TABIPPO社員
浦川 拓也 執行役員 CHRO

滋賀県出身・1991年生まれ。大阪大学理学部数学科卒。学生時代、に初めての海外にしてで世界一周の旅を経験。TABIPPOでは経営メンバーとして事業戦略・組織開発を担当。2021年5月から神奈川県の小田原へ移住し、パーソナルジムを開業。趣味は登山とボードゲームとサウナ。

こんにちは。TABIPPOの浦川拓也です。社内でも随一の山好きで、今まで登った山は40以上。登山好きが集まるオンラインコミュニティも運営しています。

今回は、昨年の春に訪れた「燕岳」について、その時感じたことや見えた景色を振り返りながら、山旅の記録をご紹介しようと思います。

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2019年4月、朝6時。

僕は北アルプスの名峰「燕岳(つばくろだけ)」の山頂から朝日を眺めていた。

標高2,763m。本当に4月なのかと目を疑う景色を前に、新調したカメラを持ってただぼーっと立ち尽くしていた。


朝日に赤く染まる槍ヶ岳。


さっきまで歩いてきた道は紫色に輝いている。この景色を見るために僕は2日かけてここまで歩いてきたのである。

大寒波が訪れた春

この旅は1泊2日の山小屋に泊まるプランだった。

春の北アルプスは真冬だということは知っていたし、当然アイゼンを新調して万全の装備で臨んだ。


天気予報は晴れ。もう4月ということもあり、どこか油断をしていたのだと思う。


登山道には残雪が残り、新調したアイゼンでザクザクと歩く感覚が楽しかった。


第二ベンチに到着したが雪で埋まっていた。目的地の燕山荘までは残り3.8km。時間にして約4時間。ちょうど体が温まってきた頃合いである。


しかしさっきまでの晴れ間が一転、少しずつ雲行きが怪しくなる。山の天気は変化が激しい。そんなことは承知の上だったが、北アルプスをなめていた。


森林限界を越え稜線に達すると、一気に目の前が真っ白になり道を見つけるのでやっと。ホワイトアウト。


風もきつく立っているだけで精一杯。さっきまでの汗が急に冷え込み、足先の感覚がなくなってきた。

背中には夕飯用に地元の肉・野菜・酒をたくさん詰め込んだバックパック。この状況になってやっと重さを実感する。


それでも一歩ずつ前に進むしかない。一緒に登る仲間たちと励まし合い、声を出して位置を確認し合い、ゆっくりと歩みを進めていった。


そしてやっとのことで山小屋に到着した。


宿泊するのは燕山荘。日本一快適だと言われる登山好きには有名な山小屋である。


僕たち4人には1部屋が割り振られ、ここに雑魚寝をする。きれいな布団と毛布が用意されており、ガスストーブが焚かれている。


さっきまでの地獄の道のりと比べると、ここはまるで天国のようである。

山の夜は早い。夕方4時には夕飯の支度を始め、20時には眠りにつく。


担いできたお酒で体を癒やし、熱々の鍋をつくる。この時間が登山の一番の楽しみである。


日が暮れると一気に気温が下がる。


山小屋の窓は結露で凍り、入り口のドアは雪で封鎖されてしまった。


なんとこの日の夜は、この年一番の大寒波が直撃していたらしい。後日ニュースを見ると、同じ北アルプスに訪れた登山客が何人も遭難し、滑落し、死亡していたという悲しい知らせがたくさん届いていた。

改めて無事にたどり着けてよかったと心から感謝し、床についた。

感動の朝

朝起きて外に出ると、まだ薄暗いが吹雪が止んでいるのがわかった。そして降ったばかりだと誰の目にもわかる美しいパウダースノー。


急いで仲間を起こし、標高2,763mの燕岳山頂へ向かう。


山小屋を出ると燕岳までの標識が立ててある。この尾根沿いを歩いていけば山頂に到着する。


ヘッドライトをつけてすぐそこに見える最高峰へ向かって一歩ずつ歩みを進めていく。


途中にあるイルカ岩もこの燕岳の名物である。


一歩足を踏み外すと腰まではまってしまう新雪。昨晩の大寒波を物語っている。


そして、厳しい視線を送る槍ヶ岳を背に、やっとのことでたどり着いたのが冒頭の山頂の景色である。


気がついた頃にはすっかりあたりは明るくなり、昨日の悪天候が嘘のような快晴。


昨日歩いた道とは思えない絶景を見下ろしながらゆっくりと山を降りていく。


昨日は先のない地獄への道に覚えたこの尾根も、景色が晴れるとこうも見え方が変わるのか。

一歩ずつこの道を降りていき、大寒波に襲われた燕岳登山も無事終了した。

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あとがき:今の時代だからこそ感じる「山の魅力」


インターネットが発達し、世界中のあらゆる観光情報が手に入るようになりました。また、LCCの利用などで移動コストも下がり、どこでも気軽に旅ができる時代です。

しかし、どれだけテクノロジーが発達しようとも、飛行機が飛ぼうとも、山だけは自分の足だけで時間をかけて登るしかない。重い荷物を背負い、寒さや苦しさに耐え、やっとのことでたどり着いた絶景には毎回ドラマがあります。

日本には数え切れないほどの山があり、1つとして同じ景色はないです。同じ山であっても季節や気候次第で楽しみ方は全く異なります。これが一生楽しめる山の魅力。

また、登山はソーシャルディスタンスが保たれやすいので、今の時期にもおすすめです。都会の喧騒で疲れている人や、外出自粛のムードでストレスが溜まっている人。たまにはこんな時間もいかがでしょうか。

All photos by Takuya Urakawa

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浦川 拓也 執行役員 CHRO

滋賀県出身・1991年生まれ。大阪大学理学部数学科卒。学生時代、に初めての海外にしてで世界一周の旅を経験。TABIPPOでは経営メンバーとして事業戦略・組織開発を担当。2021年5月から神奈川県の小田原へ移住し、パーソナルジムを開業。趣味は登山とボードゲームとサウナ。

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