未来を描くドリームマップ
わたし自身、安定していた正規公務員を辞めてまで転職した大きな理由が、【他にどんな仕事があるのか知りたい・やってみたい】でした。大学は教育学部に進学し、ストレートで教員採用試験に合格。
そんな順風満帆のスタートを切った社会人生活の途中で、気づいてしまったんです。就活を経験せずに、採用試験の合格だけ目指していた自分は、世の中の仕事をほとんど知らないということに。
ですが現代の小学校では、6年生の3学期に「総合」という学習の一環で【ドリームマップ】を作る授業があります。
ドリームマップの授業では、一枚の画用紙に「将来の夢」「将来の人物像(こんな人になりたい)」「将来の所有(こんな物をもっていたい)」「将来の暮らし(こんな家に住みたい)」などの4観点に分けて、自身の未来図を描き、発表します。
ここで子どもたちは、将来なりたい職業のために調べ学習を進めます。どんな職業があるのか、調べた職業に関連する職業もあるのか、なりたい仕事に就くには、どんな勉強をしなくてはならないのか……など。
その仕事をしている自分は、どんなものが好きで、どんな家族とどんな家に住んで、どんな暮らしをしているのかまで考えます。小学生の視野なんて……と思う方もいるかもしれませんが、この時期だからこそ、社会のしがらみを気にすることなく、自分の素直な気持ちに従って、未来と向き合うことができるのです。
未来を担う子どもたち
わたしが子どもの頃は、「グローバル化」という言葉は、社会の教科書に載っている“新しい言葉”でしかありませんでした。ですが、そこから20年ほど経った今、その【グローバル化】された世界でわたしたちは生きているのです。
どの企業でも英語を使う部署があることが当たり前になっていたり、学校現場でも英語の教育を進めていたり、出張が多い職種でなくとも海外進出する人が多くいたり、ワーキングホリデーといったかたちで自ら海を渡る働き方をする人もいます。
“働く場所”を選ばない仕事はまだまだ一部かもしれませんが、今の子どもたちが大人になるころには、今よりもっと世界中の人と人が近い存在になる、そんな働き方が広まっているのかもしれません。
そんな時代を生きていくかもしれない子どもたちに、今の大人は何ができるのか。そう考えると、課題はまだまだ山積み。もっと子どもたちにとって【知る機会】があればいいのに、と思うばかり。
海の向こう側の国や文化を大人になってから知るのと、子どものうちから楽しみにするのとでは、外国語の学習に対するモチベーションも変わってくるはず。
【いつか行ってみたい場所を増やす】この機会こそが、楽しみを見据えた将来へのビジョンを創る原動力なのではないでしょうか。
「英語嫌い」という言葉はなくならないかもしれないけれど、【勉強や進学のために英語を学ぶ】のではなく、【自分の将来の選択肢を増やすために英語を学ぶ】そんな課題目標を子どもたちが抱いてくれたら嬉しい、そう思います。
今の子どもたちに伝えたいのは、【大きくなったらいろんな国へ旅行してみてほしい】ということ。自分が今まで知っていた“当たり前”は、海を越えると“当たり前”なんかじゃない。今まで普通に過ごしてきた“不自由のない幸せ”を普通に得ることができない人々もいる。
そんな風に世界をもっと知っていくと、身の回りの人の良いところ・悪いところをより受け止めることができるようになるほど、価値観の幅が広がると思うのです。もしかしたら、日本では自分らしさを出すのが苦手だと感じていても、「海外の雰囲気の方が性分に合っている」と発見できる人もいるかもしれません。
これは子どもに限らず、大人にも言えることですが、【今いる環境が世界のすべてではない】と思うからなんです。
自分自身の将来を自由に選ぶために、英語を楽しく学べる環境ができること。そして、【いつか行ってみたい場所】を増やした子どもたちが、もっともっと広い世界に、自分らしく羽ばたいていける世界になっていくことを願っています。
All photos by Asuna Igari