こんにちは、世界遺産ライターのコージーです。
世界遺産探検記を始めて最初の自然遺産めぐりに選んだ旅先は、鹿児島県の屋久島。
観光したのは5日間だったのですが、屋久島の魅力を味わうには全然足りませんでした。近いうちに、また必ず帰りたいと思います。
それでは、大自然に癒される屋久島旅の後編をどうぞお楽しみください。
■ぜひ【前編】の記事もあわせてご覧ください。
日本全国の植物が自生する「垂直分布」
友人2人は一足早く屋久島を去った。
後半戦はひとり旅。しかし4日目は、ラッキーなことに屋久島在住の別の友人が案内してくれることに。
友人の車に乗ってまず向かったのは、栗生川近くのメヒルギの自生地。
手前にも奥にも、メヒルギが見える。
メヒルギは、マングローブを構成する亜熱帯植物の一種。屋久島が世界遺産に登録された要因でもある「垂直分布」を構成する重要な植物だ。
屋久島の海岸線から標高100m付近には、メヒルギやアコウ、ガジュマル、ハイビスカスなどの亜熱帯性植物が見られ、標高1,000m付近まではカシ類やシイ類などの照葉樹林が広がる。標高700m付近から屋久杉が現れ、標高1,800mを超える山頂付近にはヤクシマダケ、ヤクシマシャクナゲなどの低木林が見られる。
海岸線の平地の平均気温が20度前後でありながら、山頂付近は5〜6度。島内にさまざまな気候帯が広がっているため、亜熱帯植物から北海道などに分布する亜寒帯植物まで、日本全国の植物が自生しているのだ。
倒木更新でつくられる森林景観
続いてやってきたのは、標高1,000m〜1,300mに広がる自然休養林「ヤクスギランド」。
ヤクスギランドには、30分〜210分までの5つのコースが設定されていて、体力やスケジュールに応じてトレッキングが楽しめる。
今回はスニーカーで気軽に楽しめる50分コースを巡る。
ここでもやはり目立つのは苔だ。苔は屋久島の景観を作る主役なだけでなく、豊かな植物が育つ土台でもある。
湿度の高い屋久島では、いたるところが苔で覆われている。保水力の高い苔を土壌代わりに、さまざまな植物が生育している。
倒木に苔が生え、苔と倒木を土台に新たな屋久杉が芽生えることもある。このような倒木更新によって、屋久島の森林景観が築かれているのだ。
屋久杉は“普通の”杉
ヤクスギランドは、屋久島の自然を気軽に楽しめるという点ではピカイチの場所だ。
50分コースであれば、白谷雲水峡の時のように本格的な登山の準備をしなくても問題ない。それでいて、美しい自然に出会えるのだ。
こちらは仏陀杉。太い幹が天に向かって伸びる姿は荘厳だ。ゴツゴツとしたコブがついた様子が仏の顔に見えることから、仏陀杉との名が付けられたらしい。
樹齢は推定1800年。屋久島では樹齢1000年以上の杉を「屋久杉」と呼ぶ。仏陀杉は立派な屋久杉だ。ちなみに樹齢1000年未満の杉は「小杉」と呼ばれている。
歩くことがこんなにも楽しい場所はない。自然の美しさをこれでもかと見せつけられている。
白谷雲水峡での6時間トレッキングを経験しているせいか、50分コースはあっという間に終わった。
最後にヤクスギランドからひと足のばし、樹齢3000年の紀元杉を見学する。
言葉にできないド迫力。カメラにも、視界にも収まりきらない。
屋久杉は、日本全国にある他の杉と同じ種類の“普通の”杉だ。だが、一般的な杉の寿命が数百年前後なのに対し、屋久杉の寿命は数千年以上にもなる。
その秘密は、屋久島の独特な環境にある。屋久島は花崗岩でできた島で、土壌に栄養分が少ない。さらに豊富に降る雨が栄養分を流してしまうため、植物は育ちにくい。
このような環境で屋久杉はゆっくりと成長するため年輪が緻密になり、丈夫な木になる。また、硬くなった幹には他の杉の6倍以上の樹脂が含まれていると言われる。殺菌・防虫効果のある樹脂を多く含んでいることが、長寿につながっているのだ。
屋久島の独特な環境が、屋久杉をはじめとする類まれな森林景観を生み出しており、ここに世界遺産であるべき価値がある。