ライター

1996年、神奈川県生まれ。高校2年の夏にブラジルを訪れたことをきっかけに、海外行きを決意。その後サッカープレーヤーとしてイタリアとスペインに渡り2シーズン半プレー。現在は、通訳業や言語学習教師、取材・執筆活動を行う。大好きな国はイタリア。

「海外に行くにはまず英語」と耳にする人は多いのではないでしょうか?

世界はグローバル化し、「英語は必須」という教育の中で僕たちは育ってきたので無理もないでしょう。

現在の世界は昔に比べ簡単に海外に行けるようになり、海外の人も容易に、私たちが住んでいる「日本」に滞在できるようになりました。

以前よりも国境が持つ意味は薄くなり、世界のグローバル化は年々加速しています。

言語以外の重要性を学んだ海外生活

photo by shutterstock
私は、サッカーをプレーするために2015年から2018年までイタリア、スペインで暮らし、その他のヨーロッパの国にも滞在しました。周りに日本人はいなく、イタリア語は疎か英語も全く話せないまま現地に渡り現地のチームに入団しプレーしました。

そこで感じたことは、「言語の重要性」と言いたいところなのですが、違うんです。もちろんその国の言語を話せることは、大きなアドバンテージであること、現地の言葉を話すことが重要なのは間違いありません。

しかし、その国に溶け込むため、仕事をするために、言語を話せることよりもはるかに重要なことがあるのです。

今回は、私が海外に住み、スポーツ選手をしていく中で感じた、「海外で、言語を話すことより重要なこと」について書きたいと思います。これから、海外留学をする方、海外に長期滞在する予定がある方は参考にしていただければ幸いです。

まず国の文化を知る

「その国の文化を知る」というと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、意外とできている人が少ない印象を受けます。

そもそも「文化を知る」とはどういうことでしょう?僕の中で「文化を知る」とは、「その国の歴史をある程度理解すること」、「その国の生活習慣やスタイルを知ること」、「その国の人々の人生での優先順位を大まかに把握すること」だと考えています。

photo by shutterstock
「文化」とは、その国が過去にしてきたことで形作られ、現在行っていることで創造されていくからです。まずは歴史を知り、その中で国のあり方を知ることが大切だと痛感しました。

例えば、私が初めて長期滞在したイタリア。イタリアは、もともと小国の集まりで、内部での領土侵略や紛争が絶えませんでした。

そのような環境だと、身内の人間を信用し、身内でまとまって生活していく必要性があります。(外の人間は侵略者になり得たので、あまり受け入れられなかったため)

そんな歴史から、イタリア人は身内の人間や、同郷出身の人には心を許しますが、外の人間に対しては警戒心が強い印象を受けました。彼らに受け入れるためには、彼らの仲間であることを先に示す必要があったのです。

なので、自分から徹底的にイタリア人の真似をし、知り合った人たちとできるだけ長く一緒にいるようにし、イタリア人はどう生活しているのかを観察しました。朝食にはクロワッサンとカプチーノ、週一回のパスタ、出かけるときにはシャツを着るなどなど。

photo by Nobuaki Sato
そういうことを続けていくうちに、次第に彼らの家に呼ばれることが増え、ファミリーとして暖かく迎えてくれるようになったのです。(イタリアでは、自宅に招待することが友情の証)

スペインでは、少し違いました。スペインと言えば、大航海時代、ポルトガルなどの欧州諸国とともに、アジアや南米などに多くの植民地を作りました。その名残で、現在南米ではブラジルを除くほぼ全ての国がスペイン語を話します。

船に乗り、まだ見ぬ異国を開拓してきて民族だけあり、好奇心が強く外者に対してもイタリア人ほど警戒心を見せない傾向があったように思います。

イタリアでは、自分から彼らの仲間であることを示す必要があったのに対し、スペインでは、逆に彼らからこちらを伺うようなアプローチをとってきたのです。

なので、こちらに興味を持ってくれた時に、彼らを笑わせたり、彼らを受け入れるアプローチをとることで、拙い言語でもどんどん彼らの輪に入ることができ、彼らとサッカーをプレーするのも比較的に容易になりました。

日常を観察する

photo by shutterstock
その国の過去を知ったら、次はその国の現在を観察します。観察することはたくさん。より日常的な部分を観察し、それに自分を順応させると良いでしょう。

家族のあり方、恋愛の仕方、食べるもの、食事のテンポ、時間に対する考え方、人生というものの捉え方、良いとされる振る舞いと、標準的に身につけていなければいけない振る舞いなど数えたらきりがありません。

要するに、日常の些細な事柄に対する、彼らのアクションやリアクションを観察するということです。そのようなことを観察すると、その国の人が物事をどのように考えているのかが見えてきます。

photo by shutterstock
イタリア人は時間によく遅れますが、それにも一定の法則があり、イタリア人皆が理解しているので、予定より15〜30分遅れで皆がちょうど集まるのです。(たまに1時間ほど遅れてくる人もいますが)

また、人生では「食べる、歌う、愛する」ことに重点を置いているので、僕たち日本人とは人生での優先順位が大きく違います。

スペイン(特にカタルーニャ地方では)の人々は、若干日本人に近く、イタリア人よりも時間に正確ですが、待ち合わせでの10分程度の遅れは遅れに入りません。(役所などは別)ソーシャルな人間関係も活発です。

