ライター
くぼちゃん 旅するカラフルライター

人の想いに「光をあてる」ことをモットーとし、価値観の深堀りをするインタビュー・取材を強みとする。旅が好きで、海外は30ヵ国以上、国内は40都道府県訪れている。趣味は建築・アート巡り。服装や写真がカラフルな「旅するカラフルライター」。

「岐阜」と聞けば、何を思い浮かべるだろう。

飛騨高山に白川郷。下呂温泉や、郡上おどり(郡上八幡の記事はこちら)も、全国的に知られた存在です。

では、「岐阜市」と聞くといかがでしょうか。岐阜城や金華山(きんかざん)、鵜飼(うかい)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

長良川といえば、鵜飼
岐阜県南部に位置する岐阜市は、織田信長の居城であった岐阜城が金華山の山頂にそびえたち、信長がつくった城下町や文化が残っています。

約40万人都市の真ん中には清流・長良川(ながらがわ)が流れ、1300年以上続く鵜飼が今でも行われています。また、長良川の恵みを活かした竹や和紙を使った美しいプロダクトの産地でもあります。

中部地方最大の都市である名古屋から、JRで20分というアクセスの良さも魅力です。

和傘の一大生産地である岐阜市
じつは、私の故郷は岐阜市なんです。

ライターになり、たまたま機会を頂いた故郷の取材。私のライターとしてのモットーは場所や人に「光をあてる」こと。愛する故郷に「光をあてる」取材旅、スタートです。

自然を感じる“昼の遊覧船”と、幽玄の世界へ誘う“夜の鵜飼観覧船”

岐阜県は内陸に位置するため、いわゆる海無し県です。だからこそ、川は身近な存在。

高知県の四万十川、静岡県の柿田川と並び、日本三大清流のひとつである長良川には、ダムがありません。ダムがあると、砂が堆砂し生物やバクテリアが減少します。一方ダムがないと、下流まで栄養豊富な水が流れ、川は綺麗になります。

そんな清流・長良川を最も有名にしているのは「鵜飼」。

(photo by 岐阜市)
そもそも鵜飼とは、鵜匠(うしょう)が鵜を巧みに操り、川にいる魚を捕る伝統的な漁法のこと。1300年以上の歴史があるといわれています。

鵜飼のシーズンは毎年5月11日に鵜飼開きをして、10月15日まで。観覧船に乗り、幻想的なかがり火のもと、幽玄の世界を鑑賞します。


岐阜市民にとっても、鵜飼は特別な意味を持つもの。市外から招いた方を、鵜飼観覧船でおもてなしします。

今回は、夜の鵜飼ではなく、昼の観覧船(夢粋船)に乗船。自然を眺めながら、岐阜や鵜飼について色々とお聞きしました。


観覧船は、ほとんどが木製です。船頭さんが、川の流れを見ながら手漕ぎをしてくれます。

じつは、船大工が少なくなっており、その技術を継承していくためにも、毎年木製船をひとつ作っているのだそう。船を作る技術だけでなく、船を漕ぐ技術も岐阜市の文化財に指定されています。

今回は、最も新しい「珠玉丸(しゅぎょくまる)」に乗船。インバウンド対応のため、靴を脱ぐ必要がない仕様になっていました……!


川の上って、なんて気持ちいいんだろう。

海と違って波がない。直射日光を遮り、爽やかな風が通る遊覧船は、暑さやモヤモヤを吹き飛ばしてくれます。

まず見えてくるのは、岐阜市のシンボルである金華山。


金華山にそびえる岐阜城は、ロープウェーで訪れることができると同時に、初心者から上級者向けまでの、いくつもの登山コースがあります。大人の脚なら約1時間の登山道。ハイキングがてら訪れるのにも、ちょうどいいコースです。

岐阜城の城主は「マムシ」と呼ばれた男、斎藤道三が九代目。そして、斎藤道三の娘である濃姫と結婚した、織田信長が十二代目城主なんです。

鵜匠の像
じつは、「岐阜」という地名に改名したのは、織田信長。鵜を匠に操る「鵜匠」に給料と特権を与えて保護し、鵜飼を「おもてなし」として始めたのも信長だと言われています。

岐阜駅前の金の織田信長像(photo by 岐阜市)
長良川では、御料(ごりょう)鵜飼も行われています。御料鵜飼とは、皇室の保護のもと、宮内庁式部職による鵜匠が行う鵜飼のこと。全国でも、長良川鵜飼の鵜匠6人と小瀬鵜飼の鵜匠3人しか任命されていません。

宮内庁式部職の鵜匠は誰もがなれるわけではなく、鵜匠家に生まれた男性しか就けない世襲制なんだとか。

さすが清流長良川、水は透き通っている
幽玄の世界に誘う夜の鵜飼鑑賞も素敵ですが、心地良い風に吹かれ、のんびりと過ごす昼の遊覧船も、岐阜の自然をより身近に感じられる極上のチルタイムでした。

