その他
樋口 佑樹 ディレクター

『周りを幸せにする誰かのやりたいを実現する』という個人理念を掲げて、クリエイティブとコーチングをテーマに活動中。2022年には現在は、原チャリで日本を縦断しながら、地域を盛り上げる人たちに出会う「ひぐの出会い旅」を敢行中。 旅中のトラブルなど、鉄板のエピソードトークがあることに憧れ続けて早7年。好きなものは珈琲と旅とカメラ。

こんにちは、原付で日本全国を巡っているひぐです。今回は再び岡山へ。瀬戸内海の凪に魅了され、ついつい何度も訪れたいこの町に、瀬戸内海を活かしたロケーションが最高の宿泊施設があります。

photo by yuki higuchi
それが「DENIM HOSTEL float」です。客室や共有スペースであるカフェラウンジから見える景色はまさに絶景そのもの。無心になってリラックスできたり、考え事が捗ります。

photo by ITONAMI
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第8回「ひぐの出会い旅」は、「DENIM HOSTEL float」やデニムブランドを運営している株式会社ITONAMIの山脇さん。弟の島田舜介さんとITONAMIの前身となるデニムブランド「EVERY DENIM」を共同創業。

”デニム兄弟”として活躍しています。47都道府県での移動販売を経て、地域に根ざした活動を展開する山脇さんに、旅をテーマにお話を伺いました!

photo by yuki higuchi

山脇 耀平 (Yamawaki Yohei)
株式会社ITONAMI共同代表。大学在学中の2014年、実の弟とともにITONAMIの前身となるデニムブランド「EVERY DENIM(エブリデニム)」を立ち上げ。2018年4月からは、クラウドファンディングで購入資金を募ったキャンピングカーで、移動販売をしながら全国47都道府県を巡る。2019年9月には泊まれるデニム屋「DENIM HOSTEL float (デニムホステルフロート)」を岡山県倉敷市児島にオープン。

旅の始まりはデニムの移動販売

photo by yuki higuchi

EVERY DENIM(ITONAMIの前身となるデニムブランド)の創業当時は大学生ながら、47都道府県を巡っている憧れの存在だったので、今回お話できて嬉しいです!

ひぐ

山脇さん

ありがとうございます。
さまざまなメディアでお話されていますが、今回は「旅」の話を中心にお伺いできればと思っています。デニムブランド「EVERY DENIM」のスタートは移動販売でしたよね。

ひぐ

山脇さん

そうですね。「EVERY DENIM」は知名度ゼロの状態からスタートしたブランドでした。それに、当時は私も弟も大学生で人脈も少なかったので、どこかにお店を構えたところでお客さんは来てくれないなと。だから、移動販売で人が集まっている場所に行くことにしたんです。
何事もチャレンジを始めるときには、ゼロからのスタートですもんね。

ひぐ

山脇さん

はい。販売できる場所を探していた時にご縁があったのが、宿泊施設だったんです。「有鄰庵」と「KAMP」という2ヵ所でスタートしたのですが、共に地域のコミュニティのハブになっていて。その場所にいけば、デニムの魅力もそのコミュニティの方に伝えられると思いました。

ブランドを立ち上げた2015年から、2017年いっぱいは兄弟で手分けして、週末に色々な場所を訪ねて、製品についてのトークや販売をしましたね。

キャンピングカー47都道府県の旅へ

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そして、2018年から始めたキャンピングカーでの47都道府県での移動販売に繋がっていくわけですね。

ひぐ

山脇さん

週末だけ販売しにいくというスタイルを繰り返していたのですが、途中からだんだんもったいなさや物足りなさを感じ始めました。
もったいなさ?

ひぐ

山脇さん

自分たちも地場産業を盛り上げていく立場として、行く先々で地場産業をしている方々との関わりも増やして、たくさん勉強させていただきたいなと。だから、毎月1週間、週末は移動販売、平日は地場産業を営む方との交流や活動の見学の時間に充てました。(※1)

※1.山脇さんが地場産業の方にインタビューした記事は「NEUT」で見ることができます。

実際に47都道府県を尋ね歩いた中で、印象に残っている場所はありますか?

