こんにちは、フォトグラファーの相沢亮です。
昨年の秋に訪れた北海道・阿寒摩周国立公園を舞台にした“サステイナブル”がテーマのモニターツアーに今年の夏も参加してきました。
一度訪れると、何度も足を運びたくなってしまう魅力がひがし北海道にはあります。
photo by 相沢亮
なぜなら、そこに広がる大自然の、四季折々違った姿を自分の目で見てみたいと思うから。
前回訪れた際に地元の方からも「ぜひ季節ごとにカメラを持って来てほしい」と声をかけていただき、全ての季節を制覇したくなりました。
実際に、初夏の新緑の季節は秋とは違う魅力的な姿を沢山見せてくれました。
photo by 相沢亮
このエリアが好きな理由のひとつに”今ある自然をそのまま楽しむ”という地元の方の姿勢があります。
新しいものを開発しようという視点でなく、どうすれば目の前の自然の魅力をより引き出せるかという観点からスタートしているように感じます。
“壊さずにずっと付き合っていく”そんな考え方が根本にあることがとても素敵ですよね。
今回も北海道エアポート株式会社さんとTABIPPOさんの共同で開催されました。(前回の様子は「圧倒的な大自然とアイヌ文化が根付く暮らしに触れる、北海道・阿寒摩周サステイナブルキャンプ」をご覧ください。)
新緑がきらめく鮮やかな阿寒摩周の自然や、そこで暮らす方々が長年守ってきた文化、有形無形の”未来に残すべきもの”を感じていただければ嬉しいです。
見出し
自然と共生するアイヌの精神を学ぶ
飛行機から見た北の大地。どこまでも続きそうな一本道のドライブが気持ち良い。photo by 相沢亮
釧路空港に到着し、最初の目的地である阿寒エリアを目指します。移動が苦にならないほど、車窓には美しい景色が広がっています。
飛行機から見た北の大地。どこまでも続きそうな一本道のドライブが気持ち良い。
最初に訪れたのは、北海道の先住民族「アイヌ」︎の文化を体験することができる「アイヌコタン」。ここではアイヌの家庭で育った方に、伝統的な暮らしやアイヌ語を教えていただきました。
photo by 相沢亮
アイヌ民族では、動物も人間もカムイ(アイヌ語で神の意)によって天から降ろされたと考えられています。
人間の勝手な都合で環境を破壊してはならないという教訓を伝える『天から役目なしに降ろされるものはない』ということわざが特に印象に残りました。
photo by Kasumi Sudo
その後、初日の宿となる「あかん湖 鶴雅ウイングス」へ。部屋に入った時にちょうど窓から夕日が見え、夕方の光が差す素敵な部屋でした。
photo by 相沢亮
目の前に広がる阿寒湖を望む最高のロケーションで、素晴らしい温泉とお食事を堪能しました。
初夏の新緑に包まれた不思議の森(光の森)トレッキング
photo by 相沢亮
翌朝早起きをして、ホテル目の前に広がる阿寒湖を眺めながら散歩をしました。煌めく水面が美しかったです。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
気持ちいい朝の空気を感じながら、阿寒湖周辺の森林約3,600ヘクタールを所有する前田一歩園財団の私有林である「不思議の森(光の森)」へ。事前に申請し、指定ガイドと一緒でなければ入ることができない特別な場所です。
今回も「TSURUGA ADVENTURE BASE SIRI」のベテランガイドさん達に案内していただきました。
目的地は、樹齢200年超えの巨木とボッケ(アイヌ語で「ポフケ:煮え立つ」火山ガスが吹き出し100度近くなった泥が吹き立つ現象)。
普段、一般の人は歩くことのできない場所のため自然がそのまま残っていて、神聖な空気を感じます。
「光の森」という名前は、美しい木漏れ日に由来するそう。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
自然がそのまま残っているのは、前田一歩園財団が「伐る山から観る山へ」という理念のもと、私有地として管理し自然を守ってきたから。
まさに自然と地域の暮らし、観光が両立した持続可能な観光な観光のあり方だと感じました。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
途中ガイドさんから「フィトンチッド」という気になる言葉が。
じつは「フィトン(植物)」「チッド(殺す)」というのはロシア語。
背の高い植物(高等植物)が傷付いたり、折れたりすると有害な微生物などから身を守るため雑草の発芽などを抑える物質を放出するそうです。
言葉を直訳すると物騒な響きですが、このおかげで森林の空気は穏やかに保たれ、固有の生態系が守られています。
人間にとってもリラックス効果があるそうで、森に行くと落ち着いた気分になる理由がわかりました。
物知りなガイドさんのお話を楽しんでいると、最初の目的地である樹齢200年超えの巨木に到着。
人が前に立つと、木の大きさが伝わると思います。
photo by 相沢亮
