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1996年東京生まれ。ステキな人やモノを広めるライター。2019年にフリーライターとして独立し、インタビュー記事、地方取材記事、イベントレポート、プレスリリースなどの執筆を手がける。短期間でサクッと行く旅と音楽が好き。普段は多国籍なシェアハウスで暮らしています。

こんにちは、TABIPPO編集部の伊藤美咲です。

この記事は、2022年7月14日に行われたオンラインイベント「JAL社内ベンチャー代表と語る、学生が旅することの意義」のレポート記事です。

このイベントは、ゲストに日本航空(JAL)の社内ベンチャー「W-PIT」の発起人である松崎志朗さんをお迎え。TABIPPO代表の清水と観光の未来についてトークセッションをしていただきました。

本日の講義のキーワードは「不便益」と「計画された偶発性」。一体どういうことでしょうか? これらの言葉の意味を考えつつ、ぜひ最後まで読んでみてください。

読み終えた後は、この2つのキーワードを頭の片隅に置くことで、旅や生活がもっと豊かになるかもしれない、と納得感を得るかもしれません。

株式会社TABIPPO代表 清水直哉

W-PIT代表 松崎志郎

(以下、トークイベントより抜粋)

トークテーマ[1]:社内ベンチャー立ち上げの経緯

清水

まずは、「W-PIT」立ち上げの経緯を伺いたいです。

松崎

W-PITは、Wakuwaku(ワクワク)をキーコンセプトに異業種共創を推進するJAL公認の社内ベンチャーチームです。W-PITを立ち上げた2016年ごろは、企業内でイノベーションやハッカソンが必要だと言われていた時期で、JALも社内でイノベーション創発活動が行われるようになったんです。

私はたまたまIT企画部に属し社内ハッカソンの事務局にいたのですが、自分自身でも何か立ち上げたいと思いました。

多くの人が商品ドリブンでアイデアを出す中、私は自分たち自身が幸福感(Wakuwaku感)を持って仕事に取り組めるような風土を築くことに着目していました。社内の人材特性のデータを見せてもらった際、JALのメンバーはマニュアル通りに品質高く業務をこなすことには長けているけど、何かを変えようとチャレンジする姿勢は少し弱いという課題を感じていたんです。

そんな人材的な経営課題を解決するために、W-PITを立ち上げました。

清水

松崎さんの想いはもちろんあったと思いますが、会社側(JAL)もW-PITの立ち上げに踏み切った背景には、どんなものがあると考えていますか?

松崎

ひとつは、会社も人材的な部分に課題を感じていて、もっと働きやすい会社を作りたかったからだと思います。もうひとつは不確実な今の世の中で、航空以外の分野で新規事業を作ることで、骨太な会社になることが背景にあると考えられます。

清水

なるほど。W-PITのキーコンセプトにもWakuwakuが入っていますが、松崎さんはWakuwaku感を仕事にすることをベースにされている印象があります。

松崎

周りを見ていても、ハイパフォーマーの人たちはみんなWakuwakuしながら仕事でもプライベートでも生きているんですよね。ハイパフォーマンスを引き出すには、すごく大事なことだと思っています。

清水

学生たちは電車で疲れたサラリーマンを見ると「大人ってつまらないのかな」って思うかもしれないけど、今日は仕事を楽しんでいる人もいることを伝えたいなと思っていました。

トークテーマ[2]:旅の原体験

清水

僕は19歳の頃にヨーロッパ一周、21歳で世界一周をしたことが旅の原体験になっているのですが、松崎さんは旅の原体験ってありますか?

松崎

大学時代に、旅好きな兄の影響でヨーロッパや東南アジアをよく一人で旅していました。一人で旅をすると、現地でいかに人との接点を作れるかや、自分らしさをどうやって伝えられるかなど、色々なことを考えなくてはいけなくなるんですよね。

「いちいち考えなくてはいけないこと」こそが旅の醍醐味だと思いますし、自分の頭で考えたことがフィットしたときに世界が開けるんですよね。

今も自分のクリエイティブによって突破口を見つけられるのは、旅の経験があったからこそだと思います。

清水

大学生の頃は何カ国くらい行ったんですか?

松崎

25カ国くらいです。

清水

めちゃくちゃ行ってますね。

トークテーマ[3]:JALに入ったきっかけ

清水

JALに入ったのは、旅の原体験も活きているんですか?

松崎

帰国子女なので、幼い頃から「外から日本を見ること」が多かったんです。アメリカに住んでいた頃に、海外における日本のプレゼンスがあまり高くないことを知ったことがきっかけで、日本のプレゼンス向上につながる仕事をしたいと思うようになりました。

大学生になって旅を多くしたことでその思いが強くなり、典型的な日本の企業に入りたいと思いながら就活をしていました。

清水

そうだったんですね。

松崎

就活をする中で、一番最初に内定をいただいたのがJALだったんです。たまたま父親と就活の話をしていて「今受けているところだったら、どこに入っても良い」と言ったら「一番最初に内定もらったところに行け」と返されたんですよね。

