落ち込むこともあるけれど、私、この街が好き
ジブリ映画『魔女の宅急便』の主人公キキと自分を、ふと重ね合わせてしまうことがある。
映画『魔女の宅急便』を観るたびに感じるのは、ただのストーリーを超えた高揚感。
それは、主人公のキキがひとりで新しい街へ飛び立ち、さまざまな人と出会って生活する姿に憧れを抱いていたからかもしれない。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、私はキキから旅と生き方のヒントをもらった気がしている。
「いつか私も見知らぬ街で暮らしてみたい」という気持ちが自然と湧き上がっていた。
キキが住む街を決め、家を探し、仕事を探す。その姿は、ワーキングホリデーとして暮らす私自身と重なる部分があった。
デンマークを初めて訪れたのは2019年、大学の卒業旅行で北欧5カ国を巡ったとき。
コペンハーゲンで心が「ここだ」とささやいた。直感的に惹かれる何かがあった。
キキが海の見える街に魅了されたように、私はコペンハーゲンのゆっくりと時間の流れる居心地の良さに心を奪われた。
好きな街に住むことの幸福感
「自分の好きな街に住む」というのは、誰もが叶えられるようでいて、実際には難しいことなのかもしれない。
でも、それは自分自身への最大の投資だと思っている。
朝、目覚めるたびに心地よさを感じられる街。窓から見える景色に毎日感動できる場所。そんな環境に身を置くことで、自然と心が満たされていくのを感じる。
デンマークの街並みは私の心を常に刺激し続けてくれる。モダンでありながらも、古い建物を大切にする姿勢。機能性を重視しながらも、美しさを忘れない北欧デザイン。そして何より、人々がまとう穏やかな時間の流れ方。
「ヒュッゲ」という言葉で表される、心地よい時間や空間を大切にする文化は、私の価値観とも重なる。好きな本を片手にカフェでゆっくり過ごす午後。キャンドルの灯りに照らされた友人との食事。そんな小さな幸せの積み重ねが、私の日常を豊かにしてくれる。
「好きな街」とは自分らしくいられる街
ワーキングホリデーでコペンハーゲンに来てからもさまざまな国を旅して、どの国でも新しい発見の連続だった。けれど、旅の後にコペンハーゲンに戻ってくると、いつもほっと安堵するのだ。
「ここが私の居場所だ」という感覚は、理屈では説明できない。街の空気感や、光の暖かさ、風の匂い、人々の雰囲気——それらすべてが絡み合って「好き」という感情を形作っている。
自分の直感を信じてデンマークに来て良かった。心から、そう思っている。
「好き」という感覚は、私にとってはいつだって一番信頼できる感情だ。
そしてきっと、これからもずっと、自分の心がときめくほうへ進んでいくんだと思う。
「好きな街」とは、「自分らしくいられる街」だと思う。デンマークでは、人々が肩の力を抜いてありのままの自分で過ごしているから、私も同じようにリラックスして過ごせる。
さらには、「そんな考え方素敵だな」「あんなファッションセンス素敵だな」など、なりたい自分へのインスピレーションに溢れる街だから、コペンハーゲンが特別に大好き。
好きな街に住むことは、毎日がちょっとした旅のようでもある。
見慣れた景色の中にも、新しい発見があふれていて楽しい。
そんな日々の小さな冒険を、これからも大切にしていきたい。
All photos by Yurie Shiba