■詳細情報
・名称:ぎふ長良川の鵜飼
・住所:岐阜市湊町1-2
・地図:
・アクセス:(バス)長良橋下車、徒歩約1分
・営業時間:(鵜飼観覧船)5月11日~10月15日(年に一度の鵜飼休みと増水日を除く)の17:30~・(夢粋船)5月11日~10月15日の9:00~15:00※要事前予約
・電話番号:058-262-0104
・公式サイトURL:https://www.ukai-gifucity.jp/

散策が楽しい、古い町家通りの川原町。特等席で、金華山を眺めよう

鵜飼乗船場を降りるとすぐ、古い町家が残る、味わい深い通りが続きます。この辺りは、湊町・玉井町・元浜町を総称し、川原町(かわらまち)と呼ばれます。


この地域は長良川で水運が活発に行われていた時代に中継地点として発展しました。だからこそ、美濃和紙や木材を扱った問屋や商家が、そのまま残っているのです。


川原町の軒先には、提灯が吊り下げられています。景観を保つため、電柱もなくしており、提灯の統一感も相まって、とても綺麗な町並みです。


川原町は、旅館やお土産屋さん、岐阜の名産品や食事処が並びます。長良川からの気持ちいい風が吹き、散策が楽しい、わくわくする通りです。

一角にある庚申堂(こうしんどう)には、ハート型の手水が。こちらは、縁結びスポットなんです。


ちょっと疲れたら、カフェに入るもよし、川原町広場のベンチでまったりするもよし。川原町広場のベンチは、金華山と岐阜城が見える、特等席です。

緑のじゅうたんが気持ち良い、川原町広場

和紙問屋の建物と蔵を改装した人気店、cafe&gallery川原町屋で、ひとやすみ

レトロな丸ポストが目印
お腹が減ったら、[cafe&gallery川原町屋]へ。

町屋カフェであり、川原町を代表する人気店。築154年の和紙問屋の建物と蔵を改装し、岐阜名産の水うちわなどのギャラリーとショップが併設されています。珍しいラインナップに、興味津々。

水うちわや提灯のギャラリー
奥に長い日本家屋を改装しており、おしゃれでレトロな雰囲気が醸し出されている店内。日本家屋ならではの土間や蔵が残り、存分に和を感じられる空間です。

2階の座敷の窓からは、金華山と岐阜城を眺めることができます。


今回いただいたのは、川原町屋オリジナルオムライスセット。

とろっとろの柔らかいオムライスに感動……!特製トマトソースは、トマトの酸味が感じられ、こちらもふわふわで美味しい。ミニパフェもついてくるので、満足度がとても高いセットでした。

特製カレーも人気
こちらのカフェが人気店である理由のひとつとして、従業員の小見山さんの存在があります。なんと、初代ドラえもん(現在はテレビ朝日系列放送だが、最初は日本テレビ系列放送)の主題歌を歌っていた方なんです。

歌手活動を辞めた後、地元の岐阜に戻り、地元を盛り上げていらっしゃいます。

(左)小見山さんと(右)オーナーの安藤さん
ほかには、岐阜らしい鮎のお粥や、パフェなどの甘味も大人気。古民家の町家ならではの落ち着く空間と、こだわりの美味しい食事、岐阜の伝統技術のギャラリーなど見どころ満載でした。

■詳細情報
・名称:cafe&gallery川原町屋
・住所:岐阜県岐阜市 玉井町28
・地図:
・アクセス:(バス)長良橋下車、徒歩約3分
・営業時間:(平日)11:00-16:00(土日祝)11:00-17:30
・定休日:木曜日
・電話番号:058-266-5144
・公式サイトURL:https://kawaramachiya.jp/
・公式Instagram:https://www.instagram.com/kawaramachiya/

長良川流域のプロダクトが集まる、長良川デパートでお買い物


川原町の一角にある、長良川デパート。長良川流域の地域創生を行うNPO法人ORGANが手掛け、長良川流域で作られた工芸品や雑貨、お土産が揃います。


入った瞬間、「か、かわいい……!!」

旅の楽しみは、観光や食事以外に、買い物だったりしませんか?物欲あふれ、可愛い雑貨大好きライターの私は、テンションが上がります。


ちょうど郡上おどりのシーズン。ここ長良川デパートにも、色とりどりの鼻緒が並びます。見ているだけで心が躍ります。

鮎をモチーフにしたてぬぐい
「100年以上受け継がれた長良川流域文化を、100年先の未来に繋ぐ。」

そんなコンセプトで、2016年にオープンした長良川デパート。地酒や食品、雑貨やアパレル、提灯など品数も豊富で、ここでしか買えない長良川グッズがたくさんありました。