友人同士の集まりに、知らない友人の友人が参加し、知り合いの輪がどんどん増えていくので、多くの人に対してオープンな態度でいることが重要でした。

現地人の生活を取り入れる

photo by shutterstock
異国の雰囲気や生活スタイルを観察したら、次は「現地人の生活を自分も取り入れる」と良いでしょう。そうすることで、彼らの仲間であることが示されますし、現地人との距離もグッと近くなります。

日本にいる外国人が時間に正確で、日本食を食べ、日本史を飲んでいたら嬉しくなりますよね?それと同じことを私たちも現地ですると、現地の人はとても暖かく迎えてくれます。

私がイタリアに住んでいた時は、朝にエスプレッソを飲み(今でもしています笑)、週に1回は、彼らと一緒にPizzaを食べ、夕食にはワインを飲むようにしていました。

photo by shutterstock
スペインにいた時は、朝にカフェ・コン・レチェ(カフェオレのようなもの)を飲み、間食には、ボカティーショ(硬めのパンに生ハムやサラミ、レタスを挟んだサンドウィッチのようなもの)を食べ、晴れた日にはビーチにいきました。

そうすることで、自分も現地人の仲間入りを果たせた気分になりますし、友人の輪も増えていきました。

その際に言語を話せなくてもいいんです。大切なのは、彼らと一緒にその場にいて、彼らが作る劇場に入り込むこと。

そうすることで、彼らの仲間であることが示され、現地人の輪の中に入り込むことができます。その状況を作れたら完璧。言語の上達も劇的に早くなること間違いないでしょう。

自分の意見を持つ

photo by shutterstock
海外は、日本と大きく環境が違います。日本で良いとされる振る舞いが、良くなかったなど、その逆もあります。

その中で大切なのは、「他人に強要しないこと」、「その国の文化に合わせつつも、自分の中で譲れないことは絶対に譲らない」ことの2つです。

はじめに、「他人に強要しないことについてですが、特に欧州諸国は、僕たち日本人とは大きく違う個人主義です。集団よりも、個人の自由や権利が重視されます。階級社会が続く中、庶民が革命を起こしていく中で「自由」を勝ち取ってきました。

なので、他人に何かを強要することに対してはとても嫌悪感を示します。何かを頼んだりするときは、なぜそれをやるのか、なぜあなたにやって欲しいのかを説明する必要がありました。

photo by shutterstock
「その国の文化に合わせつつも、自分の中で譲れないことは絶対に譲らない」のがなぜ大切かというと、個人主義の国々では、「あなた自身がどのような人間か?」がとても大切だからです。

もちろん相手の国にいるので、文化に合わせたり、現地人のような振る舞いが求められるのは言うまでもありません。

しかし、私たちが100%彼らと同じように行動していたら、それはもうあなたではなくなってしまいますし、「自分がないつまらないやつ」と言うレッテルを貼られてしまいます。

個人主義の彼らの中で、「文化を守りながら自分を持つ」ことは、個人として生きるために必須の条件であり、そのような人に対して興味を持ち、心を開いてくれます。

嫌なことに対して、「NO」と言うことは、彼らにとっては「通常」のことであり、「YES」ばかり言っていると、逆に「信用できない奴」になってしまいます。

異文化に溶け込む姿勢を見せつつも、個人としての意見をしっかりと持つことが大切であると感じました。

現地に溶け込む姿勢を見せ、より旅を楽しもう

photo by shutterstock
「言語を話せる」ことは、海外に出たり、外国の人とコミュニケーションを取るためには必要な能力ですが、それだけでは十分ではありません。

本当の意味でコミュニケーションをとったり、異国で彼らとうまくやるためには、文化や異国の考え方への理解が欠かせません。旅行で外国に行くのと、外国に住むには大きな違いがあります。旅行では「お客さん」、住むとなったら「お隣さん」になる感覚です。

お客さんなら許せても、お隣さんにされたら受け入れられないことってありますよね?海外に住むために、現地人お隣さんになる準備がとても大切です。

文化やニュアンスを知ろうとする姿勢を持つことによって、言語レベルは十分補えますし、そこを入り口に言語を学ぶことで、習得も早くなります。私が新たな言語を学ぶ時は、必ずその国の文化や、考え方を知るようにしています。

photo by Nobuaki Sato
そうすることで、どのような単語やフレーズを頭に入れれば良いのかがわかるので、無駄なく言語を学ぶことができます。

少し遠回りのように聞こえるかもしれませんが、「文化を知る」ことが、言語を習得する際のいちばんの近道だと感じました。

「急がば回れ」とはよく言ったものですね。

皆さんも、是非異国に旅に出る際は、その国の「文化」を学んでから現地に行ってみてはいかがでしょうか?

現地を、何倍も楽しめること間違いなしです。

ライター

1996年、神奈川県生まれ。高校2年の夏にブラジルを訪れたことをきっかけに、海外行きを決意。その後サッカープレーヤーとしてイタリアとスペインに渡り2シーズン半プレー。現在は、通訳業や言語学習教師、取材・執筆活動を行う。大好きな国はイタリア。

RELATED

関連記事