ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

RENEWが醸成!緩やかにポジティブに結びつく鯖江

photo by Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
「RENEW(リニュー)」というイベントをご存じでしょうか?福井県鯖江市・越前市・越前町で年に一度だけ開催される、ものづくりを見て・知って・触れる工房見学イベントです。2020年で6回目の開催を迎えました。

会期中、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥(たんす)・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉開放し、見学やワークショップを通じて、一般の人々が作り手の想いや背景を知り、技術を体験しながら商品の購入を楽しめます。

photo by Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
そして同時に、鯖江で生業を営む作り手が、自らの技術や生み出す製品に誇りを持ち、さらに深化させていくという役割も担っており、一般の人々と作り手の相互作用による地域活性化をコンセプトに掲げています。

今回強く感じたのは、このRENEWがもたらしている”新しい風”。

photo by Miori Tanaka
自転車旅で日本の田舎をよく訪れる私ですが、そこでは「田舎は何にもない場所」と、自分の住むエリアを卑下する地元の方に出会います。しかしながら今回は、そうしたネガティブな発言をまったく聞かず、「魅力的な鯖江をもっと楽しみ、味わってほしい!」という方々に多く出会いました。

この地に暮らす人々の気風を、ポジティブ思考へ。これこそRENEW最大の功績で、鯖江の魅力の核となっています。「地域の人々が、緩やかに同じ方向を向ける」これこそ地方創生において一番大事なことかもしれません。

伝統から新しいものを紡ぐ!伝統産業の最先端

photo by Yuhei Tonosyou
今回のワーケーションでは、仕事の隙間時間を使って、鯖江が誇る伝統工芸の工房やショップを中心に巡りました。そこでは前述したように、この地域の工芸の魅力を深く知ることができたのですが、その中でひとつ大きな学びがありました。

それは「伝統から、新たなものを紡ぐ」ということ。

photo by Yuhei Tonosyou
越前漆器の塗装技術を生かして生まれた「tokyobike」。

photo by hoyu nishiyama
セルロースアステート(メガネ素材)の商社としてメガネメーカーのニーズに応えてきたことで、加工技術力をつけ、その技術をアクセサリー事業へ転換した「KISSO」。

photo by Yuhei Tonosyou
従来、木で作られてこなかった日常のあらゆるものを、木で作り上げることで、木材の素材的価値や見方を変える「Hocoa」。

今まで磨いてきた独自の技術を駆使して、新たなものを世の中に生み出そう!という情熱と気概を感じられました。

photo by Hayato Yoshitake
半径10キロメートル圏内に7つの伝統工芸が集まり、絶えず革新を生み出している「鯖江」という地は、まさに日本の伝統工芸の最先端と言っても過言ではありません。

photo by Ayaka Kuniyoshi
一方で、この学びは、何も「ものづくり」のみにとどまらないはず。鯖江の伝統工芸と同じように、私たち個人も、これまで培ったスキルや経験を、何か新しい価値創造のために活用していく。逆に将来、何かを生み出すために、スキルや経験を磨いていく。

この思考転換がとても大切だということを、まさに教えてくれていると感じました。

若い移住者たちが実践!ローカルな悠々自適ライフを知る

photo by Yuhei Tonosyou
コロナ禍で働き方が大きく変わってきた昨今。

・今後の人生をどのように設計していくか?
・フルリモートワークを導入しても、仕事をできるんじゃないか?
・生活をする上で何を大切にしたいのか?理想としたいのか?

