「仕事ばっかり!リフレッシュしに旅にでたい!」
アヤカさんが勢いよくジョッキをテーブルに叩きつけて叫んだ。月曜日の夜11時にどうして私は居酒屋にいるんだろう。それもこれも、仕事でミスして飲みたい気分、と問答無用で私を連れ出した先輩のせいだ。
「先輩、そろそろ…」
「決めた。ノゾミ、有給たまってるんでしょ?金曜日、仕事休んで」
「え?休んでなにをしに…」
「旅に決まってるじゃん。女子ふたり、2泊3日で満喫できて、安めに抑えても贅沢できる場所…そうだな、マカオにでも飛ぼうか」
1日目
空港から楽々フェリーに乗船♪
私たちは月曜日ぶりに顔を合わしていた。羽田空港の国際線ロビーで。
大学の頃から先輩の行動力にはいつも驚かされていた。気持ちが動くままに好きなところへ、世界のどこへだって行く先輩に憧れを抱いていた。しかし、自分がその勢いの渦に巻き込まれてみると、圧倒されてしまう…。
先輩が先日のあの場で予約したチケットでチェックインを済ませる。「私たち、フェリーでマカオに行くので、荷物はそのまま運んでください」
今回、私たちは香港空港を経由して、フェリーでマカオに向かう。フェリー乗り場は空港に隣接されているようで、受託荷物をそのままフェリーに積んで運んでくれるそうだ。とっても便利!
映画をみて機内食を楽しんでいたら、5時間のフライトなんてあっという間。香港空港に到着。荷物は、受け取り不要でそのままフェリー乗り場に向かう。さらにフェリーでマカオまで約70分。マカオのフェリー乗り場からホテルまでは無料の送迎バスが通っていて、旅に不慣れな私でも安心して乗車することができた。
ウィン・パレスに到着
ホテルに到着したときはわが目を疑った。旅慣れした先輩に事前準備はお任せしていて、何も知らなかったので…あまりにもきらびやかなホテルの前にバスが停車して私は大興奮。
騒ぐと先輩に「うるさい」とぴしゃりと言われた。それでも私の興奮は収まらない。先輩が2泊3日のマカオ旅行の宿泊先として選んだのは、マカオのコタイ地区に2016年オープンした「ウィン・パレス」。
さらに足を踏み入れて、その煌びやかさに絶句。私たちを出迎えたのは、高さ5メートルは優に超えていそうな花でつくられて風車だった。
75000本以上のバラ、トルコキキョウ、アジサイ、ボタン、スプレーローズ、デイジー、シタキソウで飾られているらしいその風車に、ロビーに入ってくる人々のそれぞれが足を止まらせていた。
「今回は、このウィン・パレスを満喫し尽くす旅にするから」
スイートルームでお姫様気分
チェックインを済ませて、部屋へと向かった。真っ白な扉の前で先輩が一言、「ファウンテン・スイートにしたから」と言った。え?先輩、いま、スイートとおっしゃいましたか…?
