ライター
桃(Momo) フリーライター

書く人・エッセイスト。アメリカ・イギリスでの短期語学留学、ヨーロッパ鉄道周遊ひとり旅など経て、新卒でベンチャーの旅行会社に就職。現在は複数メディアにてフリーのライター兼編集者。趣味は英語で、映画は洋画を中心に年間150本を鑑賞。渡航国数は23ヶ国。

この記事では、四角大輔さんとTABIPPOが一緒に作り上げた話題の新書籍、「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」の中から、旅のエピソードを抜粋して紹介していきます。

今回ご紹介するのは、救命救急医・中島侑子さんのエピソードです。

人生を追求する14人の「時代の疾走者たち」による原体験

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自分らしい生き方をつくる「手段」として旅がある!「人生」を追求する14人の“時代の疾走者たち”による「原体験」としての「旅」のストーリーをまとめた一冊。「旅に出て人生は変わるのか?」をテーマに、高橋歩、山川咲、西野亮廣、村上萌×著者(四角大輔、TABIPPO)とのスペシャル対談も収録。

 

「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」は「自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと」の著者、四角大輔さんと長い時間をかけて一緒に作り上げた、話題の新刊であり「旅」と「生き方」をつなげる1冊となっています。

 

旅に出ると視野が広がり、自分がいかに狭い世界で生きていたかを思い知らされる時があると思います。

旅とは何か?自分はこれからの人生をどうやって生きて行きたいのか?この本を読んで今一度自分の心に問い掛ける時間を作ってみてはいかがでしょうか。

医者としての「弱さ」と「強さ」を知れた旅|中島侑子/救命救急医

知らない世界をこんなにも残したまま、大人になっていいのだろうか?

私が初めて旅に出たのは、大学2年生のころ。友だちとの海外旅行でバリ島へ。そのときに偶然読んだロバート・ハリスさんの『ワイルドサイドを歩け』という本を読んで、鳥肌が立ちました。

そこに書かれてあったのは、放浪、恋愛、ギャンブル、ドラッグといった言葉たち…。自由で、破天荒で、何にも縛られない生き方。私には考えもつかなかった人生でした。

 

「私も一人旅をしてみたい…」。そう思い、6年生のときにようやくタイへ。生まれて初めての一人旅では、「明日から放浪の旅に出るんだ!」というドイツ人の青年や、「Traveling is my life」と目を輝かせながら言っていたおじいさん…

常識に縛られず、自分の生きたい道を生きているたくさんの人たちに出会い、「もしかすると私は、本当の自由を知らないのかもしれない」と思うようになったのです。

 

医者としての人生に迷いが生まれました。「見たこともない、知らない世界をこんなにもたくさん残したまま、医者になっていいのだろうか?」。何年かして、専門医の資格をとって、結婚や子育てをして…10年先が容易に想像できてしまう未来に向かってそのまま歩んでいくことが、とたんに怖くなりました。

「もっと自分の人生に驚きたい。ワクワクしたい」、「見たことがない、知らない未知の世界を見てみたい!」と。

レントゲンもCTもない頼れるのは自分の身ひとつ

青年の名前はプレムといいました。この診療所は元々、ドイツのNGO によって建てられたこと。今は援助が打ち切られていて、経営が苦しいこと。20歳のころから 6年間、毎日1人で医者の役割をし、村人の対応をしていることを教えてくれました。

 

「医者じゃないのに、たった1人で…?」。思わず私が日本で医者をしていることを伝えると、「日本人の医者と一緒に働いたことがないから、ぜひ一緒に働こう!」と誘われました。

ふたつ返事でOKしたのはいいものの、翌日プレムと一緒に患者さんを診ることになったその瞬間、「ハッ」としました。診療所内には、8 畳くらいのスペースに机とイス、ベットと薬棚があるだけです。

もちろん、レントゲンもCTもありません。医者としての私が頼れるのは、聴診器と自分の身ひとつのみだったのです。

 

幸いにも、この日に診察した患者さんは日本でいう風邪のような人ばかりで、少し診察して薬を出す程度ですみましたが、ずっとこんな環境で、たった1人で全村民の命を預かっているプレムのプレッシャーは計りしれませんでした。

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桃(Momo) フリーライター

書く人・エッセイスト。アメリカ・イギリスでの短期語学留学、ヨーロッパ鉄道周遊ひとり旅など経て、新卒でベンチャーの旅行会社に就職。現在は複数メディアにてフリーのライター兼編集者。趣味は英語で、映画は洋画を中心に年間150本を鑑賞。渡航国数は23ヶ国。

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