仕事やプライベートについて考える機会も増えたのではないでしょうか。

photo by Yuhei Tonosyou
そんな今だからこそ、今回の「鯖江ワーケーションツアー」に参加できたことが、大きな意義を持っていたように感じられます。

モニターツアーでは、至るところでJCH近くのシェアハウス(通称・森ハウス)に住む同世代の若いフリーランスの人たちとの交流がありました。

photo by Minori Tanaka, retouched by Ayaka Kuniyoshi
各人がいろいろな仕事を掛け持ちながら、悠々自適に暮らしている姿が印象的。みんなお互いのマイペースを尊重し合いながら、自然と歩調を合わせ、緩やかに一体感をもって動いていました。

「自分がどのように暮らしたいのか?」「何をして地域を盛り上げていきたいか?」主体的に考えて、試行錯誤を繰り返しながら、仕事に取り組んでいたのです。

photo by Yuhei Tonosyou
これは単に会社員をするだけでは見つからない、働き方や価値観、そして人生の過ごし方。

多様な生き方が選択できる現代だからこそ、自分と全く境遇が違う同世代と、自然体で向き合える時間は、きっと自分の人生へ何かヒントを与えてくれるのではないか!?と思います。

<伝統工芸と人>鯖江が見出すワーケーションの可能性

photo by Yuhei Tonosyou
日本各地には自然・食・歴史・人など、さまざまな魅力に富んだ地域が数多くあります。しかしながら、そうした地域において”ワーケーションツアー”を企画する場合、ともすると組み合わせる要素が多すぎて、焦点がぼやけたツアーになってしまう可能性も否めません。

photo by Hayato Yoshitake
ワーケーションという以上、仕事が前提です。バケーション要素が多い地域だと、ワークとのバランスが難しいという問題もあります。

そこで今回の鯖江に立ち戻ってみましょう。確かにバラエティー豊かな側面もある鯖江ですが、最大の強みとしては「ものづくり」の一点特化型。打ち出すべきテーマが明確です。

photo by Yuhei Tonosyou

しかも「ものづくり」は、観光色が強すぎず、見学の時間もさほど要しません。仕事の合間にサクッと伝統工芸を学び、地域の理解を深める体験は新鮮で、ワーケーションと非常に相性がいいと感じました。

一点特化型の「鯖江」だからこそ、リピーターを生み出しやすいという展望も見出せました。例えば、以下2つのワーケーションの併用を私の解として、地域へフィードバックさせていただいています。

①今回のような、数日間の単発ワーケーションツアー

photo by Yuhei Tonosyou
多くの人が対象。鯖江には一度きりという人が出る一方で、鯖江の魅力の認知度向上。少しずつでもリピーターを増やす。

②伝統工芸の職人に弟子入りワーケーションプログラム

photo by Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
仮に漆器なら、漆器製作を12講座に分け、1年の間で、1回目のワーケーションは1〜3講、2回目のワーケーションは4〜6講など、年間で複数回ワーケーションを行う。(日程調整は参加者の自由)。

もともと伝統工芸に興味を持っている層が対象。リピーターになりそうな人を、確実にリピーターにするのが目的。一回で1週間ほど滞在する中で、現地の暮らしや地域の輪にどっぷり浸かってもらう。

photo by Yuhei Tonosyou
上記であれば、鯖江の最大の強み=ものづくりにフォーカスして、鯖江という地を知ってくれる人を増やし、そしてリピーターも確実に生むことができるのではないかと思います。

生活に彩りを!地域の魅力を買える「鯖江」+αの魅力

photo by Yuhei Tonosyou
以上のように、今回お世話になった鯖江のワーケーションの可能性を見つめてみました。その中で最後に、結びとして紹介したいのが、”鯖江の魅力を持ち帰れる”ということ。

地域に滞在する中で、職人さんと会話をしながら「ものづくり」へ造詣を深めて、終わりではありません。その学びと思い出が詰まった工芸品を実際に購入して持ち帰ることができるのです。

photo by Miori Tanaka
コロナ禍により家にいることが多くなった今。鯖江での忘れられない時間を思い起こさせる、工芸品を手に取ることは、気が滅入りそうになる日常生活を少し前向きに、明るく彩ってくれるかもしれません。

普通の観光とは違う、福井県鯖江でのワーケーション。RENEWとともに、地域の新たな魅力を発信する一つのムーブメントになっていく可能性があるのではないでしょうか。

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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