道三と信長のおひざもと、戦国コーヒー
2階ではレンタル着物の着付けもしてもらえます。川原町の町並みにきっとよく映えますね。オリジナル商品とセンスの良い雑貨に、誰もがテンションが上がる場所。ぜひ、ご自身や大切な方へのお土産探しに、訪れてください。

うかいボードゲーム!普段は見かけないオリジナルのお土産がたくさん

■詳細情報
・名称:長良川デパート
・住所:岐阜県岐阜市湊町45
・地図:
・アクセス:(バス)長良橋下車、徒歩約2分
・営業時間:10:00~18:00
・定休日:火曜日・年始
・電話番号:058−269−3858
・公式サイトURL:https://nagaragawadepart.storeinfo.jp/
・公式Instagram:https://www.instagram.com/nagaragawa_depart/

長良川てしごと町家CASAで、岐阜が誇る和傘と提灯の伝統を知ろう。絵付け体験も楽しんで

お次も、NPO法人ORGANが手掛ける、川原町の長良川てしごと町家CASAへ。


ここは、和紙で作られた和傘や提灯のショールームがあり、また和傘や提灯の絵付け体験ができるスポットです。

じつは、岐阜市は、全国の和傘の約7割を生産する地。和傘のほかに、提灯や水うちわなども多く生産されています。

長良川上流から、美濃和紙が運ばれてくる中継地点であったと同時に、長良川流域では竹が豊富にとれるため、竹と和紙を使った、美しいプロダクトが産み出されるのです。


岐阜を代表する伝統文化であるにも関わらず、一般の方が手軽に買える場所がなかったことを、NPO法人ORGANが危惧し、2018年に和傘CASAをオープン。常時豊富な和傘を取り揃え、気軽に見ることが出来るショップにもなっています。

(photo by 和傘CASA)
「閉じて竹、開いて花」

そう呼ばれる岐阜和傘は、「五感で」楽しめます。

美しい竹と和紙で彩られる視覚、和紙に塗る油の嗅覚、傘を畳んだ時の触り心地である触覚、雨がしとしとあたる音の聴覚、そして、和紙の色は経年変化で良い味となるという意味での味覚。

洋装にも合う
中から見ても美しい、外から見ても美しいその姿は、川原町の町並みにも溶け込みます。

雨傘だけでなく、UVカット効果があり、優しく日を遮る日傘もあるんです。

とにかく、美しい……
和傘は分業制が取られており、骨子を作る職人、和紙を張る職人などで分かれているのだそう。それぞれの職人さんの力で、この美しさを紡ぎ、後世にも受け継いでいるんですね。

鮎をモチーフにした提灯
和傘だけでなく、提灯のショールームも併設されています。岐阜は、提灯が本当に身近な存在。今思えば、実家にも当たり前のように提灯があり、町中にもあふれていました。

岐阜の提灯づくりの技術は、世界でも認められています。世界的な著名な彫刻家イサムノグチの「AKARI」シリーズを作っているのは、じつは岐阜の提灯メーカーなんです。

丸い形か、長細い形かで選べます
岐阜を代表する提灯、もしくは和傘への絵付けが、和傘CASAでは体験できます。

小さなお子さんや、外国人観光客にも大人気。

今回私たちは、提灯絵付けを選びました。参考絵柄もあるので、迷ってもアドバイスしていただけます。

旅するカラフルライターは、提灯もやっぱりカラフルなのです
完成した提灯は、かなりコンパクトにたためるので、持ち運びもラクチン。長良川デパートで買った可愛い小物と、世界で唯一無二のマイ提灯で、とってもご機嫌な旅の締めとなりました。

人によって絵柄も全く異なり、個性が出る

■詳細情報
・名称:長良川てしごと町家CASA
・住所:岐阜県岐阜市湊町29
・地図:
・アクセス:(バス)長良橋下車、徒歩約3分
・営業時間:11:00~18:00
・定休日:火曜日・水曜日
・電話番号:090-8335-9759
・公式サイトURL:https://wagasa.shop/
・公式Instagram:https://www.instagram.com/wagasa_casa/

歴史と、自然と、美しいプロダクトを見に行こう


岐阜市への旅、いかがでしたか。
少しでも、岐阜市のことを知っていただけたら嬉しいです。

そして、行ってみよう!と思っていただけたら、もっと嬉しい。名古屋からアクセスが良い点も魅力のひとつだと思います。

岐阜市は、織田信長が愛した鵜飼と歴史が残り、清流長良川の恵みを受けた美しいプロダクトが数多くある、自然豊かな場所。

みなさんが、岐阜市に興味をもつきっかけになりますように。

All photos by kubochan

ライター
くぼちゃん 旅するカラフルライター

人の想いに「光をあてる」ことをモットーとし、価値観の深堀りをするインタビュー・取材を強みとする。旅が好きで、海外は30ヵ国以上、国内は40都道府県訪れている。趣味は建築・アート巡り。服装や写真がカラフルな「旅するカラフルライター」。

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