そのタイミングでJALから内定の連絡が来て、入社を決めました。

清水

すごい、ドラマみたいな話ですね。元々旅行業界を熱望していたわけではなかったとのことですが、結果的に天職だったわけですね。

トークテーマ[4]:若い人に旅を広める理由

清水

今日は大学生が旅をする意義についても話したいと思っているのですが、若者に旅を広める理由を聞きたいです。

松崎

W-PIT全体が若者だけをターゲットにしているわけではないのですが、Z世代や学生に旅の機会を提供したいと思っている人が多いのは事実です。

メンバーは、旅好きで自分たちが体験してきた旅の原体験にWakuwakuを感じている人が多いので、根本的に旅を広めていきたいという思いがあるのだと思います。

清水

僕も毎週のように旅をしていますが、やっぱり大学生や20代前半のときの旅が忘れられなくて、旅を広めています。若い頃の原体験は今につながりますよね。

松崎

学生さんの採用面接を担当させていただくこともあるのですが、バイトやインターンを頑張っていたという人より、世界中を旅していた人の方が、旅を通じて人間性が形成されていくので、人としての魅力が出やすいように感じます。

だから、とにかく若い頃から旅に出る機会を提供できる存在でありたいなと思うようになりました。それで自ずと企画が若い人向けになっている側面はあるかなと。

清水

僕らも昔、企業向けに旅人だけを紹介する「旅人採用」を行っていたのですが、企業の採用担当の方から「ほかでは出会えない面白い人が多い」とよく言われていました。

最近、僕はよく「不便益」の話をしています。旅って、面倒なことやトラブルがつきものでめちゃくちゃ不便じゃないですか。でも不便だからこそ得られることがたくさんあるので、経験値としてはプラスになるんですよね。

松崎

航空券だけ買って、行く場所や泊まる場所は現地で決めるノープランな旅ってすごく不便ですが、予期せぬ出会いもたくさんあって超楽しいんですよね。まさにバックパッカー時代に感じていました。

清水

最近は旅の在り方も変わっていて、これまでの楽しいレジャーとしての旅行はもう古いと思っているんですよね。これまで以上に旅と仕事と生活がボーダレス化していく中で、旅に出る意味が改めて見直されている一面はあると思います。

ただ、目的やテーマがないと旅をしてはいけないわけではなく、旅の入り口はワクワク感で良いと思っていて。まずはとにかく飛び出すことが大事ですよね。

松崎

極論、飛行機や電車に乗って遠くに行かなければならないわけでもないと思っていて。行ったことのないイベントやセミナーに足を運んでみるだけでも、本質は旅と同じですよね。

その中で出会いを積み重ねていくことが、旅の本質的な価値だと思います。だから僕も、目的がなくても旅はして良いと考えています。

清水

今日みんなに覚えてほしい言葉に「計画された偶発性」があって。何が起きるかわからない世界の中で成功するには、ハプニングや偶発的な出来事が起こる場所に飛び込むことが大事だと考えています。

松崎さんだったら、大学生のときに旅に出たり就職でJALに飛び込んだりしていますし、僕だったら世界一周に行って出会った仲間と起業したことかなと思っています。

松崎

私が普段の生活の中で唯一決めているルールがあるとすれば、「目の前にあるチャンスに一歩踏み出すこと」なんですよね。計画的に出会いや気づきを作り出していくことは、生きる上での醍醐味になっていると思います。

清水

自分の中にルールを決めていないのは、松崎さんらしいなと思いました。

僕はまず戦略的思考が働くので松崎さんとはまた違うタイプだと思うのですが、「計画された偶発性」という共通点があるのは面白いです。

質問:どうしたら旅の選択肢を多く提供できるか?

松崎

旅は無理に行くものではないという前提はありますが、旅を広めたいのであれば、自分の旅の経験を発信するのが良いと思います。

ただ「楽しかった」「面白かった」と言うのではなく、旅を通じて学んだことや価値観の変化を伝えることで、旅の本質的な価値が広まっていくのではないかと思います。そうすれば、自ずと周りに旅好きな人が集まってくるのではないのでしょうか。

清水

僕は世界一周中に、毎日ブログを書いていたんですよ。今はもう恥ずかしくて見せられないんですけど、まさに当時意識していたのは、自分の感情を書くことでしたね。

何が良いと思ったのか、どのように心が揺さぶられたのかを言葉にすることで、周りから「旅に行きたいと思った」と言ってもらえましたね。

トークテーマ[5]:学生だからこそ地域に貢献できること

松崎

学生の武器は、なんと言っても時間を柔軟に使えることですよね。なので、ぜひ長い旅に出て、たくさんの経験をしてほしいと思います。僕は最長2ヶ月程でしたが、1年かけて旅に出る人もざらにいました。

清水

わかりやすい例でいうと、大人は時間を確保するために高い新幹線に乗りますもんね。

いきなり数ヶ月の旅に行くことは難しくても、大人が時間がなくて1泊しか行けないところに、学生だったら短くても3泊行くことくらいはできると思うので、お金ではなく時間をかけて地域に貢献できる道を探したら良いのではないかなと思います。時間があれば、地域の人ともたくさん話せますし。

松崎

学生は、元気でいる姿を見せるだけで地域の方々にエネルギーを与えられますからね。

参加者へのメッセージ

松崎

今日をきっかけに、僕らとみなさんの相互の交流が始まれば良いと思っています。「学生のイベントをやりたいから遊びに来て」といったことでも、僕やしみなおさんを気軽に呼んでください。

また、旅するきっかけになる取組みとしてJALは『青空留学』の募集を開始しました。8月上旬に説明会があるので詳細確認の上ぜひご参加ください!本日はありがとうございました!

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