ひぐ

山脇さん

青森県弘前市でりんご農家を営む「みかみファーム」さんが印象に残っています。りんごづくりを通して、地域貢献をする姿勢に強く影響を受けました。

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山脇さん

場所だけの観点で言うと、自分たちも海側で活動していたこともあって、長崎の東彼杵や金沢などの海に近いエリアは良いなあと感じました。東彼杵町(ひがしそのぎちょう)は大村湾があって、海も綺麗だし、人が集まってカフェや複合施設を営んでいて印象的でしたね。

初の拠点は、デニムの生産地「児島」へ

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なんだか現在のITONAMIと似たところを感じます。

ひぐ

山脇さん

そうですね。47都道府県を巡る中で、地域に根ざした活動をする人たちと関わった経験は参考になったというか、影響を受けてます。人口は多くないけれど、ロケーションの良さや自分ならではの活動を求めて若い人たちが集まってくる。その雰囲気は今の児島での活動にも繋がっていると思います。
47都道府県のあと、デニムの生産地である「児島」に拠点を持つことになりました。

ひぐ

山脇さん

デニムを販売するための拠点を持とうという話は、47都道府県巡るときにしていました。その時には東京や大阪に展開するという選択肢もあれば、岡山駅の近くにショップをつくる選択肢もあったんです。
でも、旅する中で地域に根ざした活動がカッコいいと思いましたし、色々な物件を探す中でたまたま出会って惚れ込んだ場所がここでした。

部屋から見える瀬戸内海に沈む夕焼けに浸ります
photo by yuki higuchi

ロケーションが抜群ですよね。

ひぐ

山脇さん

そうですね。部屋の中から海が見えることは唯一無二の価値だと思います。拠点を構えたことによって、ようやく地域に根ざした活動ができるようになった感覚が芽生えてきました。

目指すのは地域に根ざす活動

photo by yuki higuchi

販売拠点にとどまらず、宿泊施設「DENIM HOSTEL float」も運営していますが、それはどうしてですか?

ひぐ

山脇さん

物件探しをするタイミングでは、製品を売る場所を探していたので、宿をつくろうとは思っていませんでした。でも、旅の中で迎え入れてもらう経験がたくさんありました。だからこそ、今度は私たちが、児島の良さとか魅力を伝えられるようになって、迎え入れたいと思ったことが大きな理由です。
なるほど、宿はあとからついてきた形だったんですね。

ひぐ

山脇さん

そうです。でも、結果的にデニムを丁寧に届けたい自分たちにとっては、相乗効果がありました。いわゆるショップだけでは、物を見て試着するだけで終わってしまいます。しかし、1泊あれば、商品に触れてもらう時間も長いですし、丁寧に説明できる時間がある。
ゲストさんとご飯に行くこともあるのですが、その時にどんな人がどうやってつくっているのかなど、背景やストーリーも伝えられて、理想的な届け方ができています。
さらに、宿泊するゲスト向けの試着レンタルサービスも始めました。(2022年9月時点)

ひぐ

photo by yuki higuchi
実際に僕も試着して夜を過ごしました
photo by yuki higuchi

山脇さん

お店だと試着も似合うかどうかだけしか確認できません。でも、このレンタルサービスでは1泊という時間のなかで、気になるアイテムの着心地や使い勝手を試していただけます。スタッフ側の目もないところで、丁寧にお気に入りの一着を見つけていただけたら嬉しいですね。

豊かな時間を過ごすために

photo by yuki higuchi

とても素敵な取り組みですね。他のインタビューでも「豊かな消費」という言葉を使っていますが、いつからそのようなことを考えているんですか?

ひぐ

山脇さん

EVERY DENIMの活動をスタートさせてからですね。それまでは私も気になるものを買って、気に入らなかったら捨てるということを繰り返していました。でも、思いをもったつくり手の存在を知って、自分も一緒につくる側に回ると、ものを大事にして欲しいなと。
山脇さんにもそんな時期があったんですね。

ひぐ

山脇さん

そうですね。でも、豊かさについて考えていくうちに、これは物だけでなく、時間の使い方も大事だと思うようになりました。そして、自分にとって大事なものが何か考えられる場所ができたらということで、このfloatもつくりあげました。
floatは豊かさに繋がる場所として、つくられているんですね。

ひぐ

山脇さん

ゆったりとした海があるので、それを活かした空間にしています。そして、サウナをつくったのもその一環ですね。宿の名前であるfloatに込めた思いは「想い、浮かべる。」というもので、何か無になる時間をつくりだすことができたら良いなと。その時間が、自分にとって大事にしたいことや、やりたいことに気づくキッカケとなると思います。

やりたいことの見つけ方

photo by yuki higuchi

やりたいことという話も出ましたが、大学時代からデニムブランドを立ち上げて、今でも精力的に活動している山脇さん。やりたいことをする秘訣はなんでしょうか?