聞き返す暇もないまま、部屋に足を踏み入れて、質問しようとしたのも忘れてしまい、ただ私は「お姫様みたい…」と呟いていた。
「ね。お姫様みたいで、女子旅にはぴったりのお部屋でしょう?」先輩が満足げに微笑む。
ファウンテン・スイートは、玄関、ベッドルーム、リビングルーム、そしてバスルームの全4部屋で構成されている。わたしの部屋の何倍あるだろうかと思わず考えてしまった。
「先輩、こんなに素敵なお部屋に泊まってもいいのでしょうか?バチとか当たりません?」
「なにバカなこと言ってんの。ちなみにだけど、ウィン・パレスにはスタンダードな部屋の他に、5種類のスイート・ルームとヴィラが用意されているの。この部屋は、スイートのなかでも一番カジュアルなんだ。
「ちなみにスタンダードな部屋だと、私たちが泊まるファウンテン・スイートと比べてリビングルームが無いタイプになるんだけど、それでも十分広いよね。早割も実施しているから、繁忙期を避ければ日本円でだいたい12,000円くらいで泊まれるの」
「え!?しかも、それって一室の料金ですよね?ふたりで泊まれば余裕で1万円をきるじゃないですか」
「それでこの優雅な空間を独り占めできるって、なかなかお得な買い物だよね」
先輩の経済力が凄まじいのでは、と勘ぐっていたが、私でもちょっと背伸びをすれば宿泊できるようだ。たとえ私が学生だったとしても、交通費をいれても1カ月のバイト代でまかなえるし、混み合うシーズンを避けられるしで最高ではないか。帰ったら大学生の妹に自慢…じゃなくて教えてあげよう。
ステーキハウスでエンターテインメントを満喫
移動疲れを感じていた体を、広いお部屋でくつろがせて癒した後、夕食へ。
ウィン・パレスには10ものダイニングが設けられている(バーやスイーツショップも合わせると13にもなる)。散々迷って、最初のご飯はステーキハウス「SW」にやってきた。
ステーキハウスということで、お肉がどんっと登場するかと思っていたが、コース料理を頼むと、豊富なシーフードも楽しむことができた。海老や蟹のほかに、生の牡蠣まで提供していて、鮮度に自信があることがうかがえる。メインのステーキは、51日間も熟成させたもので、余分な水分がとんでよりお肉の旨みが濃く凝縮された仕上がりに。
ソムリエが、料理に合わせてワインを選んで提供してくれるので、あまりお酒に詳しくない私でも、料理と合わせて楽しむことができた。
料理の素晴らしさも勿論のこと、レストランの空間自体にも驚かされた。30分に一度、レストラン内が消灯され、ステージ上で、アニメーション・ショーが始まったのだ。
「シルク・ドゥ・ソレイユで活躍していた方が演出を担当しているんだって」
ショーは2分間の短いものなので、食事の手を休めてじっくりと鑑賞することができた。全6種類ものショーは、プロジェクション・マッピングや3Dなど、それぞれの趣向が全く異なっているので、つい全部鑑賞したくなる。コース料理で、ゆったりと食事を楽しんで正解だった。
2日目
朝食はビュッフェスタイルで満足感を
昨日はお風呂をあがったら、すぐに寝ちゃった。あんなにふかふかのベッドで寝れるなんて、この上ない幸せ…。
着替えを済ませて朝食をとるために部屋をでる。こんなに豪華なホテルなので、わたしのいつもの服装って場違いかな…と思っていたけれど、みんなかしこまった格好はしていないので安心(レストランごとにドレスコードがあるらしいけど、それも厳しいものじゃないみたいだから気楽だな)。
わたしたちが向かったのは、「カフェ・フォンタナ」。明るいオレンジを基調とした店内は、1日が始まるときの気持ちを上手に高揚させてくれるよう。
「今日もウィン・パレスのレストラン巡るんだから、そんなに食べすぎないでよ。色々楽しみたいでしょ?」
「はい!」
…とは、言ったものの、わたしは誘惑に見事に負けてしまった。
カフェ・フォンタナは朝の時間帯にビュッフェスタイルで食事を提供している。点心や、目の前でカットしてくれるローストビーフと生ハム、その場で調理してくれるオムレツ、お洒落な店にぴったりのエッグタルトにサラダと数種類のチーズ…全部ちょっとずつ食べたい!と欲張ったら、量が多くなってしまった。「そうなると思った…」と先輩はあきれ顔。
けれど、節度のある先輩でも、甘い物の誘惑には抗えなかったらしい。デザートが食事系の料理に負けないほどの品数が揃っていたので驚き。チョコレートだけのコーナーも!結局、ふたりともお腹いっぱいになってしまった…こんなにしっかりと満足感のある朝食って久しぶりな気がするなあ。
ジムでリフレッシュ
「完全に食べすぎました…」
「でしょうね。食べてばっかりだと、帰国して後悔するだろうし、今日は体をリフレッシュする日にしよっか。昨日、走れなかったから、ジムに行きたいと思っていたの」
このまま眠りたい…という本音は隠して、ストイックな先輩にしたがうことに。
ウィン・パレスの3階には、お客様の気持ちを汲んだおもてなしの施設が揃っている。プール、ジム、サロン、そしてスパ。