ライター
阿部サキソフォン TABIPPO編集部 / ライター

高橋歩さんの「BELIEVE YOUR トリハダ」という言葉に影響を受け、自身も人の心を動かせる仕事をしたいと決心。サックスとジャズへの愛が止められず、メンフィスとニューオーリンズを訪れたことから旅に目覚める。好きなものはお酒といちご。

世界三大ピアノ「ベーゼンドルファー」

ウィーンで生まれた「楽器」も、数多くの音楽家を支えてきました。世界三大ピアノのひとつ「ベーゼンドルファー」は1828年にウィーンで創業し、現在はコンサートホールの「ウィーン楽友協会」の中にサロンを構えています。かつてウィーンにピアノ工房は約150件あったそうですが、今はベーゼンドルファーのみとなっています。

ベーゼンドルファーのピアノの特徴のひとつが、鍵盤が少し重たい点。家具職人の息子だった創業者は、繊細で壊れやすかったピアノを強固にする方法を考えたそう。超絶技巧で知られるフランツ・リストは数曲演奏しただけでピアノをダメにしていたそうですが、ベーゼンドルファーのピアノは彼の演奏に耐えたといわれています。


▲ピアニストが通常の88鍵盤と区別しやすいように、低音部の鍵盤が黒くなっている。

そしてもうひとつの特徴が、低音部の鍵盤が多い点です。通常のピアノの鍵盤は88ですが、ベーゼンドルファーは92、97の鍵盤を持つピアノを製造しています。ウィーンにあるサロンで試弾できるとのことで、ブランクありまくりのわたしも弾いてみることに。

恐る恐る触ってみると……普通のピアノより音が深く響き、重厚感のある音が出ている(気がする)。全然指が動かなかったことは、いうまでもありません。でも写真だと、弾けているように見えません?

 

そんな貴重なピアノは職人が手間を惜しまず時間をかけて製造されるため、年間約300台しか作られないそう。2008年よりYAMAHAの子会社となったベーゼンドルファーは、1800年代から続く昔ながらの技術を現代にも受け継いでいます。

そんな伝統的なピアノを、日本でも体験できます。東京の中野坂上の「ベーゼンドルファー・ジャパン」で試奏できますし、浜松の「ヤマハイノベーションロード」では世界で25台しかない貴重なモデルのピアノが飾られています。一番最初にピアノを寄贈をしたのが日本だったそうで、意外なところに日本とのつながりも見えてきました。

■詳細情報
・名称:Bösendorfer Salon
・住所:Bösendorferstraße 12, Musikverein (Entrance Canovagasse 4), 1010 Wien
・地図:
・営業時間:月-金 10:00 – 18:00
・電話番号:+43 1 504 665 13 10
・公式サイトURL:https://www.boesendorfer.com/en/vienna/salon

ウィーン市民に寄り添う「ウィーン国立歌劇場」

ウィーン市内で代表的な観光スポットのひとつであるウィーン国立歌劇場(オペラ座)は、1869年5月25日にモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」でこけら落としが行われました。

第二次世界大戦によって大部分が焼失してしまったため、そこから数十年間は仮の拠点として「ウィーン・フォルクスオーパー」とベートーヴェン・ホテルの章で前述した「アン・デア・ウィーン劇場」で公演が行われます。1955年に再建された際には、ベートーヴェンの「フィデリオ」が上演されました。

 

ウィーン国立歌劇場の特徴は、そのレパートリーの多さ。年間300回ものオペラやバレエの異なるプログラムが上演されます。わたしは今回の旅で、ベンジャミン・ブリッテンの「真夏の夜の夢」でオペラデビューを果たしました!

前の座席部分に小さなモニターがついており、日本語を含む6カ国に対応しているので言葉に自信がない人も大丈夫。オペラ初心者のわたしは事前にあらすじを予習してから、いざ劇場へ。ドレスアップした人で溢れかえり、大人な世界に足を踏み入れたような感覚です。

鑑賞前は楽しめるかどうか不安でしたが、本物のオペラを目にしてみると、その迫力にただただ圧倒されました!


▲この日はプレミアということで批評家も多く訪れていたそう。

「おしゃれをして、ウィーン国立歌劇場でオペラ鑑賞」なんて敷居が高いように感じますが、ウィーンの芸術は富裕層のみが楽しめる娯楽というわけではありません。驚いたのは、劇場の外に大きなモニターが設置されていたこと。

なんと4月・5月・6月・9月(上演期間は9月〜6月)に20本ずつ選定されたオペラとバレエ上演を、チケットなしでモニター鑑賞できるのです。また12月27日〜1月1日すべての公演と、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団による有名なニューイヤーコンサートも上映されます。

ウィーンの芸術は、裕福な人もそうでない人も誰もが平等に楽しめるものとして長年愛されてきました。最近ではネット配信も増えてきており、よりオープンなものとなっています。ウィーン市民のそばに当たり前のように芸術があったからこそ、今でも欠かせないものとして親しまれています。

■詳細情報
・名称:Wiener Staatsoper
・住所:Wiener Staatsoper GmbH Opernring 2 1010 Vienna
・地図:
・アクセス:地下鉄U1、U2、U4のKARLSPLATZ駅すぐ
・料金:一番安い立ち見席は約3ユーロ〜
・電話番号:+43-1-514 44-2250
・公式サイトURL:www.wiener-staatsoper.at

