西成とは
大阪市を構成する全23区のうちのひとつ。そのなかでも本記事で舞台となるのは、西成区北東部に位置する『あいりん地区』。あいりん地区という地域名はJR西日本新今宮駅の南側一帯の地区の愛称であり、昔の地名で『釜ヶ崎』とも呼ばれます。(本記事では以下あいりん地区)
ここ、あいりん地区には数多くの路上生活者が居住しており、住所不定の日雇い労働者の多さから人口統計すら不明な事態に。また、身分証明書を所持していなくても賃貸物件を借りたり、銀行口座を開設できる無法地帯でもあります。
多数の暴力団事務所、ホームレスの多さから「日本一治安が悪い」とも言われる西成区及びあいりん地区ですが、犯罪件数は少ない傾向にあります。
また、JR西日本新今宮駅の南側一帯を中心に日雇い労働者向けのドヤ(=簡易宿泊所)が集まることから、日本三大ドヤ街のひとつに数えられており、あいりん地区以外には、山谷(東京都上野)、寿町(横浜市寿町)が日本三大ドヤ街とされています。
あいりん地区入り
ただならぬ胸の高鳴りを感じつつ、降り立ったのはJR西日本新今宮駅。すぐ隣に大阪市営地下鉄の動物園前駅があるので、そちらも最寄駅です。
写真をご覧の通り、駅に降り立った瞬間からただならぬオーラが漂っています。「大変なところに来てしまった……」筆者の第六感がそのように反応しているのです。
「注射器」とは……
ひとまず駅前にローソンがあったので、用を足しに向かいます。しかし、ここは既に日本一カオスな街あいりん地区。筆者は完全に油断していました。こんなにも早く、しかも全国チェーンのローソンで、あいりん地区のカオスを目の当たりにするとは……
「注射器ってなんだよおおおおおお!!!!注射器ってええええええ!!!」
トイレが詰まるといった問題の以前にもっと大変なことが起きている気がするのですが、コンビニ側からするとトイレの詰まり問題の方が最優先事項なのでしょう。小さなテキストに大きな闇を垣間見た瞬間でした。大変なところに来てしまった…
ドヤ(安宿)にチェックイン
世界三大ドヤ街に含まれるあいりん地区。せっかくドヤ街に来たのだから、やはりドヤに泊まるべきでしょう。前日にホテル予約サイトから検索し、掲載されている西成区の宿泊施設一覧で最安のビジネスホテルをWeb予約しました。
今回予約したビジネスホテル「ホテルパークイン」は新今宮駅から徒歩約2分、動物園前駅から約1分の好立地にも関わらず、一泊の料金は¥1,000というロープライス。1ヶ月連泊しても3万円です。
どうしたらこの料金がビジネスとして成立するのか疑問ですが、この街の細かいところをいちいち疑問視しているとキリがありません。
カウンターに立つ老人に予約名を伝え、客室の鍵を受け取り、エレベーターで5階へ。自然光のみの薄暗い廊下は怪しげな雰囲気を醸し出し、やけに反響する自分の足音に恐怖しながらも、左に写る510号室が今夜の寝床となります。
客室は3畳一間の和室。テレビと扇風機が備え付けられ、作りは古いものの、異臭などは全くせず。寝具も清潔に保たれています。個人的には狭い空間の方が落ち着くので、居心地の良さは抜群で、もはや「ここに住みたい」とさえ思ったくらいです。
この日は扇風機も不要なほど快適な気温でしたが、この部屋にエアコンはありません。真冬はどうするのでしょうか。
一泊¥1,000という料金から察するに、設備という設備など一切なさそうに思えますが、快適な通信速度のWi-Fiも完備されており、浴場にはシャンプーとボディーソープが完備されていました。ここ一帯のドヤは立地の良さと価格の安さから、近年は外国人バックパッカーから人気を集めているそうです。