統産業が根付いています。今回ご紹介する天蓋山は、そんな古き良き飛騨の山間集落に位置しています。

地元愛が動かしたYAMAP新道プロジェクト


2023年夏にYAMAP新道という登山道が完成したことで、もともとピストン(往路と復路で同じ登山道を使うこと)でしか登れなかった天蓋山(てんがいさん、標高1,527m)で一周登山ができるようになりました。

このニュースは、登山道の名称に登山地図アプリ「YAMAP」の名前を冠していることもあり、全国から注目を集めています。そんなYAMAP新道プロジェクトを筆者も少し取材させていただいたのですが、そのストーリーが素敵でした。


天蓋山登山口の入り口にある山之村キャンプ場が休業し、地域への人の流入や活気が乏しくなってしまったため、地元ボランティアの方々が一念発起して新しい登山道の整備を進めたのだそう。

その活動が飛騨市を動かし、森スケ(※1)とYAMAPの提携事業で、YAMAPユーザー向けに天蓋山の新登山道整備ツアーを企画したのです。その結果、自然を愛する登山愛好家の手を借りて、YAMAP新道が完成しました。


天蓋山に登る方が増え、登山道の起点となっている山之村牧場が賑わう。自然を守りながら、観光コンテンツを作り出し、人の流れや地域の循環を生む。まさに官民の連携が成し遂げたエコツーリズムのすばらしい事例と言えるのではないでしょうか。

(※1)森スケ:飛騨の森を守る「体験ツアー」や「ボランティア」をリブランディングし、困りごとや地域課題を資源に、人と人とのつながりと支えあいを構築する飛騨市独自の仕組み。

YAMAP新道登山レポート


今回はそんな郷土愛から始まった天蓋山「YAMAP新道」にさっそく登ることができたので、その様子をレポートしてみたいと思います。

野趣溢れる道は整備の大変さを物語りますが、登りごたえがあり、道中に見られる工夫も印象的!下山後に食や観光を楽しめるのも登山の醍醐味だと再確認できました。

努力の結晶・白樺階段


「YAMAP新道」のスタートは、山之村の顔となっている山之村牧場です。なんと入園料無料でヤギやウサギなどといった動物とのふれあいを楽しむことができます。

園内を標識にしたがって奥へと進むと、登山道が始まります。序盤はゆったりとした林道ですが、10分ほど歩くと急斜面が現れます。距離は短いのですが、ところどころ傾斜がきついのが「天蓋山」の特徴です。


第一の名所は「白樺階段」。子どもやお年寄りなど、さまざまな利用者を想定して何度もシミュレーションし、一つひとつステップを作り上げています。それだけでも気の遠くなるような作業ですが、設置のためには資材や道具を担いでここまで歩いてこなければなりません。

まさにボランティアの方々の努力の結晶である白樺階段。安全に楽しく登山できることに感謝しつつ、先に進んでいきます。

飛騨らしさに触れるきこりの飯場


新たに完成した「YAMAP新道」には、利用者を楽しませてくれる工夫が垣間見られます。その代表的なものが、各ポイントに置かれている手描きの標識。

飛騨杉の林やブナの細道など、周囲の景観や地点をユーモラスに言い換えています。筆者が特に気に入ったのは「きこりの飯場」です。


登山道を整備するとき、お酒の一升瓶が落ちているのを見て、「きっときこりがここでごはんを食べていたのだろう」と発想したそう。苔が覆った杉の切り株が趣深く、なんだかストーリー性を感じられるネーミングに心惹かれてしまいました。

山之村の魅力が伝わるヤマップ平


登山開始から約1時間半ほどで、開けたポイントへ到着します。その名も「ヤマップ平」です。登山道を整備しているときに見つけた展望ポイントを開拓し、コースの名物といえるパノラマ台になりました。

そこに置かれているのは、ボランティアの方々が協力して作り上げた白樺の椅子とテーブル。山之村の小中学生が作成した「ヤマップ平」の特製看板とメッセージボードも飾られています。


まさに天蓋山を訪れた登山者に対する地元の方のおもてなし。山之村の郷土愛や活気を感じるこの場所からは、北アルプスの名峰が連なる絶景が広がります。

まさに山之村の人と自然という2つの魅力を体感できるスポットだと言えるでしょう。

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

RELATED

関連記事

EVENT

イベント一覧