前田一歩園財団を始めとする地域の方の保護により、自然本来の姿を残し、尊重してきた歴史をこの巨木から感じました。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
続いて、もうひとつの目的地「ボッケ」へ。
地下から泥が火山ガスとともに噴出している小さな泥火山。このエリア特有の現象を直近で見ることができます。
近づいていくと、どんどん硫黄の匂いが強くなっていきます。少し温度が低くなっている場所では、直接触れることも。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
嗅覚、視覚、聴覚のさまざまな要素で、自然を感じることができます。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
散策を終えた後の自由時間には、近くのオンネトー湖に行ってみました。
photo by 相沢亮
たまたま出会った地元の方と打ち解けて、記念に集合写真を撮影。みんないい笑顔です。
世界第2位の透明度を誇る神の湖、摩周湖
photo by 相沢亮
摩周エリアに移動して、アイヌ語で「カムイトー」(神の湖)と呼ばれる摩周湖に向かいます。
「霧の摩周湖」と知られるように、晴れた日は珍しいのですが、今回は快晴の摩周湖を見ることができました。
世界第2位の透明度を誇る水質から、霧のない晴れた日は空の青を映し出す鏡のような水面(摩周ブルー)に出会うことができます。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
目の前に広がる景色にただ感動しました。
訪れてみたいと思っていた「神の子池」にも足を運びました。
コバルトブルーの色が神秘的で、摩周湖と合わせて立ち寄る方が多い人気のスポットです。摩周湖の地下水でできた場所とも言われています。
photo by 相沢亮
訪れたのは午後4時くらいで陽が当たらない時間帯でしたが、この透明感。太陽が高い位置にあるお昼頃が特に綺麗に見えるそう。また訪れてみたいです。
自由時間を満喫して、2日間お世話になる「お宿 欣喜湯」へ。
photo by 相沢亮
全国さまざまな温泉に入ってきましたが、ph値1.7の強酸性のピリピリ感はトップレベル。
硫黄山の麓にある川湯温泉ならではの泉質です。
欣喜湯というその名前は雀がぴょんぴょんと小躍りして喜ぶ様子の四文字熟語の「欣喜雀躍」に由来し、お客様に”心ゆくまでお湯に遊んで欲しい”という約80年前の創業の原点への思いがあるのだそう。
そんな暖かいこころに思いを馳せて、温泉で旅の疲れを癒しました。
特有の生態系に触れることができる、つつじヶ原自然探勝路
photo by 相沢亮
翌日は「川湯エコミュージアムセンター」を見学。摩周湖の成因や地形のお話を中心にお話をお伺いしました。摩周地域の自然、動物について詳しく知ることができます。
photo by 相沢亮
その後、硫黄山を目指し「つつじヶ原自然探勝路」の散策へ。
photo by 相沢亮
ガイドをしていただくのは、「片瀬自然ガイド事務所」の片瀬さん。昨年訪れた際は、紅葉が見頃でしたが、今回は青々とした新緑の季節です。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
6月頃からつつじが見頃らしく、ちょうど満開のタイミングでトレッキングに参加することができました。
photo by 相沢亮
つつじの白と新緑が見渡す限り広がっています。
硫黄山を目指すこの探勝路では、硫黄山から出る火山ガスや酸性の土壌の影響により、平坦な道でありながら高山に生息する珍しい生態系を見ることができます。
硫黄山に近づくにつれ「針葉樹林帯」「広葉樹林帯」「イソツツジ帯」「ハイマツ帯」と綺麗に分かれていることも面白いポイント。
道中周りの風景が変化していくため、飽きずに歩き続けることができました。
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
photo by 相沢亮
地域の方が未来へ繋ぐ、川湯温泉川
photo by 相沢亮
街中に戻り、つづいて川湯温泉川の歩行体験。
ここでは阿寒摩周国立公園川湯地域運営協会の方々を中心に川湯温泉川の清掃活動を続けています。
photo by 相沢亮
継続した活動で、昨年訪れた時よりもさらに整備が進んでいました。
もともとは排水で水が濁り、その川の色からゴミを捨てる人も少なくなく、整備はマイナスの状態からスタート。
photo by 相沢亮
今の清掃活動はマイナスをゼロにする作業で、そこからプラスになっていくような取り組みが構想されています。
各宿の余った温泉が流れているこの温泉川は屈斜路湖に流れ出るため、将来的には観光客の方が天然の足湯に入りながら屈斜路湖まで歩くことができるようにトレイル整備を目指しています。
photo by 相沢亮