ひぐ

山脇さん

最初のスタートが肝心だと思います。私たちの場合は、デニム職人と出会っておもしろいと思ったことがキッカケです。でも、完全に自分のやりたいことを100%決め切るって難しい。興味を持ったからといって、それだけのことだと自分たちでデニムブランドをやろうとはしなかったと思います。
そうなんですか?

ひぐ

山脇さん

デニム業界には課題があったんです。職人さんが忙しいために新しい取り組みができなかったり、若者の次なる担い手が現れないというような。つまり、自分たちの興味に加えて、外から求められるものがありました。仕事は誰かの役に立つためにあるということを考えると、続けるためにはそうした外からの要請も必要だと思います。
いまの若い人にはやりたいことが見つからなくて悩んでいる人も少なくないと思います。

ひぐ

山脇さん

そうですね。そんな人は身近にいる、何かやりたいことがある人に乗っかっていくのが良いんじゃないかと言ってます。一度はじめてみて、やりがいをもって続けていけそうであれば、続けようくらいの気持ちで、まずはスタートしてみるのが良いと思いますね。

山脇さん流、旅の魅力

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47都道府県を巡る旅の話から、現在の宿泊施設についてもお伺いしました。旅をする側でもあり、今は迎え入れる立場にもなった山脇さんですが、旅の魅力ってなんでしょう?

ひぐ

山脇さん

旅が本当にいいなと思うのは、旅をしてる最中はどんなことでも見過ごさずに、自分にとって大事なことだという意識が生まれることだと思います。感受性が開いて研ぎ澄まされるような感覚でしょうか。それは大きな価値だと思います。
たしかに「旅」というだけで特別な時間のように思って、色んな出来事を大事にするような気がします。

ひぐ

山脇さん

そうですね。感受性が開いているからこそ見つけられることもあると思いますし、何かのキッカケにもなりやすい。例えば、旅の最中だから身につけてみようと思うこともあるでしょうし、経験してみようと思うこともあります。何かその人を変えるきっかけを与えるという意味では尊いですよね。
そんな旅の価値を得るために気をつけるべきことはありますか?

ひぐ

山脇さん

自分の中でもう決まり切った土地、例えば観光名所への考え方があって、それを確認するために行くのであれば、それはあまり醍醐味ではない気がします。心を開くからこそ、旅が有意義なものになると思うので、ありのままを受け入れると良いと思います。旅してる人はすでに積極的だと思いますが、旅中はもっと積極的に色んなものを受け入れてみてほしいですね。

瀬戸内の凪に、何を思い浮かべますか?

photo by yuki higuchi
日本海にも太平洋にもない、ゆったりとした凪をもった瀬戸内海。その景色をみていると、いつの間にか自分の心がからっぽになっていく。

floatは電車の最寄駅からさらにバスで30分と、アクセスが少し不便な場所にあります。それでも、人が集まってくるのはやはりこのロケーションと集まる人の魅力。近くには丘の上にあるカフェ「belk」や本屋「aru」など、個性的なお店があり、充実した時間を過ごすことができるはずです。

都会の喧騒に疲れたり、人生の分岐点にあるとき。自分の心と向き合う環境は岡山県に待っています。

それでは、ふたたび西に向かいます。

■詳細情報
・名称:DENIM HOSTEL float
・住所:〒711-0905 岡山県倉敷市児島唐琴町1421−26
・地図:
・アクセス:水島ICから車で30分
・電話番号:086-477-7620
・公式サイトURL:https://www.denimhostelfloat.com/

■あわせて読みたい!前回のインタビュー記事【ひぐの出会い旅 07】もご覧くださいね♪

その他
樋口 佑樹 ディレクター

『周りを幸せにする誰かのやりたいを実現する』という個人理念を掲げて、クリエイティブとコーチングをテーマに活動中。2022年には現在は、原チャリで日本を縦断しながら、地域を盛り上げる人たちに出会う「ひぐの出会い旅」を敢行中。 旅中のトラブルなど、鉄板のエピソードトークがあることに憧れ続けて早7年。好きなものは珈琲と旅とカメラ。

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