約400年前の製法を受け継ぐバイオリン職人

今までウィーンの音楽の歴史を見てきましたが、次は「現代」に目を向けてみます。ウィーンには今でも伝統的な製法で楽器を作る職人がおり、ベァベル・ベリングハウゼンさんもその中の一人。

350〜400年前の手法でバイオリン・ビオラ・チェロを製作しています。今回は特別に工房を見せていただきました。


▲ドイツ出身のベァベルさん。約30年間バイオリンを始めとした弦楽器をつくっている。

彼女のバイオリン作りは、木を選ぶところから始まります。木によって響きが変わるそうで、音がどれくらいの速さで響くかを判断して木を選んでいるそう。切った木は2〜3年乾燥させて湿気を飛ばし、すべて彼女が手作業で作っていきます。

1つのバイオリンにかかる製作期間は、およそ2〜3ヶ月。木から作る昔の手法を今でも受け継いでいるのは、ウィーンでは彼女だけなのだとか。

熱心に話を聞いていると、「バイオリン作りを体験してみる?」と気さくに声をかけてくれました。管楽器専門で弦楽器はほとんど弾けないわたしですが、せっかくなので挑戦してみることに。小さなヤスリを使って木の表面を削ってみましたが……これがなかなか難しい。彼女がやっているときは簡単そうに見えたのに、スーッとヤスリが動きません。バイオリン職人への道は、まだまだ遠そうです。

そういえば、ジブリ映画「耳をすませば」の天沢聖司くんもバイオリン職人を目指していたような……彼のような若い担い手も、きっとこれから増えていくのかも。

■詳細情報
・名称:BÄRBEL BELLINGHAUSEN
・住所:Viktorgasse 22/18 AT-1040 Wien
・地図:
・電話番号:+43.(0)699.11547415
・公式サイトURL:www.bellinghausen.at

革新的なスタジオ「ウィーン・シンクロン・ステージ 」

最後に、最新のウィーン音楽事情についてご紹介します。「ウィーン音楽」と聞くと、伝統的なオーケストラやオペラなどを想像していたわたしですが、そのイメージを良い意味で壊されたのが「ウィーン・シンクロン・ステージ」です。

こちらはオーケストラのスタジオで、最近では日本映画「キングダム」やハリウッド映画「アド・アストラ」の音楽も、ここで生まれたそうです。まさか、ウィーンに来て「キングダム」という単語を聞くとは……!ほかにもビヨンセやジャズプレイヤーのハービー・ハンコックも利用しているとか。ウィーンだけではなく、そして世界でも注目されているのがわかりますね。


▲映画音楽の録音作業は、映像の動きとマッチしているか確認しながら行われる。

このスタジオの強みをスタッフの方に聞いてみると、ほかにはない「音楽ソフト」が自慢とのこと。「音楽ソフトとは……?」と頭にはてなが浮かびましたが、要するに「膨大な数の音のライブラリ」ということがわかりました。20年前までは音楽を制作するときにオーケストラを録音するしかありませんでしたが、ウィーン・シンクロン・ステージは音データを録音し、そのライブラリから音楽を制作できるようにしたのです。

驚くのは、その膨大すぎるライブラリ。ピアノの鍵盤1つの音に対し、レガート(滑らかに出す音)・スタッカート(跳ねた音)・ペダルを踏んだ音など、全部で1400種類の音質で録音されているそうです。え、1つの音に対して1400通りの音を録音?……聞いただけで気が遠くなりそう。

安い値段で音の提供を可能にしたことから、ウィーン・シンクロン・ステージは世界から注目されています。ウィーンにこんなにも近代的なスタジオがあったなんて驚きでした。そうそう、ここでもベーゼンドルファーのピアノを発見しましたよ!この旅でだいぶ音楽通っぽくなった気がします、うふふ。

■詳細情報
・名称:Synchron Stage Vienna
・住所:Engelshofengasse 2 1230 Vienna
・地図:
・電話番号:+43 699 11 05 50 92
・公式サイトURL:https://www.synchronstage.com/en

「音楽」が身近にある街、ウィーン


音楽にそこまで詳しくない人も、音楽の都ウィーンに興味がわいてきませんか?モーツァルトの時代から最先端の音楽スタジオまで歴史をたどっていくと、どの時代も「音楽」が市民の身近にあったことがわかります。クラシック音楽は今でも愛され続け、そして昔の音楽を守るだけでなく、技術を継承したり革新的な動きをしたりしているのがウィーンの特徴です。

ウィーンはコンパクトな街なのでまわりやすいですが、似たような通りや細い小道もあるので地図を見ながら歩きましょう。方向音痴の私は、グローバルWi-Fiを利用してgoogle mapに頼りっきりでした。お店や施設によってはWi-Fiがないところもあるので、念のため準備していくとよさそうです。

ぜひウィーンを訪れる際は、「音楽」をテーマに旅してみてくださいね!

All photos by Abe saxophone

ライター
阿部サキソフォン TABIPPO編集部 / ライター

高橋歩さんの「BELIEVE YOUR トリハダ」という言葉に影響を受け、自身も人の心を動かせる仕事をしたいと決心。サックスとジャズへの愛が止められず、メンフィスとニューオーリンズを訪れたことから旅に目覚める。好きなものはお酒といちご。

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