はじめに、アンコール遺跡群ってどれぐらいの数の遺跡があると思いますか?(もちろんアンコールワットだけじゃないですよ)……正解は、なんと600以上!
今回は600以上もある遺跡群の中で、私が一番おすすめする「ベンメリア宮殿」についてご紹介します。
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東南アジアの王国の中核・ベンメリア宮殿とは
まず、ベンメリア宮殿とはどんな遺跡なのか、これまでの歴史と共に簡単に紹介します。
実は、東南アジアの中心地だった
photo by tabizukan
ベンメリア宮殿は、11世紀にクメール王朝によって建設された遺跡です。クメール王朝とは、9~15世紀にかけてカンボジアを中心に誇っていた王朝であり、宮殿が建てられた11世紀はちょうど全盛期で、現在のカンボジアを中心にタイやラオス、さらに、ベトナムまで勢力を広めていました。その中心がここベンメリアだったのです。
しかし、やがて後に建てられるアンコールワットに中枢機能が移り、15世紀に隣国アユタヤ朝の侵攻を受けてクメール朝が滅びます。東南アジアの中心地だった期間はたったの20年間。
王朝が滅んだ後は密林の中に埋もれてしまい、それから19世紀のフランスの植物学が遺跡を発見するまで、およそ400年間放置されてしまうことになります。
廃墟になってしまった原因は内戦
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写真の通り、ベンメリア宮殿は200万人ほどが犠牲になったカンボジア内戦によって、ほとんど原型をなしていないほどに崩壊されてしまいました。この廃墟と化した宮殿と周囲の自然が絶妙に融合する光景は、むしろ多くの観光客を魅了し、1992年にアンコール遺跡群として世界遺産に登録されました。
しかし、当時は観光客はほとんどいませんでした。遺跡にはたくさんの地雷が埋没し、道路が整備されていなかったため、観光できないとされていたのです。また、こうした危険性が観光客の生死に関わるとされ、世界遺産と同時に危機遺産リスト(世界遺産のなかで重大な危機にさらされ、緊急の救済措置が必要とされるもの)にも登録されてしまいました。
そこから、危険性の高い遺跡のブロック除去や遺跡周辺の地雷撤去作業など、懸命な修復作業が日本やフランスなどが中心となり行われ、2004年には危険遺産リストから外されて、国内外多くの観光客が訪れるようになったのです。
行ってみて感じたベンメリア宮殿の魅力
続いて、実際にベンメリア宮殿に足を運んで感じた遺跡の魅力についてご紹介します。
長い歴史を象徴する廃墟の美
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私はベンメリア宮殿を初めて観たとき、この遺跡の美しさと、1000年にわたってほとんど復元されることなく、ありのままの姿を映し出す奥ゆかしさに、本当に感動してしまいました。内戦によって多くの建物が破壊されてしまい、寺院の数々は崩れてからそのままの状態で保存されていますが、廃墟に美しさを感じると共に、内戦の悍ましささえ覚えます。
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しかし、その一方で、空まで届きそうな幹の太いどっしりした木々や建物を覆うようにぎっしりと生える苔など、この1000年にわたって醸成された自然の力には感心するばかりです。
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また、遺跡を歩いているとクメール王朝時代のものと思われる宗教レリーフなど、さまざまな出土品が出てきます。
写真の像は、ナーガ像と呼ばれるもの。ナーガはインドの蛇神ですが、仏陀が悟りを啓く修行をしていたときに仏陀を守ったと伝えられており、遺跡を守る役割を担っていました。このように遺跡を探索して当時の歴史を垣間見られます。
映えスポットの宝庫
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海外のインスタ映えスポットとして、タイの鉄道市場やベトナムのホイアンの街並みなどが注目されていますが、ベンメリア宮殿は全く引けを取らないほどインスタ映えします。
自然と調和した遺跡の姿は写真映りがとっても良く、気づいたら引っ切りなしにシャッターを押していました。特に、雨季の時期は苔が綺麗に生えて見えるため、より一層神秘的な光景が広がっています。
奇妙な形に曲がった木や山積みされたブロックを背に写真をたくさん撮って、フォトジェニックスポットとしてInstagramにアップしたり、SNSのプロフィール画像にしたりするのも良さそうです。