「川で寝そべるのも楽しそうですよね」と運営協会の方がワクワクする光景をお話してくれました。
自然を守りながら訪れる人が楽しめるアクティビティの場となり、地元の方全員が観光事業者としての意識を持ち、この温泉川が綺麗な状態で維持していくことが今後の目標だそうです。
photo by 相沢亮
今あるものを活かして未来への取り組みに挑戦する、運営協会の皆さんの熱い思いに心が動かされ、清掃活動の仲間が昨年より増えたとのこと。
裸足で川湯温泉川を歩ける日までそう遠くないように感じました。
photo by 相沢亮
身体を動かしたあとは、地元の方々とバーベキュー。
photo by 相沢亮
地元で育って今年町役場に就職された方、移住してきた方、さまざまな方々と交流して良い時間になりました。
カヌーで過ごす穏やかな時間。釧路川の源流川下り
photo by 相沢亮
屈斜路湖は国内最大のカルデラ湖で、水源の8割が湧き水のため透明感が高く美しい場所です。
ヨットや水辺でのキャンプなども人気ですが、今回はカヌーで釧路川の源流川下りに挑戦することに。早朝の体験でしたが、目の覚めるような絶景に出会うことができました。
photo by 相沢亮
カヌー出発。水の綺麗さ、朝の透き通った空気に気持ちが踊ります。
photo by 相沢亮
木々を倒さないように、身をかがめて進む場面も。木々が元気に生い茂っています。
photo by 相沢亮
ひょっこりと顔を出す鹿を発見。きょとんとした顔がかわいいです。
photo by 相沢亮
なんと、奇跡的にオジロワシにも遭遇することができました。
1970年に天然記念物に、1993年には国内希少野生動植物種に指定されている貴重な鳥です。
キラキラと光る水面photo by 相沢亮
水が透き通っているため、底が透けて見えます。濁りは一切なく、このまま飛び込みたい気分になります。
photo by 相沢亮
ハーブティーをいただいて、のんびり休憩しました。
photo by 相沢亮
足を水につけて涼みながら、仲間と話す最高なひととき。
涼しげな木漏れ日photo by 相沢亮
自然を壊さずに身近に感じることができるカヌーは、サステイナブルな観点からもとても充実したアクティビティでした。
最後に全員で集まり、今回の阿寒摩周サステイナブルキャンプの振り返りを実施。参加者一人ひとりが「観光」「自然」「文化」、そして「阿寒摩周の未来」についてサステイナブルな視点で振り返ります。
photo by 相沢亮
前回もさまざまな意見や考えが飛び交いましたが、人が変わればその方向性やアイデアも変わり、有意義な意見交換になりました。
「もっとこうしたら地域が良くなるのでは」と、みんなで模索しながら理想の形を少しずつ作っていくことが大事なのかなと改めて感じました。
“今あるものを活かす”背伸びをしない観光
photo by 相沢亮
旅を終えた後の充実感や圧倒的な自然と触れ合った後の満足感は、他に変えがたく記憶に強く残っています。
今回も「ただ観光地を楽しむ」ということから一歩踏み出して、「その土地の文化・自然を次世代に残すために今すべきことは何か」という問いと向き合うきっかけになりました。
地元の方とお話すると、ここに住む一人ひとりの方が自然との共存について真剣に考えていることが伝わってきます。
大切なのは、観光者視点を押し付けるのではなく、自然や文化を学び体験して地域の方と意見を交わすことだと再認識しました。
そして、自分たちができることのひとつは、この場所で感じた魅力を素直に伝えることだと思います。
photo by 相沢亮
地元の方々は日常で当たり前の光景でも、他の場所から来た自分たちにとっては、新鮮で素敵に見えるものが存在します。
「朝の阿寒湖での散歩が気持ち良かった」「レトロな商店街で優しい店主の方に出会った」など、些細なことでも伝えてみましょう。
新しいものを作ることも大事ですが、今あるものを活かす”背伸びをしない観光価値”の再発見のお手伝いができたらなと思いました。
阿寒摩周を訪れる度に愛着が増していきます。
この場所の魅力がどうすれば伝わるのかなと滞在中にずっと考えていました。また違う季節の表情もぜひ見てみたいです。
旅の計画も移動も便利なPeachで阿寒摩周へ
photo by 相沢亮
北海道の大自然を感じることができる阿寒摩周エリアですが、最寄り空港となる「女満別空港」「釧路空港」には、東京・大阪から約2時間ほどのフライトで行くことができます。
「空飛ぶ電車」をコンセプトに、リーズナブルで快適な移動を提供する「Peach」は、成田空港と関西国際空港から女満別空港・釧路空港まで就航しています。
阿寒摩周への旅を計画する際は、Peach公式サイトとPeachが運営する旅の小ネタ帳「tabinoco」をぜひチェックしてみてください。
旅の様子はTwitterで「#阿寒摩周サステイナブルキャンプ」を付けて、tabinocoとSNSで発信しています!
※マスクは撮影時のみ外しています。毎日検温・消毒を徹底しツアーを実施いたしました。