ライター
コージー 世界遺産ライター

1994年生まれ。スポーツニッポン新聞社を経て、フリーライターに。大学時代のタイ留学で旅にハマり、バックパッカーデビューを果たす。世界遺産検定マイスターで、1000件以上登録されている世界遺産全制覇が夢。

日本主導で採択された奈良文書では「遺産の保存は地理や気候、環境などの自然条件と文化・歴史的背景などとの関係の中ですべきである」とされた。

真正性は各地域の自然条件や歴史的背景などに応じて判断されるべきであり、その文化ごとの真正性が保証されるかぎりは、遺産の解体修理や再建なども可能となった。

興福寺
奈良文書によって真正性の解釈は柔軟になった。アジアの木の文化やアフリカの土の文化などにも目が向けられ、世界遺産リストの多様性を促進させる契機となったのだ。

奈良文書は、世界遺産を真の意味で”世界遺産”にした意義ある文書だ。奈良は、世界遺産全体の進歩、発展に大きな貢献を果たした。

■詳細情報
・名称:興福寺
・住所:奈良県奈良市登大路町48
・地図:
・アクセス:近鉄奈良駅から徒歩5分
・営業時間:9:00〜17:00(入堂は16:45まで)
・定休日:なし
・電話番号:0742-22-7755
・料金:東金堂300円(中高生200円、小学生100円)、国宝館700円(中高生600円、小学生300円)
・公式サイトURL:https://www.kohfukuji.com

東西の両塔がシンボルの薬師寺

薬師寺
今回の世界遺産探検、ラストを飾るのは薬師寺。

薬師寺は680年に天武天皇の発願によって建立された寺院で、平城京の遷都に伴い、718年に現在の地に移築された。

薬師寺
薬師寺といえば、東塔、西塔の2塔がシンボル。まだ入場前だが、堂々とした姿が見える。

入場料を払って中門をくぐると、目の前には金堂、右手に東塔、左手に西塔が現れる。

薬師寺
東塔は、薬師寺で創建当時から唯一残る建物。

六重に見えるが、実は三重塔。各層に裳階(もこし)がつけられており、大小の屋根が交互に出入りする特異な構造となっている。全体として律動的な美しさを保ち、「凍れる音楽」と称されている。

2009年から2021年まで12年間にわたって、史上初の全面解体大修理が行われた。

こうして美しい姿を保ち続けられるのは、奈良文書によって真正性の解釈が広がったおかげだろう。

薬師寺
西塔は1528年に焼失してしまったが、東塔の綿密な調査に基づいて設計され1981年、伝統的な木造建築の工法で再建された。

薬師寺
右に東塔、左に西塔を拝み、中央前方に見えるのが金堂だ。金堂を東西の両塔が挟む配置は日本で最初だったため、このような伽藍は「薬師寺伽藍配置」と呼ばれている。

金堂内には薬師如来、日光菩薩、月光菩薩の薬師三尊が祀られている。高さ3mを超える3体の銅像は、7世紀末から8世紀初頭に制作された。日本における仏教彫刻の最高傑作の1つとされる。

薬師寺
金堂の奥には、たくさんの学僧が仏教を学んだ大講堂がある。高さ15m、幅50m、奥行きは10m。金堂よりも大きいのが意外だ。

薬師寺
大講堂のさらに奥には、2017年に再建された食堂(じきどう)がある。僧侶が食事をするほか、仏教儀礼なども行われていたらしい。

薬師寺はどこからでも写真を撮りたくなる。トリを飾るのにふさわしい場所だった。

薬師寺
今回訪問できたのは8つの構成資産のうち、4資産。平城宮跡、唐招提寺、春日大社、春日山原始林はまたの機会にとっておく。

平城京は世界の影響を受けて、8世紀につくられた都だった。それから時代を超え、20世紀には世界に影響を与える存在となった。

そして「古都奈良の文化財」がもたらした世界遺産の進歩は、21世紀の世界をより良いものへと変えていけると、僕は思う。

石の文化、木の文化、土の文化、それぞれの文化に合った遺産の保存方法がある。正解は1つではない。

僕たちはつい、自分のレンズで物事を見てしまう。だが、いろんなレンズで世界を見ることができれば、世界はもっと輝くに違いない。

■詳細情報
・名称:薬師寺
・住所:奈良県奈良市西ノ京町457
・地図:
・アクセス:近鉄西ノ京駅から徒歩1分
・営業時間:8:30〜17:00(受付は16:30まで)
・定休日:なし
・電話番号:0742-33-6001
・料金:800円(中高生500円、小学生200円)
・公式サイトURL:https://yakushiji.or.jp

All photos by Koji Okamura

ライター
コージー 世界遺産ライター

1994年生まれ。スポーツニッポン新聞社を経て、フリーライターに。大学時代のタイ留学で旅にハマり、バックパッカーデビューを果たす。世界遺産検定マイスターで、1000件以上登録されている世界遺産全制覇が夢。

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